• 子育ての悩みや日常生活のちょっとしたイライラ、みなさんどんな風に解決していますか。京町家に家族4人で暮らし、洋服づくりを手掛ける美濃羽まゆみさんは、仕事に家事に忙しい毎日も自分のペースでごきげんに楽しんでいるようです。個性豊かな子どもたちとの向き合い方や日々の小さな心掛け、気持ちの整え方……。美濃羽さんが日ごろから大切にしていることをお聞きして、 “ごきげんに暮らすヒント=ごきげんスイッチ”を探っていきます。今回のお話は「未来の私を助ける台所仕事」。毎日のごはんづくりの参考になるような美濃羽さんの台所習慣を教えてもらいました。

    未来の私を助ける台所仕事
    「つくりおきより、つくりかけ?!」

    家族の偏食傾向もあり、自炊を基本としている美濃羽家。食卓におじゃますると、いつも野菜中心の手料理があっという間に並ぶので驚きます。日々忙しいなかでの台所仕事、何か工夫をしているのでしょうか。

    ありがたいけれど悩ましい。

    わが家の場合は、食材をはじめ毎日に必要なものは週1回の宅配でだいたいまかなっています。宅配サービスは買い物の時間が省けるので、特に子どもが幼いうちは助かりますよね。

    これまでお話してきたように、うちは娘が限られたものしか口にしなかったので、できるだけ新鮮でおいしくて体にやさしい食材を手に入れたいと、生活クラブさんにお願いしています。でも実は、はじめのうちは上手に使い切れなくて困ったこともありました。

    と言うのも、契約農家さんから届く野菜は、たとえば大きなキャベツや白菜がドーンとまるごとだったり、2週同じ野菜が続くこともあります。その時々で一番いい状態の野菜が届くシステムなのでありがたいのですが、子どもは少食ですし私も計画的に献立を考えるタイプではないので、気がつけば冷蔵庫の奥でいたんでしまっていたり、カランカランに乾燥してミイラになってしまっていたり……。そのたびに「やっちゃったー」と自己嫌悪。

    それで、どうしたら素材を余さずおいしく食べ切れるか、こんな私の性格でも続けられる方法はないかと試した結果、「素材ごとに少しだけ手をかけておく方法」に行き着きました。新鮮なうちにカットしておいたり、干しておいたり、レンチンしたりと、ごく簡単な下ごしらえだけを済ませ、「未完成の状態」で保存しておく方法です。言うなれば、「つくりおき」ではなく「つくりかけ」ですね!

    画像: ある日の「つくりかけ」食材。「野菜をゆでただけ、切ってレンチンしたり塩でもんだもの、ひき肉をお酒としょうゆでそぼろにしたもの、といった具合。いろいろな料理に使いまわし、数日で食べ切ります」

    ある日の「つくりかけ」食材。「野菜をゆでただけ、切ってレンチンしたり塩でもんだもの、ひき肉をお酒としょうゆでそぼろにしたもの、といった具合。いろいろな料理に使いまわし、数日で食べ切ります」

    “ついでにする”のがコツ。

    実際どんな風にしているかというと、宅配が届いた日に一気にするのはこれまた大変なので、その時々に使う食材だけ手をかけるというやり方です。

    たとえばにんじんを今晩使うとしたら、まずは夜のメニューに合わせて半分をカット。続けて1/4は輪切りに、残りは斜め切りにといった具合です。そうやって使うタイミングで「ついでにやっておく」と、そんなに苦にならずにまとめてできるんです。

    一番の効果は、使い忘れがなくなったことですね。

    買ったことを忘れて同じものをまた買ってしまうようなズボラな私でも、そのまま冷蔵庫や棚にしまっておくより、自分で切ったりゆでたりしておいた方がしっかり記憶に刻まれるのだと思います。

    そして何より助かるのが、少しだけ手をかけておいた素材は「すぐに料理に使える」ということ。

    カットしておいた玉ねぎやにんじんは、煮物やカレーに。レンチンしておいたかぼちゃは、みそ汁の具やチーズ焼きに。干しておいた白菜や大根は、漬け物にしたり鍋物に使ったり。

    野菜に限らず、豆やひじきなど乾物をまとめて戻しておいたり、余裕がある時は魚を味噌漬けにしておいたり肉に下味をつけておいたり。そうすると、すぐに調理に取りかかれてめちゃめちゃ便利! もちろん、ゆでたオクラや蒸したさつまいもなどは、そのまま食卓に並べても立派な一品になってくれます。

    ほんのちょっとしたことですが、冷蔵庫にひとつでも「つくりかけ」があるだけで、忙しい時に「うわあ、昨日の自分よくやった!」ってなる!

