我が家の猫、紅子
我が家の猫は紅子といいます。10年前やってきた彼女と暮らすまで、私は動物と暮らした経験はありませんでした。
はじめは仕事をしていても、ニャーと声をかけられるとすぐに「はいはい」とご機嫌伺いに立ち、席を外すとさっきまでわたしが座っていた椅子に寝そべっている猫に退けとも言えず立ち尽くす。
そんなおっかなびっくりの半年が過ぎたころ震災が起こり、避妊手術もあり、気づけば私の中で彼女は気をつかうお客様から、気のおけない家族になっていました。
今はニャーと声をかけられても「はいはい」とたまにはスルー。私がちょっかいをかけてもスルーされるのだからお互い様ですよね。
さて、「猫」とは俊敏で、身軽に机の上に飛び乗ったりカーテンレールを走ったりと聞いていましたが、紅子はテーブルの高さにはほぼ飛び乗る事をしません。
壁で爪を研いだりもしません。たまに絨毯でパリパリとするくらいのかなりのおっとりさんでした。
噂に聞いていた「猫」ではない「紅子」を日々知ることは面白いです。
新しい家具が届いても半年くらいは近寄らず、紅子のためにと買った椅子なんてほぼ乗らず、え? これ? ってものを気に入る。
おもちゃより、道端で抜いてきた天然の草で遊んでもらうのが好き。
私が仕事に集中し完全に無になっていると、ふいにびくっとするような大きな声で鳴かれ「私をわすれるな」って言われる。
なぜか通り道に落ちているようにコロンと寝ている。
自分の食べ物にも人間の食べ物にも興味がない。
ご飯を食べている時にブラッシングしても、ぎゅっと抱きしめても怒らない。
鼻腔が短いからイビキもかくし、鼻息が荒い。
寝息のプスー、プスーという音がいつもどこからか聞こえて来る。
私がお風呂に入ると、必ず甘えた鳴き声で呼んでいる。トイレに行っても付いてきて、扉前で待っている。
でも、抱かせてはくれない。フミフミはしてくれないし、一緒に布団に入ってくれないし、膝に乗ってくれたことなんて1度もない。時折ささやかなすりすりと「かまって」と凝視する不器用なツンデレ。
間も無く11歳の紅子。この1年、急に体調が変わってきました。
暑がりだったはずが寒がりになったり、少し太って鼻息が大きくなったり、今まで変わらなかった10年がまったく違う1年になりました。どちらかというと不調な1年です。
老いを感じ少し悲しくもありますが、最近の紅子は子供のような顔になってきて、甘え方も変わってきました。
嬉しいことに、朝、チョンっと触ってくるようになったのです!
彼女との生活を長く続けるためにも今の紅子を見つめ、もっと知ってかなくてはいけませんね。
この頃は寝ている時間も増えて全く気配のない時もありますが、私も家で仕事をしているので、常に側にいます。
無理なくずっとご一緒していきたいものです。
山本亜由美(やまもと・あゆみ)
OLを経て独学でアクセサリー作家となる。
植物を使ったインスタレーションとともに作品展を行っている。
murderpollen マーダーポーレン公式サイト:http://www.murderpollen.jp/
Instagram:@leonardo_abc_