「おいしい!」と思う、それがオーガニックである理由
「万年青のオモテ市」の会場であり、発起人である、西陣「串揚げ万年青」。
「串揚げ万年青」の、食材も、調味料も、オーガニックが主軸です。
「2008年のオープンからそうです。だけど、当時はまだまだオーガニックは特別なものだったし、串揚げと結びつかないところもあったと思います」と、女将・青木裕子さん。
オーガニックを主軸にしたのは、自分たちがふだん食べていたから。コストはかかっても自分たちがいいと思うものを使いたい、そうするしかなかったと言います。
「食生活を見直したきっかけは、夫のアトピーと小児ぜんそく。アナフィキラシーショックも3度経験し、妻として気配りが足りなかったのではないかと、自分を責めたこともありました。できる限りオーガニックに切り替えて。お肉を断って野菜だけの時期もありましたが、それは続かず、助産師さんのアドバイスで、野菜をお肉と魚の3倍食べるようになりました」
無理なく続けられて、おいしい。家族もすこやかに過ごせ、夫のアトピーも改善。最近になってぜんそくもおさまったそうです。
串揚げは、創作はせず、一本につき素材ひとつ。素材そのものがおいしいから、衣も薄く。一番搾りの菜種油、お塩や和がらしといった薬味も、昔ながらの製法のもの、無添加のもので。あらためて、食材そのもののおいしさに感動します。
「おいしい!」から、オーガニックと出会ってほしい。
そうしたらきっとオーガニックが食卓の当たり前になる。
串揚げも、オモテ市も、気づきをくれる場です。
余計なものは入っていないから、できたてを届けたくて
昨年、新たにスタートしたのが、オモテ市のデリバリー。
万年青のオモテ市の美味しいものを、ご自宅まで、参加メンバーが配送するというもの。
なんでもが宅配便で届けられる中、自分たちで一軒ずつまわるというのです。
「オモテ市で扱うものは、余計なものを入れていないから、日持ちしないものが多いんです。できるだけ、できたての、新鮮なものをその日のうちに、届けたかったんです。新鮮なもの、安心できるものを、手から手へ届けたいと思ってはじめました」
京都には昔ながら、近郊の農家さんが町を回って、自分たちの野菜を売る、「振り売り」が少ないながら続いていますが、まさにそんなふう。手から手へ届けたい。思いあっての、チャレンジです。
「最近、たくさんの方が来てくださって、入店やレジに並んでいただくことも多くて。小さなお子様がいらっしゃる方、ご年配の方とか、オーガニックが本当に必要な方が来づらいんじゃないかとも思ったんです。昨年はなかなか外出できない状況でもありましたし、みんなとやってみるかって」
昨年11月に第一弾を実施し、まだまだ手探り。
参加メンバーそれぞれ本業があるので、無理がないように、これから創意工夫しながら、年に何度かできればと考えています。
毎月25日、小さくとも、確かなものと出会える。続けることで、信頼を築いてきた、万年青のオモテ市。
いろんな情報いっぱいの世の中だけれど。暮らしを変えるのは、こんな確かなつながり。だからおいしいんだ! という、自分の中の気づき。
見て、話して、手から手へ。マルシェこそ、これから必要なものだと思うのです。
万年青のオモテ市
毎月25日 12:00~夕方(売り切れまでオープン、11:45から入場整理券配布)
出店者など、くわしくはInstagramにてお知らせ
https://www.instagram.com/kushiage.omoto/
串揚げ万年青
京都市上京区筋違橋町554-2
TEL075-411-4439
https://omoto2013.com
宮下亜紀(みやした・あき)
京都に暮らす、編集者、ライター。出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。『はじめまして京都』(共著、PIE BOOKS)ほか、『本と体』(高山なおみ著)、『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、「絵本といっしょにまっすぐまっすぐ」(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)など、京都暮らしから芽生えた書籍や雑誌を手がける。
https://www.instagram.com/miyanlife/