    この「つくりかけ」が習慣になってからは、料理の時間が圧倒的にかからなくなりましたね。

    半分くらいの時間で仕上がっているかもしれません。素材をまとめて切るようになり包丁やまな板を出したり洗ったりする回数が減っただけでも、台所仕事がすごくスムーズに感じられます。

    画像: 「大きな大根もまとめて切って一気にゆでておきます。田楽やステーキにしたり、煮物にしたり。せっかくのおいしい大根なので、皮も余さずきんぴらにします」

    「大きな大根もまとめて切って一気にゆでておきます。田楽やステーキにしたり、煮物にしたり。せっかくのおいしい大根なので、皮も余さずきんぴらにします」

    考えずに気軽にできるから。

    「つくりかけ」は常備菜をつくりおきするよりずっと簡単。味つけは食べる直前にするので、献立を考えずにできちゃうところもいいのかなと思います。

    特にわが家の場合は、時間がたって味がなじんだおかずは夫と子どもたちが苦手で食べてくれないので、つくりおきの料理となると、どうしても私ひとりが引き受けることになるんです。それに、長く持たせようと思うと味つけも濃くなりがちに。2日目、3日目と続けて食べると、いくら好きなおかずでも飽きてしまいます。

    でも、下ごしらえしただけでまだ調理をしていないもの、味つけをしていないものなら、どんな料理にもなる!

    みそ汁にしたり、炒めものにしたり、オーブンで焼いたり。うちの子のように味が混ざっているものが食べられないという偏食傾向があっても対応できますし、その日の気分や家族の希望に合わせていくらでもアレンジできるのがいいところなんです。

    今ではそんな下ごしらえ済みの「つくりかけ」素材を5~6品ストックしていて、1日に2~3品使っては、また新しいものも2~3品足していくのが日課になりました。常にローテーションしているので食材を無駄にすることもなくなり、宅配も気分よく継続中です。

    画像: 下ごしらえした素材は、中身が見える透明の容器に保存。「冷蔵庫を開けるたびに目につくので使い忘れもないですね。レンジやオーブに対応でき、そのまま食卓に並べても違和感がない耐熱のガラス容器がお気に入りです」

    下ごしらえした素材は、中身が見える透明の容器に保存。「冷蔵庫を開けるたびに目につくので使い忘れもないですね。レンジやオーブに対応でき、そのまま食卓に並べても違和感がない耐熱のガラス容器がお気に入りです」

    休むこともポジティブに。

    以前は私も「家のごはんづくりは毎回一からスタートしなくちゃいけない」なんて、勝手に思い込んでいました。でも、やっぱり毎日のことだからそれだと息切れして嫌になっちゃう。「つくりかけ」で料理のハードルを下げたことで、今は台所に立つことがずいぶん気楽になりました。

    ですが、そんな私も疲れ果てて「つくりかけ」すら料理に仕上げられない時だってもちろんあります。

    そういう時は、ありがたくでき合いのおそうざいやテイクアウトを利用してリセット。

    最近では料理好きの中2の娘に、「助けて! 」とごはんづくりをお願いすることも増えてきました。

    休むことに罪悪感を覚える人も多いかもしれないですが、休むのは決して「なまけ」じゃなく、明日家事をするための準備期間と考えればいいんじゃないかな。

    次の日からまた元気に台所に立てるように誰かの力を借りて前向きに休むことも、楽しく家事を続けていくうえで大切なことだと思っています。

    画像: 3歳ごろからMy包丁を持っているというゴンちゃん。「中学生になった今では、週に一度は晩ごはんをつくってくれるようになりました。得意料理は肉じゃが。煮え方を均一にするため玉ねぎは1枚1枚手でほぐすほどのこだわりぶり(とてもおいしい!)」

    3歳ごろからMy包丁を持っているというゴンちゃん。「中学生になった今では、週に一度は晩ごはんをつくってくれるようになりました。得意料理は肉じゃが。煮え方を均一にするため玉ねぎは1枚1枚手でほぐすほどのこだわりぶり(とてもおいしい!)」


    ――― 今日からすぐにはじめられそうな「つくりかけ」習慣。 毎日コツコツ、でも、切ったりゆでたり蒸したりと、全く同じ繰り返しではないところも、楽しく続けられるポイントのような気がします。自分なりの「つくりかけ」をいろいろ組み合わせることで、今まで浮かばなかった新メニューだって登場するかもしれませんよ!


    〈今回のスイッチポイント〉

    ついでの「つくりかけ」ストックがあれば、炊事の負担は半分に!


    画像: 未来の私を助ける台所仕事「つくりおきより、つくりかけ?!」|美濃羽まゆみのごきげんスイッチ。凸凹子育て&暮らしと仕事

    ~まめぴー、衝撃! レア大根の巻き~

    「ある日、縁側に干してあった大根をこっそりかじっていたまめぴー(長男)。どうもりんごだと思い込んでいたようで、最初は甘くてごきげんだったものの、だんだん辛くなってきたのか表情がみるみる険しく……。何ともかわいらしかったなあ。その日から野菜を切る=干すだと学んだらしく、私が料理をしているとざるを持ってきてくれるようになりました」


    ――― さて、次回のテーマは「子どものもの選び」。服やおもちゃを選ぶ時の美濃羽さんの心掛けをお聞きします。お楽しみに!




    〈写真・イラスト/美濃羽まゆみ 取材・文/山形恭子〉

    画像: 休むこともポジティブに。

    美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
    服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。

    現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYou Tubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。

    ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
    インスタグラム:@minowa_mayumi



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