• 子育ての悩みや日常生活のちょっとしたイライラ、みなさんどんな風に解決していますか。京町家に家族4人で暮らし、洋服づくりを手がける美濃羽まゆみさんは、仕事に家事に忙しい毎日も自分のペースでごきげんに楽しんでいるようです。個性豊かな子どもたちとの向き合い方や日々の小さな心掛け、気持ちの整え方……。美濃羽さんが日ごろから大切にしていることをお聞きして、“ごきげんに暮らすヒント=ごきげんスイッチ”を探っていきます。今回のお話は「子どもからの無茶なリクエスト」。叶えてあげられそうにない要求があった時、美濃羽さんはどうしているのかお聞きしました。

    子どもはいつだって、大人の想像の斜め上をいく!

    「あれ欲しい!」「これやりたい!」と、子どもとの暮らしのなかではさまざまな要求が飛び出します。時には、どうしても不可能なことを求められることも。前回「常に子どもの選択を優先している」とお話してくれた美濃羽さんですが、想定外のお願いごとやおねだりにはどんな対応をしているのでしょう。

    「やりたい」と「やめさせたい」。

    前回お話したように、主張の強いゴン(長女)と暮らすうちに彼女の選ぶものや、やりたいことを大事にするようになったわけですが、ゴンで経験していたので、5歳年下のまめぴー(長男)の時にも自然と同じように対応することができました。

    どんなに寒い日でも「このほうがカッコいいやろ? 」と上着の前をとめようとしなかったり、季節に関係なく素足&草履で駆けまわったり。

    「ちゃーちゃん(私のこと)と同じがいい! 」と、私と同じヘアスタイルにしたこともあれば、突然「女の子になる! 」と肩まで伸ばしたこともありました。

    姉ほどではないものの、大人からしたら「なぜ? 」と思うようなことはやっぱりいろいろありましたが、できる限り彼の選択を大事にしてきたつもりです。

    少し話がそれるかもしれませんが、6歳くらいの時だったかな、まめぴーは着ているTシャツを噛むクセがあって。大好きな動画やゲームに夢中になった時に噛むことが多く、襟ぐりがどんどんボロボロになっていくんです。

    実は彼、家のなかでは真冬でもTシャツ1枚! 年中Tシャツ姿なのでいつも襟ぐりはボロボロなんですが、こちらから特に注意をしたり無理にやめさせようとしたりはせず、彼の思うように任せていました。

    もしかすると、これって自衛作戦かもしれないなって。私自身、普段は好き嫌いが無い方ですが、精神的に追い詰められてしまった時は同じメニューしか食べられなくなることがある。

    それと一緒で、子どもも「いつもと違う」とストレスを感じた時ほど「いつもと同じ」に立ち戻ることで、不安な気持ちを落ち着かせているのかもしれないと。

    だから、それをやめさせようと躍起になるとかえって執着は強くなるんじゃないかなと思ったんです。実際、今思えばそのころはまめぴーが小学校に行き渋っていた時期と重なっています。

    以前本にも書いたことなのですが、ゴンが保育園時代、帰りの道草がびっくりするほど長かった時期がありました。どうしたらスムーズに帰れるんだろうと毎日困っていたのですが、ある時「もう腹をくくって、とことんつき合ってみよう」と切り替えたら、突然すんなり帰れるようになって。

    そんなこともあったので、まめぴーのTシャツも「とことんまでつき合おう」と気持ちを切り替えてみたんです。いや、むしろ「噛む」ことを応援してみようじゃないかって!

    スルメを常備したり、噛むおもちゃを買ってみたり、襟ぐりが丈夫なTシャツを探したり。結果、5枚ほどのTシャツの襟ぐりをレース状にしたところで、噛み癖はすっぱり卒業しました。

    子どもの執着心はとても強くて、一度決めたらとことん譲らないということもあります。でも、それってひょっとすると親自身も「それをやめさせたい」と執着しているからかも。

    お互いが執着していると気づいたら、親の方が手放してみる。そうすると、いちいち気になったりイライラしたりしなくなるし、子どもの方の執着も自然消滅していくような気がします。

    画像: 噛み癖がはじまったころのまめぴー。「どのシャツも一瞬でレースになってしまうので本人考えたらしく“そっか、裸で生活したらええんや! ”と。それはさすがに止めましたが」

    噛み癖がはじまったころのまめぴー。「どのシャツも一瞬でレースになってしまうので本人考えたらしく“そっか、裸で生活したらええんや! ”と。それはさすがに止めましたが」

    無理な時こそ考えてみる。

    ただ、道草をしたりTシャツを噛んだり、そういうことならつき合うこともできましたが、いくら気持ちを切り替えても叶えてあげられないことだって、もちろんあります。

    確かゴンが3歳くらいの時でしたが、「カーテンが欲しい! 」とお願いされたことがあって。

    うちは昔ながらの町家なので障子や襖ならあるのですが、カーテンはどこにもない。そもそもカーテンレールがないので、すぐにどうこうするのはちょっと難しいなという要求でした。

    それで、何でそんなにカーテンが欲しいのか、その理由を聞いてみたんです。そうしたら、「包まれる自分だけの空間が欲しい」と。ゴンの願いは、カーテンそのものではなかったんですね。

    それならと、彼女だけの空間づくりを手伝うことに。段ボールをつなげて空間をつくってみたり、小さなおもちゃのテントを探してみたり。結局、カーテンをつけなくてもゴンは満足げでした。

