母親がやさしい言葉を使うほどに、息子もやさしい言葉を発する子に育つ
母親がやさしい言葉を使うほどに、息子もやさしい言葉を発する子に育つ
かわいい息子とは、できればずっと仲良くしていきたいもの。そのために、一番大切なこととして、脳科学者の黒川伊保子先生はこう語ります。
「母は息子と『やさしい対話』をしておくべきです。日本では母と子の会話といえば、指図と口答え、文句と不機嫌が主になってしまうことが多く、やさしい言葉を口にすることが少ないのです」
つまり、育った子どもがなぜやさしい言葉を使わないのかというと、それは親が口にしないからということ。これについて、黒川先生は人工知能でたとえて説明しています。人工知能に新しい言葉を入力しないと、その言葉はいつまでたってもアウトプットされません。子どもの脳もそれと同じこと。親が日頃から、やさしい言葉を入力してあげることで、日頃からやさしい言葉を発する息子に育っていくそうです。
実際に、黒川先生ご自身も、息子さんに対して、生まれてきたその日から「あなたが好きよ。愛してる」というひとことを伝え続けてきたのだとか。その結果、幼少期の息子さんも自然に「好きだよ、ママ。愛してる」といってくれる子どもになったそうです。
命令系を使わず、頼りにすることが、やさしい男を育てる秘訣
また、愛情を与えるのに加えて、大切なのが「何かをしてほしいときは、命令系を使わず、頼りにする」というもの。
たとえば、公園での遊びに夢中になっている息子を家に帰らせたい時に、「帰るわよ、早く降りてきなさい」というのではなく、「そろそろ帰らないと、ママ、カレーをつくる時間がなくなっちゃう。どうしよう」と困惑して見せる。すると、普段は命令に従わない子も、「わかった、帰ろう」といってくれるようになるそうです。
「脳は他者との関係性を常にはかるインタラクティブ(相互作用)マシンです。頼られた側は、自然にその場のリーダーになってしまい、自制して、全体を考えるようになります。親子関係であっても、これは同様です。頼られれば頼られるほど、男の子は凛々しく、賢く、たくましく育ちます」と黒川先生は続けます。
そして、ときには、母親側から「肉じゃがの味見てくれる?」「この洋服、どうかしら?」などと相談ごとをつくり出して、対話に持ち込むのも重要です。母親の相談ごとに乗る経験を積むで、大人になっても、恋人や妻のつくる料理の変化や、髪型や服装の変化に気が付ける男性へと育っていくのです。
思春期の男の子が、親に反抗する理由
そして、年齢と共に子どもの脳には変化が起こります。とくに、12歳を過ぎた頃から、人間の脳は、記憶の仕方が「こども脳型」から「おとな脳型」に変わっていきます。
「子どもの脳では、体験記憶は五感でキャッチした感性情報と共に格納されます。たとえば、新しい車でドライブに行った記憶は、真新しい座席シートの匂いと共に浮かんできたり、口に入っていたキャンディーの味まで思い出したり。子どもの頃の記憶は、いわば感性記憶です。ただ、この記憶の仕方だと記憶領域が足りなくなってしまうので、おとなの脳はもっと要領よく記憶を格納していきます」
12歳半から2年間ほどかけて、こども脳からおとな脳へとシフトしていく間、脳の構造は不安定な状態に。だからこそ、思春期の子どもは、不安定になりがちで、自分の気持ちがうまく引き出せなくなるのだそうです。
さらに加えて、男の子は14歳あたりからテストステロンが強くなるので、仮に共感型の対話をマスターしている子でも、一時期無愛想になります。さらに、テストステロンは縄張り意識を掻き立てるので、「勝手に部屋に入るな」「余計なことをいうな」と騒ぐことも増えていくのだとか。ただ、テストステロンの分泌量が思春期にピークを迎えた後、量を減らしていくため、こうした無愛想な時期は18歳までには落ち着くようです。思春期の息子に冷たい言葉をいわれたからといっても、「18歳くらいまでの辛抱」と考えておくことも重要なのかもしれません。
思春期前に、共感型の会話を身に着けてもらおう
そして、男性ホルモンであるテストステロンの分泌量が増える思春期、すなわち14歳前後になると、脳が共感型の会話よりも、問題解決優先側の対話スタイルに特化していくのだそうです。この思春期までに、共感型の対話をマスターしておかないと、共感型の会話が苦手な大人に。一方で、この時期までに共感型の対話をマスターできれば、生涯、母親に対してやさしい息子でいる上、将来、女性とのコミュニケーションで苦労しない大人に育つ可能性が高くなります。
黒川先生と息子さんの関係についても、思春期以降は、以前のようには「好き」と「愛してる」はいってはくれなくなったそうです。ただ、手をぶつけて痛そうにしていれば、「大丈夫?」と声をかけ、その手を差し出せば、さすりながら「冷やそうか?」と語り掛けてくれるなど、「愛してる」という言葉の代わりに、別の言葉や態度に形を変えて、やさしい対応をしてくれるようになったのだとか。
「お金と愛情はよく似ています。どちらも、手に入らないと使えません。教育資金を貯金するように、愛も貯金してあげないといけないのです」と黒川先生は語ります。
こうした黒川伊保子先生が語る母と息子の関係については、『息子のトリセツ』(黒川伊保子=著 扶桑社)に詳しくつづられています。
黒川伊保子さん
脳科学・人工知能(AI)研究者。1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、コンピュータ・メーカーにてAI開発に従事。2003年より株式会社感性リサーチ代表取締役社長。語感の数値化に成功し、大塚製薬「SoyJoy」など、多くの商品名の感性分析を行う。また男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究成果を元にベストセラー『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(共に講談社)、『娘のトリセツ』(小学館)を発表。他に『母脳』『英雄の書』(ポプラ社)、『恋愛脳』『成熟脳』『家族脳』(いずれも新潮文庫)などの著書がある。
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