稲作の歴史とともに育まれ、かつて農村の暮らしの隅々で活躍した藁細工。山形・真室川町に「工房ストロー」の髙橋伸一さんを訪ねました。今回は、制作部屋にお邪魔してお話を伺います。その素朴な手仕事の技は、山形の小さな工房から新しいかたちで未来に引き継がれていきます。
(『天然生活』2018年1月号掲載)
(『天然生活』2018年1月号掲載)
「藁の文化はいま継がないと絶えてしまう」という想いで
伝承文化を守る昔ながらの農家の暮らし
藁細工は稲作をする地域を中心に発展し、藁は雨具や履物、屋根材や牛馬の飼料など、暮らしのいたるところで使われてきました。
しかし、時代の変化とともに、藁の文化は徐々にすたれていきます。
真室川町では、藁細工をつくる農家はほとんどいなくなったものの、一部の古老たちの間で文化として残っているのだといいます。
「藁細工の素材となる藁は米づくりで豊富にあるし、在来種の作物も畑で栽培できる。地域の伝統文化を継承するのに昔ながらの農家の暮らしはベストだった」と、髙橋さん。
役場を辞め、勘次郎胡瓜などの伝承野菜を含めて200種類もの野菜や豆や米をつくるかたわら、藁細工を伝える講座で出会った伊藤佐吉さんに本格的に教えを請いました。
ただ手順を習うのではなく、「加減」を感覚でつかまないと技術として継承できない。
そう思った髙橋さんは、何度も佐吉さんのもとを訪ね、納得のいくまで佐吉さんの作業を見て、自分も手を動かし、わからないところを繰り返し質問したといいます。
佐吉さん自身も、藁細工の文化が消えつつあることを憂えていたんだと思う、と髙橋さん。
「『こんなにしつこく聞いてくるのは、おめえだけだ』っていいながら、いつもうれしそうだったから」
〈撮影/村林千賀子 取材・文/熊坂麻美〉
工房ストロー
山形県最上郡真室川町平岡885
https://kobo-straw.com/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです