• 東京郊外に生まれ、南信州に暮らすライター・玉木美企子の日々を綴る連載コラム。村での季節のしごとや、街で出会えたひとやできごと、旅のことなど気ままにお伝えします。新年を迎えた今回は、村で身近な素材=稲わらを使って、わら細工づくり を楽しみました。

    お正月飾りで余った稲わらを使い、楽しい草あそびを

    新年を迎え、松の内もすぎました。みなさま本年もどうぞよろしくお願いいたします。

    年が明けてすぐ、伊那谷にも初の大雪が降りました。

    これがまた、近年まれに見る大雪で。私が暮らしている場所は標高600メートルくらい、ほどほどの中山間地なのですが、それでも数十センチの積雪になりました。

    画像1: お正月飾りで余った稲わらを使い、楽しい草あそびを

    そんなこんなで、あまり遠くにでかけることもできないこのごろ。

    でも、身近なもので何か楽しみたい、できれば手を動かしたい……そう考え、少し雪が解けたころを見計らって、近所の仲良しの友人に稲わら細工を教えてもらうことにしました。

    近頃がぜん気になりはじめた「草あそび」。

    というのも昨年末、私ははじめて、暮らしている地域の地区作業の一つとして稲わらのお正月飾りを作ったのです。

    先がすぼまった筒状のわら細工、これは「おやす」と呼ばれるもので、神様のお茶碗をかたどっているのだそう。この地域ではそのまま門松に付けているのを目にしますが、実際にご飯を盛ることもあるようです。

    後日書籍で調べると、橙を乗せているものもありました。

    画像: 昨年末につくった「おやす」

    昨年末につくった「おやす」

    この「おやす」づくりが、とても楽しくて! もっと他のものも作ってみたい、試したい、そう思って声をかけたのが、「くさかんむり」の屋号で植物素材を使ったお飾りの販売・ワークショップを行っている松田友恵さん。

    私にとっては「もえちゃん」と呼んで、家族ぐるみでお付き合いさせていただいている、村の大切な友人の一人です。

    ちょうど、もえちゃんが年末のお飾り製作で使ったわらが残っているとのことで、これで郷土玩具のわら細工を作らせてもらうことにしました。

    画像2: お正月飾りで余った稲わらを使い、楽しい草あそびを

    まず挑戦したのは、愛らしいフォルムが気に入った「馬」から。

    水に浸して柔らかくしたわらを十字に重ね、1本ずつ編み込んでいくのは、「おやす」と同じでした。どうやらこれが、細工の基本のようです。

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    今回は5本のわらをひとつに編み込んで、馬の姿を形作っていきます。

    わらを平たくのしながら行うと、形良く編み上げられる気がする……そんな風に、 “コツ” のようなものを発見できると、編む速度は少しずつ上がり、また一段と楽しくなってきます。

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    もえちゃんが出してくれた、お手製のジンジャードリンクをいただき、ポツポツと近況報告のおしゃべりをして。

    わら細工が仕上がる、というだけでなく、そこに至るまでの時間にも、じんわりと喜びを感じるひとときとなりました。

    1つ10分ほどで完成! 元気よく跳ねまわりそうな、2頭の馬ができあがりました。

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    じつは、私が最初にこのような細工に出会ったのは今から10年ほど前、モロッコでのことでした。

    アルジェリアとの国境、サハラ砂漠へと向かうバス旅の途中に立ち寄った小さな町で、子どもたちが「これ買ってよ」と手渡してきたのが、今回のものによく似た馬の植物細工。

    改めて調べてみると、それはどうやら「モロッコ椰子」の葉でできたものだったようです。

    モロッコの代表的な雑貨のひとつ、モロッコ椰子の葉の帽子やバスケット。きっと、その端材で作られたものだったのでしょう。

    海外で子どもたちに囲まれると「危ない」と身構える癖がついてしまっていますが、この時はどこか懐かしい細工に魅かれて、わずかな硬貨と交換してもらったのを覚えています。

    あの日差し。赤茶けた大地の色。

    あの子たち、どうしているのかな……そんな思い出にも浸ってしまいました。

    新型コロナウイルスも依然予断を許さない状況、思うように外出もできない日々。

    こんなときこそ、身近な楽しみを見つけていけたら。そう思います。

    くさかんむり・松田友恵さんは不定期で わら細工づくりのワークショップ も開催しています。よろしければぜひ、Instagramをのぞいてみてくださいね。

    https://www.instagram.com/moe.kusakanmuri/
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    玉木美企子(たまき・みきこ)
    農、食、暮らし、子どもを主なテーマに活動するフリーライター。現在の暮らしの拠点である南信州で、日本ミツバチの養蜂を行う「養蜂女子部」の一面も

    <撮影/佐々木健太(プロフィール写真)>



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