保護犬とはぐくむポジティブで豊かな暮らしをご紹介。イラストレーター・オカタオカさんが、2020年7月に家族として迎えた臆病な元保護犬「アビー」との一喜一憂の日々をつづります。今回は、アビーの散歩を通しての成長と、散歩中の気づきのお話です。
元保護犬アビーの散歩での成長
少しずつ散歩に慣れ始めるアビー
散歩を始めてからのアビーの成長は目まぐるしいものだったのですが、散歩に慣れるまではなかなか大変でした。
しばらくはどう歩いていいのかわからず右往左往しがちのアビー。そこへ人や自転車、特にバイク(車は意外に大丈夫でした)がやってくると、もう大変。
パニックを起こし、とにかくどこかへ逃げようとしていました。飼い主にすら怖がっているのだから無理もありませんが。
それに加え、犬も苦手なので、角を曲がってきたチワワに吠えられて腰を抜かしたり、前を歩くトイプードルにおののいたり。
僕たちの前では絶対にしなかったおしっことうんちは、外だとすんなり。自然の摂理には逆らえないということでしょうか。不思議なものです。(ちなみに現在も家ではめったに人前ではしません)
1カ月もするとだいぶ慣れてきて、散歩行くよ! と言うと不安そうにしながらも玄関までてくてく歩いてくるようになりました。
そして散歩中に名前を呼ぶと、なんとなくですがこちらを振り向いてくれるようになり、“犬との散歩は1番のコミュニケーション”という言葉を強く実感しました。
2カ月もすると色々な変化が見られるようになりました。
ダランとしていたしっぽも回数を重ねるたび徐々に上がってきて、時折フリフリするまでになりました。
アビーは家に来た当初からパンティング(※)がひどく心配で病院にも連れて行くほどだったのですが、これも散歩を重ねるたびに回数が減っていきました。
※パンティングとは、口を少し開け舌を出してハァハァする犬の呼吸法のこと。基本的には体温調節が目的ですが、精神的に不安定だったり身体のどこかに痛みがあったりするときなどにも見られます。
とくに病院でも異常は見つからず、今思えばアビーの場合は急激な環境の変化によるストレスからくるものだったのでしょう。
突然聞いたアビーの声
そんなある日、道の向こうから小柄なおばあさんが歩いてきて「あら、かわいいわね〜」と話しかけてきた瞬間、大きな声でウォン!ウォン!とアビーが吠えたのです。
家に迎えて2カ月の間、アビーの声を一度も聞いたことがなかった僕たちは、突然のことにとても驚きました。思っていたよりもかなり太い声だったのでなおさらでした。
そのときは驚くばかりでしたが、何にせよはじめてアビーの声を聞けたうれしい出来事でもありました。
それ以来、散歩中に吠える対象はなぜか“小柄なおばあさん”なので、もしかしたら野犬時代に何かされたなどのトラウマがあるのかもしれません。
散歩からふくらむアビーのこれまで
散歩をしているとアビーの野犬生活に思いを巡らすことも増えました。
人やバイクには怖がるものの、踏切の音、電車に対しては平然としているので、もしかしたら線路の近くで生活していたのかな? と思ったり、公園に行っても広場より木が生い茂って落ち葉がたくさん落ちている場所で興奮する様を見ると、やはり山の中で生活していたんだなと思ったり。
先ほどは「犬も苦手」といいましたが、どういうわけかアビーは柴犬だけは好きなようで、すれ違うたびに目を輝かせています。ということはもしかすると柴犬のような子と山で生活していたのかも……と思ったり。単純にタイプなだけかもしれませんが(笑)
それと、猫、タヌキ、鳥類(ハトやカラスなど)にはなぜか強気なこともわかりました。
近所につがいのタヌキがいてよく夜に遭遇するのですが、見つけた瞬間にタヌキの方へ走り出し、見失った後もずっと執念深くにおいをかいで探しまわっていたこともありました。
さらには道端のハトにいきなり飛びかかったり、カラスにむかって吠え散らかしたり。まさか野犬時代は鳥を襲って……なんて想像もしてしまいました。
これらの真偽はわかりませんが、散歩中の何気ない出来事がアビーのこれまでを想像させてくれるのです。
今ではすっかり散歩が大好きなアビー。これからどんな風に成長していってくれるのか楽しみな僕たちです。
オカタオカ
犬と車が好きなイラストレーター。宮崎生まれ、鹿児島育ち。現在は東京都在住。桑沢デザイン研究所卒業。雑誌や書籍などを中心にイラストレーションを手がける。バンド“すばらしか”の加藤寛之とのポッドキャスト番組『クルマのふたり』も配信中。
インスタグラム:
@okataoka(イラストレーション) @abbie_in_the_life(保護犬日記)
犬を飼いたいと思ったときに、ペットショップで「買う」だけでなく、保護犬を「迎える」という選択肢もあるということを広く伝えたい。そんな思いから生まれた1冊です。
保護犬を実際に迎え入れた方々の、ありのままの暮らしを楽しく伝えることで、保護犬たちの魅力を伝えるとともに、少しでも保護犬を迎えるきっかけとなればと願っています。