• 東京郊外に生まれ、南信州に暮らすライター・玉木美企子の日々を綴る連載コラム。村での季節のしごとや、街で出会えたひとやできごと、旅のことなど気ままにお伝えします。今回は、一年に一度、実りの季節を迎えた伊那谷で、黄金色に輝く田んぼでの収穫の日のお話を。

    実りの秋、稲刈りの日

    バタバタとお盆がすぎ、9月に入り、気づけば長袖に手を通す日が増えてきました。

    日差しはまだまだまぶしいものの、吹く風のにおいも咲く花もすっかり秋の装い。いま、伊那谷では一年一度のお米の収穫の季節を迎えています。

    わが家でも、お借りしている田んぼで4度目の稲刈りの日を迎えることに。

    覚えていらっしゃる方はいるでしょうか、本コラム第9回でちらりと触れた、私が今年トラクターをはじめて運転したあの田んぼです。

    画像: 今春の、田おこしのようす

    今春の、田おこしのようす

    画像: 収穫した稲の束を、友人の子どもたちが運んでくれています

    収穫した稲の束を、友人の子どもたちが運んでくれています

    4年前、しばらく使われていなかった田んぼに分け入ることからはじめた米作り。

    最初の大豊作! からしばし不調の年も経て、さて今年はというと……米粒がふっくらとしていて、触れたときの「手ごたえ」があります。

    これはなかなか、素晴らしい出来栄えではないでしょうか。

    そう同じ田んぼでも同じコシヒカリでも、不思議なほどに毎年、稲穂の「顔」が違うのです。

    どんな天気だったのか、雨はどれくらい降ったのか、そしてどれだけ手が入れられたのか。すべてを受け止めてお米が育っているのだなと実感します。

    私ができたことなどほんの少しですが、いっしょに田んぼを担ってくれている友人たちに感謝しながらしみじみ、うれしく感慨深い収穫の日です。

    画像: 刈り取った稲穂。実入りもよく、なかなかの粒ぞろいです

    刈り取った稲穂。実入りもよく、なかなかの粒ぞろいです

    しかし一方で、今年はこんなことも考えました。

    「こんなふうに一年に一度きり(多くても2回?)しか収穫できないお米を唯一の主食にするなんてリスクが高すぎる。きっと昔の人はお米に限らず、さまざまなものを主食にしていたのでは?」と。

    いつのまにか「日本人ならごはん!」と言われて久しい感もありますが、きっともっと(切実に)臨機応変に多様な食卓であったのだろうなということが、黄金色の田んぼに立つとすとんと腑に落ちてくるのです。

    ともあれ、無事にはざがけも終わり、ひと段落。

    あとはここからほどよい晴天が続いて、天日干しが成功することを祈るばかりです。

    精米してピカピカの新米が食べられるのは、ここから2週間ほど後。

    楽しみにその日を待ちたいと思います。

    画像1: 実りの秋、稲刈りの日

    稲刈りの翌日は、久しぶりに私が暮らす村の「絶景の山」といわれる陣馬形山に登ってみました。(あ、登るといっても自動車で頂上のすぐ下まで行けるのですが……)

    山頂から伊那谷を見渡すと、まだまだ黄金色の田んぼがあちこちに残っているのが見えます。眼前の中央アルプスの紅葉も、きっともうすぐ。

    食欲の秋の到来が、今から楽しみです。



    画像2: 実りの秋、稲刈りの日

    玉木美企子(たまき・みきこ)
    農、食、暮らし、子どもを主なテーマに活動するフリーライター。現在の暮らしの拠点である南信州で、日本ミツバチの養蜂を行う「養蜂女子部」の一面も

    <撮影/佐々木健太(プロフィール写真)>



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