• 稲作の歴史とともに育まれ、かつて農村の暮らしの隅々で活躍した藁細工。山形・真室川町に「工房ストロー」の髙橋伸一さんを訪ねました。今回は、工房から生まれる「いまの暮らしに合う」藁細工 を紹介します。その素朴な手仕事の技は、山形の小さな工房から新しいかたちで未来に引き継がれていきます。
    (『天然生活』2018年1月号掲載)

    現代の暮らしに合う、オリジナルの藁細工

    卵つと

    卵が貴重だった時代に、卵が割れないように持ち運ぶために使われた道具。こちらは、木の擬卵を入れて飾りとしてアレンジしたもの。ミニサイズもある。

    画像: 卵つと

    藁ぼうき

    稲穂から米を取ったあとの「実子(みご)」という部分を麻ひもで束ねた、ほうき。藁の縮れが細かいごみもよく掃き取る。小さいサイズはパソコンのキーボードを掃除するときにも重宝する。

    画像: 藁ぼうき

    鍋敷き

    中心部分に藁を使い、スゲを巻きつけた鍋敷きは、ほどよいクッション性があって、鍋がぐらつかない。使ううちに色が味わい深くなり、壁にかけて収納しても絵になる。

    画像: 鍋敷き

    ボトルケース

    編み目が伸縮自在にフィットして持ち運びしやすいボトルケース。ワイン用と一升瓶用があり、ギフトのラッピング代わりにしたり、瓶の中に電球を入れて照明として使ったりしても。

    画像: ボトルケース

    ◇ ◇ ◇

    ほうき、しめ縄飾り、鍋敷き、オーナメント……。つくれるものが増えていくことに喜びを見いだした髙橋さんはめきめきと腕を上げ、無事に「免許皆伝」。藁細工用に、新たに10種類の稲を育てることを始めます。

    さらに、一本の藁を穂先、稈、袴と細かく分解して、つくるものに合わせて最適な部位を使うなど素材づくりからこだわり、師匠・伊藤佐吉さん仕込みの技に自分なりの創意工夫を加えて、「いまの暮らしに合う」藁細工を次々に生み出していきました。

    「年配の世代が懐かしいと手に取るものを、藁になじみのない若い世代が、新しいかわいいものとして受け取ってくれる。それが面白いし、見せ方次第で藁細工にはまだまだ可能性があると感じました」と笑顔を見せる髙橋さん。

    各地のイベントやクラフトフェアにも積極的に参加し、ワークショップで「手から手へ」、つくる喜びとともに藁細工を伝えています。

    「生活道具だった藁細工は、暮らしをよくする工夫を積み重ねて発展してきたもの。その創意工夫にこそ、ものづくりの楽しさがあり、素材を道具に変える力は、生きる力にもつながるのだと、僕自身、実感しています」

    「工房ストロー」の “新しい” 藁細工が、先人たちが育んだ知恵をつないでいきます。




    〈撮影/村林千賀子 取材・文/熊坂麻美〉

    工房ストロー
    山形県最上郡真室川町平岡885
    https://kobo-straw.com/

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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