• 子育ての悩みや日常生活のちょっとしたイライラ、みなさんどんな風に解決していますか。京町家に家族4人で暮らし、洋服づくりを手掛ける美濃羽まゆみさんは、仕事に家事に忙しい毎日も自分のペースでごきげんに楽しんでいるようです。個性豊かな子どもたちとの向き合い方や日々の小さな心掛け、気持ちの整え方……。美濃羽さんが日ごろから大切にしていることをお聞きして、 “ごきげんに暮らすヒント=ごきげんスイッチ”を探っていきます。今回は「悩ましい子どもの食べ方」について、お話を伺いました。

    悩ましい子どもの食べ方
    「自由に食べるのはいけないこと?」  

    子どもが幼いうちは、手でつかんだり素材ごとに別々に口に入れたり、思いもよらない食べ方をすることが多々あります。親はその都度あと始末に追われ、ついついイライラ……。美濃羽さんはどんな対応をしてきたのでしょう。

    バラバラにして食べたいの!

    味覚過敏の特性があった娘の幼少期、味や食感が混ざっていると嫌がり、素材そのものや単品ばかり食べていた話は前回お伝えしました。

    それでも、保育園に入り給食でいろいろな料理に出会う機会が増えていったからか、3歳ごろになるとお味噌汁や肉じゃがなど、複数の材料を使ってつくる料理にも少しずつトライするようになってきました。

    ただ、食べ方がすごかった!!

    例えば、3~4歳のころでしたかね。なんと目の前のショートケーキを、クリーム、いちご、スポンジと、バラバラにして食べはじめたんです。しかも手できっちり仕分けしながら!!

    ショッキングな現場を目の当たりにして、思わず「どうしてこんな食べ方するの?! 」と悲鳴に近い声を上げたら、彼女はアッサリ「この方がおいしいねん」って。分けておくことで口の中で混ざらずにおいしく味わえるのだとか。

    手でバラバラにしていたのにもちゃんと理由がありました。

    というのも、当時彼女が通っていたのが、5歳になるまで箸をあえて使わせない「手づかみ食べ」をすすめていた保育園だったんです。

    保育士さんいわく、「子どもは全身を使って味わっている」とのこと

    大人はその経験から目で見てだいたいの想像がつきますが、子どもは口に入れる前に指でつまんだりつかんだりすることで、食材のかたさやにおい、温度を感じ、「これはどんな味がするのか」を少しずつ理解していくのだそう。

    それは子どもの育ちにも深く関わっているらしく、「大人が口に入れる」「箸で直接口に運ぶ」よりも遊びの幅も広がって、自分で考えて行動できるようになるのだそうです。※

    確かに食べてる姿はショッキングでしたが、「そうする理由がちゃんとあるんやな」と気づいてからは、むしろ「手づかみもバラバラも、どんどんやっちゃって! 」に変わっていきました。

    ※ 『子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか? 』 (IDP新書)参照

    画像: 「スクープ!いちごケーキバラバラ事件! それにしても、うれしそうに食べてます」ゴンちゃん5歳のころ

    「スクープ!いちごケーキバラバラ事件! それにしても、うれしそうに食べてます」ゴンちゃん5歳のころ

    マナーは叱らずコツコツと。

    ギョーザはパリパリの皮と中身を別々に、お寿司はネタのお魚とシャリを別々に……。

    今でもメニューによって独特な食べ方をする娘ですが、理由があってのことと分かっていたので、叱ったり強制したりすることはしませんでした。

    ではテーブルマナー的なことはノータッチなのかというと決してそういうわけではなく、今でも繰り返し伝えています。

    「マナー」って簡単に言えば「周りへの思いやり」のこと。同じ食卓で食事をする全員が気持ちよく食事を楽しむためにあるルールなんですよね。

    だから、「取り分ける時はお箸を使うと他の人も気分いいよね」とか「お椀を手に持つとこぼさずに食べられるよ」みたいに、何か気づいたら必ず“理由を添えて”声をかけるようにしています

    でも、だからと言って強制や命令になってしまわないように。

    食事は楽しく食べられるのが一番大切なことなので、すぐに身につかなくてもかまわないと思っていて。大人になって社会へ出て行く時に、「お母さんがいつもこう言ってたなあ」くらいに覚えていてくれたらいいかなと。

    小学生ぐらいになって、少しずつ家の中と外を意識できるようになってきたころには、「お店の人は食べやすいように考えてつくってくれているんだよ」と話をしたり、「悪気はなくても悪い印象を与えることもあるよ」と、“他人からの見え方”なども時折伝えたりしていましたね

    「ふうん」と聞いてくれただけで、相変わらず“手づかみ、バラバラ”でしたが、それでも年を重ねるにつれてだんだん減っていったかな……。

    食欲旺盛な中学生になった今では、「箸やスプーンで食べる方がはやい! 」と、どうやら気づいたようですね。

    画像: ゴンちゃんの運動会のお弁当。「保育園のときはだいたいこんな感じ。おかずも味が混じると食べられなかったので、おにぎり&フルーツのみでした」

    ゴンちゃんの運動会のお弁当。「保育園のときはだいたいこんな感じ。おかずも味が混じると食べられなかったので、おにぎり&フルーツのみでした」

    おいしい! の顔が一番。

    でも食べ方って、よくよく考えてみたら、その土地や文化によって本当にそれぞれですよね

    和食ではお椀を持つのがマナーですが、お皿を持つとNGなこともある。国によっては手で食べることが正解なことだってあります。だったら、食べ方って本当はもっと自由でいいんじゃないかって思うんです。

