• 年末年始の帰省シーズンがやってきます。実家の母や義母に合うのが負担に感じる方のために、「母と自分のコミュニケーションにおいて、傷をできるだけ少なくするためのアイデア」を、『母のトリセツ』(扶桑社)を上梓した脳科学者の黒川伊保子先生に教えてもらいました。

    互いに、踏み込まない、空間と時間を確保する

    画像: 互いに、踏み込まない、空間と時間を確保する

    お盆休みや年末年始、夫の実家に帰るのは気が重い。そう感じる妻たちの第一の本音は、「プライバシーがない」という点です。

    「やっと部屋に落ち着いて寛げたと思ったら、『ケーキ切るけど、食べる?』なんて言われて、あわてて台所に駆け付ける。母からすれば、日頃一緒にいないから、半ばおもてなしのつもりで次から次へ声をかけるし、嫁からすれば、日ごろ一緒にいない後ろめたさで、気を遣ってとんでいくことになります。

    『気を遣わないで』と言われても、そんなわけにはいかないし、場合によっては、言葉を真に受けた結果、大変なことになる姑もいます。だからこそ、たまの帰省に、嫁はクタクタになってしまうのです」

    だからこそ、姑には、「自室に入ったら、声をかけないというルール」を共有しておくことが重要なのです。

    「結婚して最初に帰省するときに、夫である息子にちゃんと仕切ってもらうことが大切です。『部屋に入ったら、放っておいて。日ごろ、共働きで(子育てで)うんと忙しい彼女を、ゆっくりさせてやりたいんだ』と。

    私の夫も、義母に最初に『娘のようにしてあげてほしい。彼女の実家は遠いし、共働きの彼女がここに来たときくらいは休めるように』と言ってくれました。そのおかげか義母は『もちろんだよ』と言ってくれて、本当に生涯、いわゆる昭和の嫁扱いはされませんでした」

    空間を分けることの重要性

    画像: 空間を分けることの重要性

    心配して、声をかけてくれる。手をかけてくれる。そんな母や姑の存在に、「自分を助けてくれてありがたい」と思いつつ、どこかうっとうしさを感じてしまうもの。さらに、ときには様々なプライバシーを踏み越えて、「余計なおせっかい」をされることも。

    親切心だからこそ、断りにくいこうした姑からの好意にどう対処すべきなのでしょうか。

    「母親や姑の中には、悪気がないのですが、『なぜ嫌がられるのか』がわからず、プライバシーの境界線を超えてしまう人がいます。相手は嫁が嫌がっていることがわからないのだからこそ、こちらからしっかり『NO』を言うことが大切です。

    たとえば、母が自室にある洗濯物を勝手に洗おうとしたときは、躊躇せず、『お母さんに汚れものを洗ってもらうのは、胸が苦しくなる。見て見ないふりが一番嬉しい。うちの汚れものには触らないで、ゆっくりしてて』とちゃっかり言うのが一番です」

    実の娘ならば言いやすい部分もあるかもしれませんが、仮に嫁が姑には言いづらいのなら、息子である夫に代弁してもらうことも重要です。

    「仮に、『水臭い』と姑から言われたとしても、『それだけ、僕たちにとって母さんは大事なんだよ。他人行儀なわけじゃない。本当に助けてほしいときは、真っ先に母さんに電話するよ』と一言息子から言ってもらいましょう。

    空間のプライバシーは、きっちり境界線を引かないと、テキは、どこまでもずるずると入ってきます。最初にカチンと来たときが肝心です」

    長く生きた女の、蒸し返し癖にはどう対処すべきか?

    画像: 長く生きた女の、蒸し返し癖にはどう対処すべきか?

    ただ、姑には悪意があるわけではないので、親切は断りづらいし、断ったら断ったで、自分がひどい嫁になったような気分になって、余計に落ち込んでしまうものです。ただ、これはあくまで動物の本能なので、気に病む必要はないと黒川先生は語ります。

    「動物には、弱みを見せたくないという本能があります。『一歩も動けない、死ぬかもしれない』という事態ならいざしらず、他人に弱みを見せるのは嫌なものです。

    しかも『悪気はない』とはいうものの、姑に限らず、実の母であっても、あとから、そのことを蒸し返すもの。こんなざらっとした思いをさせられるくらいなら、弱みを握られたくないし、好意を素直に受け入れがたいと思うのは、人情だと思います」

    また、特に注意したいのが、長く生きた女性特有の「蒸し返す癖」だと黒川先生は続けます。

    「長く生きた女性たちの癖には、誰もがうんざりさせられた経験がある。だからこそ、大人になったら、母親や姑に、先の蒸し返しのネタ=弱みを握らせたくないと思うのは当然のことです。ただ、『過去の経験を瞬時に引き出して、子どもを守る』のは、母性の基本機能です。

    つまり、女らしい人ほど、蒸し返す。『悪気がなくて、おせっかいで、蒸し返す』のが、女性脳の本質と言えます。そうでないと 子どもが無事に育たなくなってしまいます。長く生きた女たちのおせっかいと蒸し返し癖は、人類が続く限り、永遠に消えません」

    蒸し返しがはじまったら、「NO」を言うのが肝心

    画像1: 蒸し返しがはじまったら、「NO」を言うのが肝心

    こうした蒸し返し癖が、家族のなかにわだかまりを残すことも決して少なくありません。この「蒸し返し癖」に対しても、嫁は率直に「NO」という以外に手段はないのだとか。

    「ことが起こり始めたら、できるだけ早く、あっさりと『お母さん、お願い、今は放っておいて』と言えばいいんです。もちろん『うざい』という本当の理由は言わず、『静かにしていたいから』『仕事(勉強)に専念したいから』『考え事をしたいから』と、本当の理由は、『母親の相手をする時間(気力)がない』『母親の顔を見ると気が滅入る』を装ってあげましょう」

    決して悪意ではないからこそ、なかなか強くはダメ出ししづらい母や姑との関係性。ただ、ポイントさえ抑えておけば、以前よりも帰省を怖がる必要は、なくなるのかもしれません。

    こうした黒川伊保子先生が語る、母との上手な関係の築き方は、『母のトリセツ』(黒川伊保子=著 扶桑社)に詳しくつづられています。


    黒川伊保子さん

    画像2: 蒸し返しがはじまったら、「NO」を言うのが肝心

    脳科学・人工知能(AI)研究者。1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、コンピュータ・メーカーにてAI開発に従事。2003年より株式会社感性リサーチ代表取締役社長。語感の数値化に成功し、大塚製薬「SoyJoy」など、多くの商品名の感性分析を行う。また男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究成果を元にベストセラー『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(共に講談社)、『娘のトリセツ』(小学館)を発表。他に『母脳』『英雄の書』(ポプラ社)、『恋愛脳』『成熟脳』『家族脳』(いずれも新潮文庫)、『息子のトリセツ』(扶桑社新書)、『イラストですぐわかる!息子のトリセツ』(扶桑社)などの著書がある。



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