(『天然生活』2018年4月号掲載)
国も時代も超えて生活に溶け込む、熊谷家のかご使い

熊谷家の台所。昔のかごの網目の美しさは格別。壁に飾り、折に触れ眺めている。「暮らしのなかで生きている日用品がもつ、素朴な美しさに圧倒されます」
かごの生産地である山形県に移り住み、「kegoya」の屋号で、かごを編む熊谷茜さん。家の中も、もちろん、かごでいっぱいです。
自分で編んだもの、昔から持っている古いもの。時代も、国も、素材もバラバラながら、自然な統一感で、生活のなかに見事に溶け込んでいます。
「あけびやくるみ、籐など、かごは、色がみんな茶系で似ていますからね。それに、どの国でもどの時代でも、不思議なことに編み方は大きくは変わらないんですよ」
ちょうどいい大きさの入れ物がなければ、サイズを測って自分で編む。そんなふうにして、熊谷家にはかごが増えていきます。

自宅の敷地内にあるアトリエ。1階は作業スペース、2階部分は、一般にも開放し、展示などをできるスペースにする
「そもそも、かごって生活道具なんです。木と比べて柔らかく、加工しやすいから、昔は気軽に、『ちょっとしたものを入れるのに、編んでおこう』くらいの感覚だったと思うんですよ。私は、いまも、そんな気持ちで暮らしているだけなのかもしれません」

kegoyaのガラス作家のさこうゆうこさんとのコラボレーションアイテム。かごとガラスの間に青葉を挟んで楽しむ趣向
家具のすき間にすっぽり収まる、縦長のかご。かごの中にもまた、小さな仕切りかご。取っ手付きなら、使う場所まで気軽に提げて、家中をあちこち移動させながら。そして、なんといっても、いいところは、床に無造作に置かれていても絵になるところ。
さらに、自称‟ずぼら”という熊谷さん。かごは、口が大きく開いているから、しまうときも大ざっぱでいいし、取り出すのも簡単だと、次々と利点を語ります。
「かごは重ねることが難しいから、かさばるし、狭い空間には向いていないと思う人もいるかもしれないけれど、むしろおすすめなんですよ。ほら、こんなふうに」

天井に渡したはしごや頑丈な縄ロープに取り付け、S字フックで吊るす、高い位置のかご収納。「お菓子や、仕事で使うラッピングのひも、仕事の道具など、子どもに触らせたくないものなどを入れてます」
指さした先には、縄に吊るされた、数々のかご。それは、空中に浮かんだ、斬新な収納スペース。風に吹かれてゆらゆらと、昔ながらの働き者の顔をした、かごの姿がありました。

アトリエの玄関先の壁に飾ったのは、あけびで編んだ文具入れ。はさみやペンなど、荷物を受け取るときにサッと使えるように
〈撮影/飯貝拓司 取材・文/福山雅美〉

熊谷 茜(くまがい・あかね)
20代で単身、山形に移住し、かご作家となる。月に1~2日(冬季除く)、「kegoya open day」としてアトリエを開放。
http://kegoya.me
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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