    それに、きっとつくる人の立場なら、食べ方うんぬんよりも、おいしそうに残さず食べてくれた方がずっとうれしいはず

    その点ゴンは100点満点! 好物を自由に食べている時のゴンって、お皿まで舐めちゃう勢いで(たまに舐める! )とってもおいしそうに食べる!! 私もついうれしくなって「また作ってあげたいなあ」なんて思います。

    実際、とある料亭で鮎をごちそうになった時、めちゃめちゃきれいに食べて(骨格標本レベル! )、お店の方にすごく喜ばれたこともありました。もちろん、その時だって娘は手で“皮と身と脂身とヒレ”に見事に解体していましたが!!

    画像: 「大好きな小籠包のお店に行き、おいし過ぎてほっぺが落ちそうなゴン。もちろん皮と中身は分けて食べますよ!」

    「大好きな小籠包のお店に行き、おいし過ぎてほっぺが落ちそうなゴン。もちろん皮と中身は分けて食べますよ!」

    困った時ほど楽しんでみる。

    そんなバラバラ事件(?! )が多発しているわが家の食卓ですから、幼児期は手を拭くおしぼりや床に敷く新聞紙は欠かせませんでしたね。おしぼりと言えば、うちでは手ぬぐいを半分に切って使っていました。洗ってもすぐに乾くから便利なんです。

    あと、これは食事だけに限りませんが、子どもたちが何かやらかした時、イライラしてしまいそうな時は、「カメラマンに徹する」ことを心がけていました

    もともとカメラが好きで、帰りの遅い夫に子どもの成長を見せるためによく写真を撮っていたのですが、「これは特ダネになるぞー」とファインダー越しに汚れたテーブルを見つめてみると、断然おもしろく見えてくる!

    “おもしろい”と感じられたらしめたもの。私は困ったときの一番の対処法は「必死になること」じゃなく「笑えること」だと思っています。余裕があるから笑えるんじゃなく、先に「笑う」からこそ余裕が生まれてくるんじゃないかな。

    子どもとのドタバタな日々はどこもかしこも「ネタだらけ」!

    子どもたちが成長してからも一緒に写真を見返してはお腹をかかえて笑えるし、今の子どもたちがさらに愛おしく思えてくるし……。いいことづくめなのでおすすめです!

    画像: ヨーグルトとお茶を全身で味わう1歳ごろのまめぴー(長男)。もしかして、美容効果をねらってる?!

    ヨーグルトとお茶を全身で味わう1歳ごろのまめぴー(長男)。もしかして、美容効果をねらってる?!


    ――― バラバラになったケーキを前に、驚きながらも「そうやって食べるのはどうして? 」と聞くことからはじめた美濃羽さん。

    「ダメ」と叱ったり「こうやって食べて」と教えたりする前に、子どもの思いを探ろうとするほんのひと呼吸があれば、ピリピリイライラしていた食事タイムは変わってくるかもしれません。

    たとえどんな食べ方をしていても、もし子どもが夢中で食べているとしたら、それはきっと「おいしいよ」のサイン。まずはそんな風に思えるだけでも、ココロも空気もふわっと軽くなるような気がします!


    〈今回のスイッチポイント〉

    困った子どもの行動には理由があるかも?

    “すぐに解決”ではなく、まずは“おもしろポイント”を探してみよう!

    画像: 悩ましい子どもの食べ方「自由に食べるのはいけないこと? 」|美濃羽まゆみのごきげんスイッチ。凸凹子育て&暮らしと仕事

    ~いちごバラバラ事件! の巻き~

    「もくもくと何かを切っているゴン。のぞいてみたらおやつのいちごをバラバラに!

    “ひょえ~もったいない!”という言葉を飲み込みつつ、“なんでバラバラにしてるん?”と聞くと、“部位ごとに分けてどこが一番甘いかを確かめている”とのこと。

    実験結果は、なんと先っぽ!

    “ということは、葉っぱのほうから食べたら一番甘いところを最後に味わえるやん!”とコーフン気味のゴン。母も大変勉強になりましたー」


    ――― さて、次回のテーマは「自分を助ける台所仕事」。子育てに仕事に忙しい毎日、美濃羽さんのごはんづくりの工夫をお聞きします。お楽しみに!




    〈写真・イラスト/美濃羽まゆみ 取材・文/山形恭子〉

    画像: 困った時ほど楽しんでみる。

    美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
    服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。

    現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYou Tubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。

    ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
    インスタグラム:@minowa_mayumi



    本誌プレゼントへのご応募はこちら

    お得な定期購読はこちらを
     (富士山マガジンサービス)

    読みもの,連載,美濃羽まゆみのごきげんスイッチ,美濃羽まゆみ

    This article is a sponsored article by
    ''.