• 二十四節気 白露(9月7日~9月21日)
    日々の暮らしの中にある季節の移ろいを
    白井明大さんの詩・文と當麻妙さんの写真で綴ります。

    ちいさなこと


    めだまやきの
    きみの やわらかさ

    むこうの はやしの
    とりの さえずり

    ちいさなことに
    きづいた あさは

    ゆっくり いきを
    すいこんで

    こんどは
    ゆっくり はきだして

    へやの くうきを
    わずかに ゆらしてみる

    たちのぼる ゆげが
    ためらいがちに たなびく

    マグカップの コーヒーを
    そっと ひとくち

    よみかけのほん
    テーブルにころがったペン

    とおりのくるまのおと
    すきまからあかるむカーテン

    いすをひく すあしであるく
    はをみがく とけいをみる

    ちいさなことに
    どうしてか きをひかれては

    まいにちの きれはしのような
    せいかつの りんかくらしき

    ひとつ ひとつ
    どれも ささいな

    かおぶれを ながめて
    ゆっくり いきをする

    たわんでは ゆらめく
    きょうの こころの

    ちいさな ちいさな
    ことばに きづけるように
     

    季節の言葉:水澄む

    冷たくて、よく澄んだ清らかな秋の水の様子を、水澄むといいます。

    いつ見ても水は水のはずなのに、そんなごく身近なものさえも季節によって変化して感じられるというのは、とてもささやかで繊細な感覚ではないでしょうか。

    二十四節気で九月七日から訪れる、白露(はくろ)とは、涼しくなってきて露を結ぶ季節のこと。九月に入って、朝夕少しずつ大気に冷たさが混じってくると、つぶらな水のひとしずくが仲秋を告げる兆しとなります。

    九月七日から十一日までは、七十二候*で、白露初候の「草露白し(くさのつゆしろし)」です。小さな草に浮かぶ小さな露の光るさまを、白しと言い表わしています。

    *七十二候……旧暦で一年を七十二もの、こまやかな季節に分けた暦。日付は2020年のものです。



    白井明大(しらい・あけひろ)
    詩人。沖縄在住。詩集に『生きようと生きるほうへ』(思潮社、丸山豊賞)ほか。近著『歌声は贈りもの こどもと歌う春夏秋冬』(福音館書店)など著書多数。新刊に、静かな旧暦ブームを呼んだ30万部のベストセラー『日本の七十二候を楽しむ ー旧暦のある暮らしー 増補新装版』(KADOKAWA)。

    當麻 妙(とうま・たえ)
    写真家。写真誌編集プロダクションを経て、2003年よりフリー。雑誌や書籍を中心に活動。現在、沖縄を拠点に風景や芸能などを撮影。共著に『旧暦と暮らす沖縄』(文・白井明大、講談社)。写真集『Tamagawa』。
    http://tomatae.com/



    This article is a sponsored article by
    ''.