古きよき暮らしを体感できる、自然と文化が同居する石見地方
島根県と聞くと、出雲大社を思い浮かべる人も多いでしょう。島根県は東西に長く、出雲大社があるのは県の東部。今回紹介するのは、西部に位置する石見地方です。
このエリアは自然豊かで、山陰の小京都と呼ばれる津和野や、世界遺産に認定された石見銀山など見どころも多く、古きよき日本の風景を残す地域として知られています。
「いまは周辺に文化的スポットもできた石見地方には、幅広い年代の方々が遊びにいらしてくださいます。観光名所はもちろんですが、私がとくに魅力を感じるのは古い町並み。そこに人が住み、暮らしがあるからこそ素晴らしい町なんです」と話すのは、今回の案内人であり、群言堂のオーナーである松場登美さんです。
結婚を機に、約40年前に夫の故郷である石見銀山へ越してきた松場さん。1994年にアパレルブランド「群言堂」を創業して以降、この周辺の古民家再生などの町おこしに尽力し、現在は衣・食・住・美にまつわるさまざまな暮らしの提案を行っています。
「群言堂は町の品格や美しさを害さないために、商品は奥に並べて、通りからは商品が見えない店になっています。中庭を広くとったり、2階には商品を置かない空間を設けたりして、お客さまにのんびり過ごしていただいています。これこそ田舎のゆとりかもしれませんね」(松場さん)
世界遺産・石見銀山と、町歩きが楽しい「群言堂」周辺
龍源寺間歩(りゅうげんじまぶ)
自然環境と共存する産業遺産として評価された、世界遺産・石見銀山。群言堂がある大森町も、世界遺産に登録された「銀鉱山跡と鉱山町」に含まれます。そのほかに温泉津(ゆのつ)などの「港と港町」「街道」が世界遺産に登録されています。石見銀山のなかで唯一、常時公開されている坑道跡(間歩)が、群言堂から徒歩30分でたどり着く「龍源寺間歩」です。銀鉱石を採掘するための坑道は、冬は暖かく、夏はひんやりと涼しく、静かな空間になっています。
「地元ガイドさんが500円で案内してくれる、ワンコインガイドが好評です。龍源寺間歩コースは往復約2時間、町並みコースは約1時間半の散策が楽しめます。町歩きでは石州瓦(せきしゅうがわら)と呼ばれる、この地方に古くから伝わる赤褐色の屋根にも注目してくださいね」(松場さん)
ベッカライ コンディトライ ヒダカ
群言堂と同じ街道沿いにある、ドイツパンの有名店。ドイツで国家資格「ドイツ製パンマイスター」を取得し、東京から石見銀山へ移住した日高晃作さんがつくるパンを求めて、県外から訪れる人も。看板商品「ブレッツェル」のほか、群言堂のスタッフの着想から発見された「梅花酵母」を使った、ふかふかな米粉パンも人気です。
「近所で採れたお野菜を使ったパンも美味しいですよ。三瓶山などの山の頂上で朝食を食べる『天空の朝ごはん』というイベントも開催しています」(松場さん)
石見地方の文化を感じられるスポット
温泉津(ゆのつ)温泉の夜神楽
石見銀山の銀の積出港として栄えた温泉津は、町並み保存地区にも指定されているレトロな温泉街。毎週土曜日の夜は、石見地方に古くから伝わる石見神楽の舞を神社で鑑賞することができます。
「このあたりは石見神楽が盛んで、私の孫も神楽を練習中。リズム感がよくて、迫力のある舞です。クライマックスのヤマタノオロチを退治するところが見どころです」(松場さん)
島根県芸術文化センター「グラントワ」
「島根県立石見美術館」と「島根県立いわみ芸術劇場」からなる芸術文化複合施設。萩・石見空港から車で約15分の場所にあるので、旅行客でも立ち寄りやすいのが魅力です。
「島根県出身の森英恵さんの展示や『河井寛次郎と島根の民藝展』など、建築やファッション、デザイン系のユニークな企画展をよく開催しています。海が近いので、帰りは海辺の近くに車を停めてのんびりすることも」(松場さん)
石見地方の豊かな自然を感じられるスポット
高津川
