• イギリス伝統のカーテンは中綿入りで、すべて手縫いなのだとか。古きよきイギリスの田舎町・コッツウォルズの古民家に暮らす日本人女性、コヅエ・ガーナーさんは、そんなカーテンやクッションなどの布のインテリアアイテムを、ちくちく縫い上げるのが仕事です。今回は、ガーナーさんに、イギリスの布のインテリアの魅力とそのつくり方、出合いについて教えてもらいました。

    コッツウォルズにも春が近づいてきました

    コッツウォルズの朝も少しづつ日の出が早くなってきています。

    散歩に出ると、クロッカスやスノードロップが土から顔を出し始めているのを見つけました。春が近づいてきているのが、感じられうれしくなります。雨が降って、寒い日が続いても、春が近いと感じるだけで、気分は明るくなります。

    画像: 教会の敷地で見つけたクロッカスの花の絨毯

    教会の敷地で見つけたクロッカスの花の絨毯

    画像: 可憐な姿のスノードロップが顔を出すと、イギリスの春はもうすぐ

    可憐な姿のスノードロップが顔を出すと、イギリスの春はもうすぐ

    イギリスのインテリアの隠れた主役、ソフトファニシングの世界

    さて、今回は私の仕事、ソフトファニシング(布のインテリア)のカーテンづくりを紹介したいと思います。

    画像: マスターベッドルームの例。カーテン、クッション、ヘッドボードなどすべてがソフトファニシング

    マスターベッドルームの例。カーテン、クッション、ヘッドボードなどすべてがソフトファニシング

    ソフトファニシングとは布のインテリア装飾です。アームチェアの取り外しカバー、ブラインド、クッション、ほかにもベッドカバーやいろいろあります。

    始めたのは、子ども部屋のカーテンをつくろうと思ったのがきっかけです。デパートのインテリアの布売り場に行ってみると、その大きさに圧倒されました。

    イギリスでは、カーテンやクッションなどのソフトファニシングを、インテリアショップでオーダーメイドされる方や、街のカーテンメーカーに布を渡してつくってもらう方だけでなく、を自分でつくるとう方もたくさんいます。

    インテリアの布売り場は、そんな方たちのための、布の美しさと種類の豊富さが素晴らしいものでした。私は、それらの布でつくり上げられる空間を想像するだけで、「早くつくりたい」という衝動にかられました。

    本を見ながら、なんとかつくりあげた私は、気が付けば、地元のカレッジのソフトファニシングコースに通い始めているほど、ソフトファニシングに夢中になっていたのです。

    ここではカーテンだけではなく、デザインやアートなどのたくさんの知識、テクニックも学ぶことができ、いまでは私の仕事になっているというわけです。

    画像: 三つ折りのドレープが美しいカーテン。ひだに厚みがあり、存在感たっぷり

    三つ折りのドレープが美しいカーテン。ひだに厚みがあり、存在感たっぷり

    ちくちく手縫いでつくるカーテンは着物のような存在?

    イギリスの伝統的なカーテンは、ほとんど手縫いでつくり上げます。

    イギリスのカーテンは、表から縫い目が見えないように縫うのが基本です。代表的なのは、表地と裏地の間に中綿(カーテン用ドミット芯)をはさんだインターラインカーテン。イメージ的には、日本の半纏がカーテンになった感じでしょうか。

    昔は、窓からのすきま風などひどく、断熱対策で綿を入れ始めたと思われます。いまは窓のつくりもよくなり、断熱性に優れた二重ガラスの窓も多く、カーテンの断熱性は重要ではなくなっていますが、ドレープの美しさから、いまでもインターラインカーテンを希望される方が多くいます。

    カーテンづくりは、窓の採寸から始まります。デザインを考えたらサイズを計算し、布裁断です。

    画像: クライアントとデザインの打ち合わせでは、サンプルとラフなスケッチでイメージしやすくして提案

    クライアントとデザインの打ち合わせでは、サンプルとラフなスケッチでイメージしやすくして提案

    大きな窓だと、布を何枚も縫い合わせることも。そうなると柄合わせの作業も入ります。その場合は、まずは手縫いでしつけ縫いをして柄合わせをして、ミシンで縫い合わせます。

