• 稲作の歴史とともに育まれ、かつて農村の暮らしの隅々で活躍した藁細工。山形・真室川町に「工房ストロー」の髙橋伸一さんを訪ねました。その素朴な手仕事の技は、山形の小さな工房から新しいかたちで未来に引き継がれていきます。
    (『天然生活』2018年1月号掲載)

    藁とともにある髙橋さんの暮らし

    秋田県との境に位置する山形・真室川(まむろがわ)町。のどかな田園風景が広がるこの町に、2年前、小さな工房が生まれました。

    名前は「工房ストロー」。ストローとは、稲や麦などの茎を乾燥させた藁のことです。

    いまにも動きだしそうな馬や蛙のオーナメント、ほうきや鍋敷きなどの生活道具。らせん形の蛍かごには豆電球を入れてインテリアライトとして。

    「工房ストロー」の藁細工には素材がもつ温かみがあり、昔ながらの道具で終わらないセンスが光ります。

    画像: 「工房ストロー」の藁細工のオーナメント。蛙や馬などの動物には藁実子袴(のみごばかま)というしなやかな部位が、星や雪の結晶には堅めの稈(かん)という部位が使われる

    「工房ストロー」の藁細工のオーナメント。蛙や馬などの動物には藁実子袴(のみごばかま)というしなやかな部位が、星や雪の結晶には堅めの稈(かん)という部位が使われる

    つくり手の髙橋伸一さんは代々続く稲作、畑作、畜産農家の五代目。農家を継ぐのと同じタイミングで「工房ストロー」を立ち上げました。20年以上勤めた町役場を退職しての転身でした。

    「真室川町は伝承文化を大切にしてきた町。役場で地域活性化の仕事に携わるなかで、土地に受け継がれてきた伝統的な作物や、生活の知恵が詰まった藁細工の尊さに改めて気づきました。大切な “地域の宝” を途絶えさせてはいけないと、使命感がわいたのです」

    画像: 自宅から歩いて3分ほどの場所に広がる田んぼ。自家製の堆肥を使い、お米を育てている

    自宅から歩いて3分ほどの場所に広がる田んぼ。自家製の堆肥を使い、お米を育てている

    画像: 髙橋さんは藁細工用に古代米などを育て、色や太さ、長さが違う10種類の藁をつくっている。藁は、しっかり乾くまで1カ月くらい納屋で干す。天井から吊り下げているのは「虹色はぜきび」

    髙橋さんは藁細工用に古代米などを育て、色や太さ、長さが違う10種類の藁をつくっている。藁は、しっかり乾くまで1カ月くらい納屋で干す。天井から吊り下げているのは「虹色はぜきび」

    画像: 藁は飼っている繁殖牛の飼料や寝床にも使われる。毛艶がよく、大切に育てられているのが伝わる、愛らしい子牛たち

    藁は飼っている繁殖牛の飼料や寝床にも使われる。毛艶がよく、大切に育てられているのが伝わる、愛らしい子牛たち

    画像: 髙橋さん愛用のミニぼうき。使い込んで、いい具合にすり減り、より掃きやすくなったそう。細かい屑もさっときれいに

    髙橋さん愛用のミニぼうき。使い込んで、いい具合にすり減り、より掃きやすくなったそう。細かい屑もさっときれいに




    〈撮影/村林千賀子 取材・文/熊坂麻美〉

    工房ストロー
    山形県最上郡真室川町平岡885
    https://kobo-straw.com/

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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