(『「どっちでもいい」をやめてみる』より)
食卓の基本となる飯碗と汁椀を選ぶ
器を手で持ち上げるのは、日本独特の食文化。軽すぎず、重すぎず、「やっぱり好きだなあ」「使っていて心地いいな」という感覚を飯碗や汁椀で毎日味わうことは、長い目で考えるととても大切なことだと思います。
パン屋を営んでおりますが、食事の基本は何といってもお米です。もっとごはんを食べて、日本の農業を応援したいと常々思っています。さて案外難しいのが、ごはん茶碗。
ひとつと決めず、気分に合わせて粉引きや瀬戸と揃えたい、いつものごはんを美味しく食べたい。
誌面の素敵なスタイリングを長年うっとり眺めていたら、フードスタイリストの高橋みどりさんとご縁ができて、ギャラリーで器展を開催しました。
そこでは教わることがたくさん。出会った器は、決してひとりではたどり着けなかったものたちです。
浅井庸介さんの飯碗は手触りも優しく、ごはんがとっても美味しく感じます。新宮州三さんの汁椀は、味噌汁もお汁粉も、何だかいつもより格上げされる。わが家で間違いなく最多出場の器たちです。
わが家の朝食はお雑煮やきなこ、磯辺巻きなどなど、週に2日はお餅です。くだものと飲み物を合わせて、ほんの10分、15分程度で準備ができ、お腹も心も満足度が高い。おすすめの朝ごはんです。
ところでお餅って、最高の非常食だと思いませんか。
災害時、いつもと変わらないものを食べたり飲んだりすることで、どれだけ心の平安が保てることでしょう。実は私も「お正月のもの」と思っていたお餅でしたが、餅好きの夫の希望で、朝ごはんに食べるようになりました。
あら、なんて簡単、なのに消化も良くて腹持ちもいい。胃腸に負担がかかる玄米も、お餅にしたら食べられます。
息子がサンフランシスコへ留学していた6年間、ことあるごとに荷物にお餅を入れて送りましたが、帰国して「実は一度も食べなかった」と言われました。ごはんを炊くより簡単で、個別のパックなら日持ちもするのになあ。
みんなにもっともっと食べてほしい食材です。
<撮影/濱津和貴>
本記事は『「どっちでもいい」をやめてみる』(ポプラ社刊)からの抜粋です
引田かおり(ひきた・かおり)
夫の引田ターセンと共に、2003年より東京・吉祥寺にある「ギャラリーfève」とパン屋「ダンディゾン」を営む。さまざまなジャンルの作り手と交流を深め、新しい魅力を引き出し、世に提案していくことを大きな喜びとしている。著書に『私がずっと好きなもの』(マイナビ)、ターセンとの共著に『しあわせな二人』『二人のおうち』『しあわせのつくり方』(すべてKADOKAWA)がある。
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「どっちでもいい」をやめて、人まかせにせず、自分の「好き」を優先させると、人生を気持ちよく歩けます。本書では、正直な気持ちを表現できるようになれるヒントを、文章と写真で紹介。引田かおりさんが選び抜いた器や洋服、長年集めたかご、ガラス、暮らしの工夫も必見です。