街のみんなが手にとりやすいサイズ感と価格のものを
長時間発酵でつくられる水分量の多い、もっちりとしたパンが魅了する「根津のパン」。店主の野口将義さんは、自身の店を持つ前は、パン屋を含めカフェやレストランなどいくつもの飲食店で、修業をされていたのだそう。
「最後にはパン屋を出すという目標があったんで、いろいろ学べればと思って。ご縁もあって、店を転々としました。どのお店のシェフも素晴らしい方ばかりで、皆さんから影響を受けています。いま僕がつくっているパンは、それぞれの店で教わったものを合体させている感じですかね」
そうして、上野桜木の「カヤバベーカリー」のシェフとして働くことに。パンづくりを任され腕を振るい、店は話題の人気店になったものの、3年ほどで惜しまれつつも閉店。それを機に、野口さんは独立するに至りました。
それぞれのシェフから学んだ技やセンスをひとつにした野口さんのパンは、どれも格別のおいしさ。具材入りのパンが多いのも特徴で、中には具材が惜しみなく詰まり、贅沢な味わいです。
パンを眺めているとふと気になったのが、その値段。どれも都心に店を構えるパン屋さんとしては、抑えめの価格設定で、なかには100円以下のパンもあるほどです。
「毎日でも来てもらえればという感じで、価格は全体的に抑えめではあるかな。だから、わりとパンが小さめになっています。でも、価格を抑えるためだけでなく、大きいとお客さんが手を出しにくいというのもあって。もちろん大きく焼いたほうがおいしいパンもありますし、そうしたくもあるんですけど、いろんな種類を食べてほしいという想いのほうが強くて」
「有名店やクオリティが高いお店はいっぱいあって、そこをもちろん目指したいけど、目指しながらもやっぱりお手頃な感じでやっていきたいなーって。地元の人が足繁く通う、普通のパン屋でありたいなって思いますね」とも話す野口さん。
職人としてつくりたいパンと、お客さんが求めるパンとの間で揺れ動き、試行錯誤しながら、想いを寄せて焼いたパンは、心と体に栄養をたっぷりと与えてくれるやさしい味わいでした。もちろん、遠方からのお客さんも大歓迎とのことですので、谷根千散策と一緒にぜひ出かけてみてくださいね。
<撮影/山川修一 取材・文/諸根文奈>
根津のパン
10:00~19:00(パンが売切れ次第終了)
月・木休み
東京都文京区根津2-19-11
最寄り駅:東京メトロ千代田線「根津」
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※臨時休業や日替わりパンについては、SNSにてお知らせしています。