オンとオフを切り替えるのはたいへん難しい。
なにしろ自宅でほとんどの仕事をこなしているし、仕事の内容も実際の生活から生まれるものばかりだから、ここから先は仕事ですって線引きができない。言葉は悪いが、生活を切り売りしているようなもの、とさえ思ったこともある。
娘が小さい頃はとくにオンオフの切り替えはまったくなかった。保育所から帰れば台所にも立ち入るし、撮影スタッフが面倒を見てくれているあいだに料理をつくるなんてこともよくあった。預けることができないときはおんぶをして仕事をした。
強いて言うなら、仕事が終わる頃、夕焼けを見て、すっと仕事から離れることができるとか、スタッフを外まで見送ってから玄関先の落ち葉を掃除したり、そのまま庭の草木の様子を見たりしているうちに、今日も無事終わったなと思うのがオフだろうか。
オンでいえば朝、学校に行く娘を駅まで送って帰ってくると仕事モードにスイッチオン。
トイレ、リビング、ダイニング、玄関の掃除を駆け足でして、テーブルを拭き上げると一気に頭が切り替わって仕事に入る。時間があればヨガマットを広げて、ブロックの上に背中を置いて肩甲骨を広げ、腰とお尻にマッサージボールをゴロゴロゴリゴリと押し当てて体をほぐす。
無心になることも大事な切り替えの時間になっている。
<撮影/邑口京一郎>
飛田和緒(ひだ・かずを)さん
東京都生まれ。高校3年間を長野で過ごし、山の幸や保存食のおいしさに開眼する。現在は、神奈川県の海辺の町に夫と高校生の娘と3人で暮らす。近所の直売所の野菜や漁師の店の魚などで、シンプルでおいしい食事をつくるのが日課。気負わずつくれる、素材の旨味を生かしたレシピが人気の料理家。
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