山陰の緑豊かな山々のふもとに流れる高津川は、川底が見えるほど透き通った清流が自慢。全国の一級河川のなかでも唯一ダムのない川で、その水の美しさは国土交通省の水質調査で何度も清流日本一に選ばれているほど。
「鮎漁が解禁になると、多くの釣り客でにぎわいます。夏になるとこのあたりのお店では美味しい天然鮎が食べられるんですよ。石見地方ならではの味覚です」(松場さん)
匹見峡(ひきみきょう)
前匹見、奥匹見、表匹見、裏匹見と4つのエリアに分けて異なる景観を楽しめる、匹見町の広いエリアにわたる渓谷。
「最近この町に住み始めた写真家の方が、素晴らしい場所があると教えてくれたのが匹見峡でした。このあたりは娯楽施設が少ないけれど、こうやって自然浴を思いきり楽しめる景観はあちこちにあるんですよね。散策やハイキングなどをお楽しみください」(松場さん)
子どもと一緒に楽しめるスポット
島根県立しまね海洋館アクアス
松場さんが孫たちを連れて行くといつも大喜びされるというのが、中四国地方最大級の水族館の島根県立しまね海洋館アクアスと浜田市世界こども美術館。
「アクアスは、口からバブルリングを出すシロイルカが一番人気。とても可愛くて、子どもたちが大好きです。帰りは浜田市にあるお魚市場でお寿司を買って、風景のいいところで食べました。ここでは浜田漁港で水揚げされた旬の鮮魚も売っています。近くにある浜田市世界こども美術館も、子どもたちが喜ぶアートに触れられる遊びができて、孫をよく連れていきます」(松場さん)
松場さんお薦めの、とっておきの場所をめぐるなら、萩・石見空港が便利です
関東から石見エリアを訪れるなら、飛行機がお薦めです。島根県の西の玄関口である萩・石見空港まで羽田空港からの直行便が出ているので、片道1時間40分ほど。
空港内のショップでは、石見地方の名物やお土産も購入できます。
「お酒好きの方ならビールと赤天を買って、帰りの飛行機で1杯楽しんでみてはいかがでしょうか? 石見の銘菓、源氏巻もぜひ」(松場さん)
萩・石見空港のおすすめのお土産
竹風軒の源氏巻
山陰の小京都と呼ばれる津和野町で定番のお土産は、こしあんをカステラ生地で巻いた銘菓「源氏巻」。松場さんおすすめは130年以上続く老舗菓子店「竹風軒」の源氏巻で、地元の人にも長く親しまれてきた味です。細長い形で、レトロな箱に1本ずつ入っているのも魅力。
江木蒲鉾店の赤天
魚のすり身に唐辛子を練り込み、パン粉をまぶして揚げた「赤天」。松場さんおすすめの江木蒲鉾店は創業明治45年と古く、浜田市の有名店。「ピリ辛でお酒のおつまみにお客さまに出すとよろこばれます。マヨネーズをつけて食べると美味しいです」と松場さん。
群言堂に立ち寄ったら、こちらはいかが
旅に便利な「はぎはぎブランケットストール」
群言堂の自家製パフェ
群言堂でぜひおすすめしたいというのが、この2つ。
「ブランケットストールは、群言堂のお洋服をつくるときに生まれる“はぎれ”を生かしてパッチワークのようにしたもの。羽織ることもできるので、車や飛行機の移動中にも便利です。地元産のフルーツを使った自家製パフェは、うちのカフェの人気メニュー。2カ月ごとに変わる季節の味を私も楽しみにしているんですよ」(松場さん)
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松場登美(まつば・とみ)
1949年三重県生まれ。「石見銀山生活文化研究所」代表取締役。結婚を機に、夫の故郷である石見銀山で暮らし始める。1994年にアパレルブランド「群言堂」を立ち上げ、現在は武家屋敷を改修した宿泊施設「暮らす宿 他郷阿部家」も運営。2021年には石見銀山の町を再生・活性化させた功績で総務省主催「ふるさとづくり大賞」内閣総理大臣賞を受賞。『過疎再生 奇跡を起こすまちづくり: 人口400人の石見銀山に若者たちが移住する理由』(小学館)など著書多数。
<取材・文/大野麻里 イラスト/しらいし ののこ>
提供/公益社団法人島根県観光連盟