• 日本には心惹かれる器をつくる作家さんが大勢います。作家と私たちの暮らしをそっとつないでくれるのが器屋さんです。滋賀の、趣あるアンティークの照明や家具が空間を彩る「savi no niwa(サビノニワ)」は、そんな器屋のひとつ。使い込むほどに味わいの増す器に魅了され続ける店主、田中さんに、お薦めの作家をこっそり教えてもらいました。

    「食べることは人間の原点」そんな想いをのせて

    一度耳にしたら深く印象に残る店名「savi noniwa(サビノニワ)」。「サビ」というのは「わびさび」のさびかと思いきや、金属の錆びのことなんだそう。

    「金属が時間とともに変わる様子がすごく好きで、その姿を器に重ねたというか。器は使い込むと、シミができたり、色合いや風合いが変わり、味わいがどんどん増して愛着が湧く。そんな器を並べる庭(=店)という意味から、そう名付けました」と店主の田中あずささんは話します。

    白壁を背景に置かれた棚やテーブルは、田中さんが長年かけてコツコツ集めてきた日本の古道具。そこに、シンプルかつ風合いのある器が、余白を持たせて並べられています。そんなインテリアや店名の由来からも垣間見られるように、田中さんは古道具にも詳しい方。

    画像: 食卓で使うイメージが湧くようにと、焼き物、ガラス、木工など異なるジャンルを組み合わせたコーナーづくりも

    食卓で使うイメージが湧くようにと、焼き物、ガラス、木工など異なるジャンルを組み合わせたコーナーづくりも

    「もともとは花と雑貨を扱うお店として、1999年にスタートしたんです。オープンの翌年からは、食にまつわる食器やキッチンツールなどの古道具も扱うようになりました」と話すように、古道具の取り扱いは20年に及ぶベテラン。いまでも自分好みの品が手に入ると、作家の作品と一緒に並べています。

    そして、開店から15年近く経た年に、器だけを扱う店に転身。現在の店名に改め、内装もガラリと変えました。

    「最初の頃のお店は、月並みなんですが『花や雑貨で、暮らしを楽しく』というコンセプトでした。でも、年齢を追うごとに、『食べる』という行為を見つめ直すようになって。『食べることは生きるためのものでもあり、人間の原点』とそんな風に捉え、『食べる』行為を楽しむための器を、と考えるようになりました」

    画像: 奥のポットは、粉引きを多く制作する小山乃文彦(おやまのぶひこ)さんのもの。人気が高く、入荷するとすぐに売り切れてしまうそう。その隣の湯飲み茶わんは河合竜彦(かわいたつひこ)さん、豆皿と手前の汲出し碗は竹下努(たけしたつとむ)さんの作品

    奥のポットは、粉引きを多く制作する小山乃文彦(おやまのぶひこ)さんのもの。人気が高く、入荷するとすぐに売り切れてしまうそう。その隣の湯飲み茶わんは河合竜彦(かわいたつひこ)さん、豆皿と手前の汲出し碗は竹下努(たけしたつとむ)さんの作品

    そんな田中さんに、いち押しの作家さんのアイテムをご紹介いただきました。まずは、ジュエリーをメインに制作する金工作家、佐藤祐子(さとうゆうこ)さんのカトラリーです。

    画像: 上が「ケーキフォーク」(長さ約16 cm)で、下が「ミニフォーク」(長さ約13 cm)。ともに真鍮製

    上が「ケーキフォーク」(長さ約16 cm)で、下が「ミニフォーク」(長さ約13 cm)。ともに真鍮製

    「佐藤さんの作品を最初に見たとき、その手仕事とは思えない完成度の高さにすごく感動して、三重まで会いに飛んでいきました。鍛金といって金槌でとんとんとんと打ち出して成形する技法でつくられていて、よく見ないとわからないと思うんですが、叩いた後の槌目(ついめ)がほのかに入っているんですよ。

