日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
11月7日 13時59分
二十四節気・立冬(りっとう)
北風の冷たさに、冬の寒さを実感するころ
朝の冷気にたき火の煙がのぼり、「冬が立つ」と表現され、そろそろ木枯らし一号の声が聞こえるころです。
とはいえ、ときには小春日和と称するさわやかな晴天に恵まれることもあり、防寒対策などはタイミングが難しくもあります。
「冬の気立ち初めていよいよ冷ゆればなり」と言われるように、まもなく冬の到来です。
立冬の期間の七十二候
11月7日から11月11日ごろ
立冬初候・ 山茶始開[つばきはじめてひらく]
「山茶」はツバキと読みますが、この候で指すのは「山茶花(サザンカ)」のこと。
庭木によくみられる開花期の長い常緑樹です。
美しく咲いた赤や白の花は年を越し、初春まで長く楽しめます。
11月12日から11月16日ごろ
立冬次候・ 地始凍[ちはじめてこおる]
季節は徐々に冬の景色に移り、土の中の水分が凍って、地面が少しずつ固く締まってくる時期。
霜柱ができ始めるのもこの時期といわれています。
同じ季節でも年によって、凍結時期は早かったり遅かったり。
霜柱を見かけたら、ざくざくと踏みしめる感触で季節を感じたいものですね。
11月17日から11月21日ごろ
立冬末候・ 金盞香[きんせんかさく]
「金盞花」と書いて“キンセンカ”と読みますが、ここでいうキンセンカは実はスイセンのこと。
スイセンの花が咲き、香る季節という意味が込められています。
「金盞」は正しくは“きんさん”と読み、黄金の盃を意味します。
スイセンの花の中央部分を盃に見立てた表現なのでしょう。
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* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
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*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2021年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。