    表地、裏地、中綿が裁断されると、左右、下部の出来上がり線にアイロンをかけて出来上がり線を見えやすくします。その線に合わせて、中綿を置きます。

    画像: 布にアイロンで出来上がり線を付けたところ

    布にアイロンで出来上がり線を付けたところ

    そして、手縫い用の強い糸で、箇所に合わせて表地の糸一本をすくってロッキングステッチや、ヘリンボーンステッチなどで縫っていきます。

    画像: 中綿を表地に糸一本すくってロッキングステッチをしているところ

    中綿を表地に糸一本すくってロッキングステッチをしているところ

    そして、角には必ずおもりが入った小さな袋を縫い付け、マイタ―と呼ばれる方法で布を折り、ラダーステッチで、縫い合わせ、そのまま、ラダーステッチで表地を中綿に縫い付けていきます。

    画像: 小さな袋におもりを入れて中綿に縫い付けたところ

    小さな袋におもりを入れて中綿に縫い付けたところ

    画像: 折り紙のようにアイロンで線をつけ、マイター折りに

    折り紙のようにアイロンで線をつけ、マイター折りに

    画像: マイター折りの角をラダーステッチで縫い付けたところ

    マイター折りの角をラダーステッチで縫い付けたところ

    画像: 裏地もラダーステッチで縫い付け

    裏地もラダーステッチで縫い付け

    中綿を表地に縫い付け終わると、上部に芯地をしつけで固定します。芯地が付いたら、裏地を縫い付けます。左右、上部とまたラダーステッチで縫っていきます。

    表地、中綿、裏地がすべて縫い合わされたら、プリーツをつくります。今回紹介する例は、人気があるトリプル、フレンチプリーツです。

    プリーツとプリーツの間、プリーツの数などを考えながら計算し、芯地の部分をミシンで縫い、三つ折りに形を整え、手縫いで仕上げます。

    画像: 芯地の深さにミシンで縫う

    芯地の深さにミシンで縫う

    画像: 三つ折りにして手縫いで形を整え、プリーツを仕上げる

    三つ折りにして手縫いで形を整え、プリーツを仕上げる

    最後に裏地と表地に刺繍糸で糸ループでしっかり止めて、できあがりです。

    画像: ちくちく手縫いでつくるカーテンは着物のような存在?
    画像: 上で紹介したクライアントとの打ち合わせで提案したカーテンが完成したもの。プリーツを整え、リボンをかけて納品です。ベルベットの緑のリボンが、アクセントに

    上で紹介したクライアントとの打ち合わせで提案したカーテンが完成したもの。プリーツを整え、リボンをかけて納品です。ベルベットの緑のリボンが、アクセントに

    カーテンづくりは地味な作業が多く、大きなカーテンの場合、何十mもちくちくと手縫いが続くこともあります。ときどき、カーテンをほとんど手縫いでつくると話すと驚かれますが、そんなときによく例えるのが、日本の着物です。

    縫い目が表に出ないように、丁寧に縫われていて、手縫いでも、とても丈夫です。いまでも続く伝統的な手法でつくられた、窓に飾られたカーテンを見ると、やっぱり魅力たっぷりです。

    旅行が難しいいま、どうぞ海外ドラマ、映画のシーンに出てくるカーテン、布装飾もぜひ楽しんでみてもらえれば、うれしいです。今日も、また、ひたすらちくちく縫っています。

    コズエ・ガーナーさんからプレゼントがあります

    画像: イギリス伝統の手縫いのカーテンづくり|イギリス・コッツウォルズからの手紙

    コヅエ・ガーナーさんから、お住まいのチャールブリーの地図をあしらったエコバッグをいただきましたので、5名様にプレゼントします。

    ご希望の方は、

    「エコバッグ希望」のタイトルで、お名前、ご住所、電話番号をご記入の上、tennen.info@fusosha.co.jpにメールをお送りください。

    3月24日(水)締め切りです。

    皆様のご応募お待ちしております。

     

    <写真・文/コズエ・ガーナー>

    コヅエ・ガーナー
    神戸市出身。イギリス・コッツウォルズ在住。ソフトファニシング・インテリア、風水インテリアデザイナー。2008年からMistyInteriorをスタートし、ロンドンを中心に活動している。


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