日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
11月22日 11時34分
二十四節気・小雪(しょうせつ)
小雪が風に舞い、野山が雪化粧をし始めるころ
まだ寒さはそれほど厳しくはなく、空からは小雪がちらちらと降る程度ですが、確実に西高東低の典型的な冬型の気圧配置になってきます。
北風が葉を払い、森の木々が雪化粧するなど、各地の冬景色がニュースに流れ始めます。
そろそろ暖房器具の準備が必要なころです。
小雪の期間の七十二候
11月22日から11月26日ごろ
小雪初候・ 虹蔵不見[にじかくれてみえず]
どんよりとした重たい雲が垂れ下がる日々が続き、空を見上げても虹は隠れて見えない空模様。
この日を過ぎると年末の繁忙時期が近いことを感じさせます。
少しずつ冬支度を始めていきましょう。
11月27日から12月1日ごろ
小雪次候・ 朔風払葉[きたかぜこのはをはらう]
北風が音を立てて吹き、木々の葉を払うころです。
イチョウ並木では足元が黄色く彩られ、落ち葉のじゅうたんを敷き詰めたよう。
この時期ならではの美しい風景が楽しめます。
“朔風”とは北風=木枯らしのことで、冬の季語でもあります。
寒さもぐんと募ってくる時期です。
12月1日から12月6日ごろ
小雪末候・ 橘始黄[たちばなはじめてきばむ]
「橘」は日本古来の自生する常緑小高木で、柑橘類の一種。
花実ともにその香りはなんとさわやか。
乾燥させた果実の皮は不老長寿の妙薬として、花の香りは香料として好まれてきました。
常緑樹で葉が枯れることがないことから『日本書紀』にも“不老不死の実”として記されています。
その実が黄色に色づくころ。
冬が間近のしるしです。
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* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
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*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2021年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。