    槌目は見る角度や光の当たり具合で印象が変わり、すごくきれい。真鍮は空気や人の手に触れることで色合いがどんどん変化するので、それも楽しんでもらえたら。黒ずむのが気になる方は、硬めの食器用スポンジで洗えばきれいになります。

    佐藤さんは控えめで可愛らしい感じの方。金槌でカンカンカンカンやっているイメージはまるでないですね(笑)。でも作品はそんな人柄が表れているかのようで、繊細な雰囲気です」

    お次は、滋賀で作陶する竹口要(たけぐちかなめ)さんのマグカップです。同じ滋賀なので会ってお話する機会が多いという田中さん。

    画像: 左から薄雲色(S)、象牙色(M)、砂金色(Lo)。砂金色は経年変化が楽しめ、使うほどにしっとりと落ち着き、さらに少し濃い色に。薄曇色と象牙色は、あえてあまり色合いなどを変化させないようにしたもの

    左から薄雲色(S)、象牙色(M)、砂金色(Lo)。砂金色は経年変化が楽しめ、使うほどにしっとりと落ち着き、さらに少し濃い色に。薄曇色と象牙色は、あえてあまり色合いなどを変化させないようにしたもの

    「これは竹口さんの代表作『ラトンシリーズ』のカップ。表面は滑らかですが、実は粗い土でできていて、つくった後に削るんです! 見た感じはつるっと滑らかに、それでいて土の温かみも微妙に残したいという意図があるそうで。

    胴のラインも実は削ることで浮き上がらせたもの。見ただけではそうとは気づかないと思うのですが。

    竹口さんは見えないところにもすごくこだわり、持ちやすさや軽さはもちろん、裏側にまで至ります。この『ラトンカップ』の裏には微妙に段がつけられ、デザインへのこだわりを感じます」

    最後は、岐阜で作陶する若手作家、伊藤豊(いとうゆたか)さんのお皿です。

    画像: ざらっとした土の風合いが生きた「土化粧リム皿」。手前がベージュで奥が黒。和も洋もどんなおかずも受けとめてくれる

    ざらっとした土の風合いが生きた「土化粧リム皿」。手前がベージュで奥が黒。和も洋もどんなおかずも受けとめてくれる

    「まだお若い方ですが、窯元に勤めながら自分の作品をつくっていた頃に取り扱いを始めたので、長いお付き合いです。会った当初から、しのぎや彫り模様がはいった作品を多くつくっていらして、このリム皿のような、シンプルで土の風合いを生かした作品は、ごく最近のもの。雰囲気がすごく変わって驚きました。

    うちの店ではこちらのタイプが人気なので、いまはメインで扱っています。風合いが素敵なのと、リムが細くすっきりしていて、盛り付けしやすいことも人気の理由のひとつですね」

    田中さんの作家さんを選ぶ際の基準は、「料理より主張する器ではなく、料理を盛り付けて完成するような器をつくる方」だそう。「でも、実は一番気にしているのは、サイズ感だったりします」とも話します。

    サイズ感のほかにも、重さや収納のしやすさ、洗いやすさなどを、ほぼ必ず自分で使って試すのだとか。「カップとかなら、口当たりや持ちやすさ、茶渋がつくのを気にされる方も多いので、どんな感じで茶渋がつくのかも見ます」

    シンプルで料理をジャマせず、風合い豊かな器が揃うsavi no niwa。作家さん選びが意外にも実用性重視と知って驚きました。色や形、質感が気分を高めてくれるだけでなく、使い勝手のいい、生活に根ざした器をぜひ手にとってみてください。

    ※紹介した商品は、お店に在庫がなくなっている場合もございますので、ご了承ください。

    <撮影/田中あずさ 取材・文/諸根文奈>

    savi no niwa(サビノニワ)
    077-586-1806
    11:00~17:00
    不定休 ※営業日はInstagramにてお知らせしています
    滋賀県野洲市高木194-33
    電車:JR琵琶湖線「篠原駅」から徒歩約5分
    車:「名神竜王インター」から約10分
    https://saviniwa.com(オンラインショップ)


    This article is a sponsored article by
    ''.