てん菜の収穫を体験
吉田さんが茎の部分を持ち軽く力を入れると、するりっ。まるで大きなかぶのように肥えた、真っ白い根が現れました。この植物こそ、サトウキビと同様に砂糖の原料となる、「てん菜」です。
てん菜とは
砂糖の原料で、ビートやサトウダイコンとも呼ばれるが、実はほうれんそうと同じヒユ科に属する植物。根を煮出すことで糖分を抽出。不純物を取り除いて煮詰め、結晶化させたものが、砂糖(てん菜糖)となる。
「てん菜は、光合成によって根に糖分を蓄えますが、そのためには寒暖差が大きいことが大事。2020年は冷え込みが少なかったからか、収穫量は多いものの糖度はさほど高くないかな。全体的に根の体積が大きいときよりも、きゅっと引き締まっているときのほうが糖度が高いんです」と、ここで愛情いっぱいにてん菜を育てる、假屋智博さんが教えてくれました。
初めててん菜を見る吉田さん。さっそくその場でかじらせてもらうと、ぽりぽりと心地よい食感に「甘い!」とびっくり。
「昔の人は、漬物にしていたみたい。僕らはしないけど、お砂糖といったらてん菜糖。スイーツも料理もなんでもおいしくなりますよ」と、假屋さんが誇らしげに話します。
葉は翌年の作物の養分に、循環するてん菜の畑づくり
てん菜は機械で葉を一気に刈ったあと、別の機械で根を掘り起こして収穫。砂糖の原料にはならない葉の部分も、畑に埋めて戻すことで肥料として活躍します。
「連作障害を防ぐため、てん菜は輪作が基本。来年この畑には小豆を植えます」(假屋さん)。順ぐりに異なる作物を育てることで、土壌を最適な状態に保つわけですが、その土づくりに、てん菜の葉がひと役買っているというわけです。
また、糖分を抽出したあとの根のしぼりかすも、ビートパルプとして家畜の餌に再利用。てん菜のすべてを、むだなくありがたく、使い切っているのです。
その根は私たちと動物に口福を、その葉は翌年の作物の養分に。見事に循環するあり方を、てん菜が教えてくれたようでした。
吉田さんのてん菜糖を使った料理
甘味をつける以外にも、しっとりさせたり照りをつけたり。ふだんから料理に砂糖を使うことが多い吉田さん。なかでも「国産てん菜糖」はすっかりお気に入りの様子。
「角があるような鋭い甘味ではなく、やわらかな丸みのある甘さがとても好きです。コクのある香りもいいし、溶けやすいので便利」穏やかな甘味は、やさしい味に仕上げたい和食にぴったりとも。
手羽先と新じゃがのうま照り煮
「すぐイメージに浮かんだのが、和食定番の煮ものでした。今回はだしいらずで簡単にできる手羽先の煮ものを紹介していますが、てん菜糖は、甘味をきちんと加えつつも、素材のうま味を壊すことがありません。合わせる食材の持ち味を生かすのが、とても上手なお砂糖だなと感じました」
鶏のうま味に、てん菜糖で仕上げたやさしい甘辛味が食欲を誘います。
材料(4人分)
◎ 鶏手羽先 | 8本 |
◎ 新じゃがいも | 小8~10個(約500g) |
◎ 半熟卵 | 4個 |
◎ 絹さや(塩ゆでしたもの) | 10本 |
A | |
◎ 水 | 1と1/2カップ |
◎ 国産てん菜糖 | 大さじ1 |
◎ しょうゆ | 大さじ2 |
◎ 酒 | 大さじ2 |
◎ しょうがの薄切り | 1/2片分 |
◎ サラダ油 | 小さじ1 |
つくり方
1 手羽先は関節で2つに切り分ける。新じゃがいもはよく洗い、大きければ半分に切る。絹さやはせん切りにする。
2 フライパンにサラダ油を熱し、手羽先を入れて両面焼き色がつくまで中火で焼く。新じゃがいもを加えてさっと炒め、Aを加える。煮立ったらふたをしてじゃがいもに火がとおるまで弱めの中火で約15分煮る。
3 ふたを取り、強火にして煮からめる。煮汁がすべてなくなる前に半熟卵を加えてさっとからめ、火を止める。
4 半熟卵は半分に切って器に盛り、絹さやをのせる。
春にんじんのごま味噌あえ
副菜の味噌あえは、やわらかくて甘味が強い春にんじんの、その繊細な香りと味わいを生かすべく、てん菜糖はほんの少しだけ。甘味を助ける感覚で加えています。
「てん菜糖がにんじんの持つ甘味を消してしまうことがないので、春にんじんらしい風味もしっかり感じられると思いますよ。豊かな香りは味噌との相性もいいですね」
材料(4人分)
◎ にんじん | 小2本(約200g) |
A | |
◎ 白すりごま | 大さじ2 |
◎ 味噌 | 大さじ1 |
◎ 国産てん菜糖 | 大さじ1/2 |
◎ 水 | 大さじ1/2 |
つくり方
1 にんじんは皮をむき、4cm長さの細切りにする。熱湯で約1分ゆでて、ざるに上げて冷まし、水けをよくしぼる。
2 ボウルにAを合わせ、1を加えてよく混ぜる。
フレッシュいちごソースの牛乳プリン
「デザートではいちごとてん菜糖をあえていますが、いちご本来の酸味を引き立たせてくれるので、あえるだけで上質な甘酸っぱいソースになりました」
プリン生地にもソースにもてん菜糖を使って。食後のおなかにもするりとおさまる、穏やかな味です。
材料(4人分)
◎ 牛乳 | 2カップ |
◎ 国産てん菜糖 | 大さじ3+大さじ1 |
◎ 粉ゼラチン | 5g |
◎ いちご | 6~8個(約130g) |
◎ あればミント | 適宜 |
つくり方
1 粉ゼラチンは少量の水(分量外)でふやかしておく。鍋に牛乳を入れて火にかけ、煮立つ直前に国産てん菜糖大さじ3を加えてよく混ぜ、火を止めてゼラチンを溶かす。器に均等に流し入れ、冷蔵庫で冷やし固める。
2 いちごは1~1.5cm角に切ってボウルに入れ、国産てん菜糖大さじ1を加えてあえ、冷蔵庫に入れておく。
3 1に2をかけ、ミントを飾る。
国産てん菜糖について
北海道の広大な大地でのびのびと育ったてん菜が100%原材料の、安心の国産砂糖。てん菜から糖分を煮出して精製したものに、さらにてん菜の糖蜜を加えることで、特有の上品なコクのある風味をプラス。主張しすぎない穏やかな甘味とまろやかな香りが特徴です。
北海道のてん菜畑から生まれた国産てん菜糖 クラフト:三井製糖
てん菜は別名サトウダイコン・ビートと呼ばれる植物。北海道の大自然で育ったてん菜から作った砂糖に、てん菜糖蜜を配合しました。日本国内で作られた安心のてん菜糖です。コクのあるやさしい甘さで、毎日のお料理にお使いいただけます。
訪ねた人 吉田 愛さん
よしだ・あい
料理家・唎酒師。料理研究家のアシスタントを務めながら日本料理店に勤務し、和食の基本を学ぶ。さらに和食を極めるために京都での板前修業を経て、独立。素材を生かした和食を中心に、料理教室で講師を務めるほか、雑誌や広告でも活躍中。
<撮影/山田耕司 取材・文/遊馬里江>
[提供/三井製糖]