    子どもの要求ってさまざまなものがあるので、それは無理……ということもあります。何でもかんでもすぐに受け入れるのではなく、時には理由を聞き出して対応できる範囲でいろいろ提案してみるといいかもしれません。

    いつもすべてを受け入れられるわけではないし、コスト面だって考えないとならないですからね。だからそう、「お得意様」と思えばいいのかな。“私どももできることと、できないことがございますので”というように。

    お互いがwin-winの関係になれるよう、ビジネスライクに代替案をいくつか提案していく。まさにプレゼンです! でもそうすると、こちらも感情的にならずに済むし、あれこれ策が出てきたりする。「そんなの無理」と一刀両断するのではなく、お互い納得するような折衷案をがんばって導き出して、ひとつひとつ解決していく感じですね。

    画像: お気に入りの折りたたみテントの中で遊ぶゴンちゃん。「気持ちが高ぶっている時に入って落ち着いたり、たくさんのぬいぐるみを連れ込んではマイワールドを展開していました」

    お気に入りの折りたたみテントの中で遊ぶゴンちゃん。「気持ちが高ぶっている時に入って落ち着いたり、たくさんのぬいぐるみを連れ込んではマイワールドを展開していました」

    子どもたちは仮装がお好き。

    そう言えば、突然の仮装ブームというのもありました。「○○になりたい」ってやつですね。

    ゴンがハマったのは、背中にティンカーベルみたいな大きな羽がついた「妖精になりたい!」でした。もう少し幼い頃にやってきたプリンセスブームの時は、お姫様風のドレスを誕生日プレゼントにしたりできたのですが、妖精スタイルはなかなか手強いリクエストでしたね。

    洋服店ではまず出会えませんから、結婚式用のサテンのワンピースの背中にコスプレ用の羽をつけて、羽と似た素材を探し出して手づくりしたカチューシャを合わせて……。

    いやあ~つくる方も結構気合いが要りましたが、私もつくっているうちにどんどん楽しくなってきて。どうせなら洋裁作家らしく腕をふるっちゃおう! と。

    その甲斐あってか、ゴンはすごく気に入ってくれて。しばらくの間、妖精スタイルで暮らしていました。その格好で公園とかにも行っちゃうので、近所の方に「今日はお祭りか何かあるの? 」なんて聞かれたこともありましたよ。

    同じことはまめぴーにもあって、彼の場合は忍者スタイルだったと記憶しています。おそらく、夫と一緒に観ていた“赤影”(横山光輝作の忍者漫画、およびそれを映像化した作品)のDVDの影響でしょうね。浴衣に帯を締めて、背中におもちゃの剣をさして!その姿で京都駅前の百貨店まで行ったこともあったなあ。

    一緒に行動するこちらとしては、そりゃあ恥ずかしいと思うこともありましたが、だいたい皆さん「カッコいいね」と喜んでくださって。外国人観光客からは、「サムライボーイ! 」と写真をリクエストされたこともありました。

    画像: ゴンちゃんが5歳の時から同級生女子3人で企画している町内恒例のハロウィンパーティ。「写真は8歳の時で、テーマは“まじょ子ちゃん”。コートの生地、一緒に生地屋さんに選びに行ったなあ」

    ゴンちゃんが5歳の時から同級生女子3人で企画している町内恒例のハロウィンパーティ。「写真は8歳の時で、テーマは“まじょ子ちゃん”。コートの生地、一緒に生地屋さんに選びに行ったなあ」

    子どもの心か他人の視線か。

    ついこの間も、まめぴーが「どうしてもこれで行きたい! 」とゴンのお下がりの猫の着ぐるみパジャマを着て、おまけに両手にお気に入りの大きなぬいぐるみを持って、東京の受注会会場(制作服の展示受注会イベント)まで一緒に行ってきました。

    今日はハロウィンだっけ? と思うぐらいのなかなかファンキーないでたちに一瞬ひるみましたが、「お客さんに喜んでもらえるかなあ~」と本人はワクワクモード。いつも私が、いかにお客さまにお世話になっているかを話していたので、彼なりのおもてなしのつもりだったのかな。

    確かに、駅のホームや構内ではじろじろ見られましたが、まあ誰に迷惑をかけているわけでもないしなと。逆に、通りすがりの人が彼を見て振り返り、笑顔になっていく様子を見て「いいやん! 」って。本人も「やっぱりみんな喜んでくれてるね」と、うれしそうでした。

    そして受注会ではみんなのアイドルに! 会場でもあるカフェでは猫の姿でお客さまにお茶をお出ししたりして、見事なホストっぷりでした。

    子どもの突拍子もない言動って、びっくりもするし困惑する時もありますが、よく考えたら悪いことでも何でもない。むしろ、周りの人を和ませている微笑ましいことの方が多いのかもしれないですよね。

    親が「ダメ」と注意したり、「やめなさい」と止めるのは、自分が他人からどう思われるかを気にしているから。それって、子どものためではなく、自分のためだと思うんです。

    きちんとしたマナーが必要な時もありますが、そうじゃない時でも必要以上に親がストップをかけてしまっていることって案外多いような気がします。

    その時々に子ども自身が思い描いたことが叶うように、なるべく寄り添って見守ってあげたい。

    毎日毎日、自由な発想から飛び出す想定外の要求と向き合いながら、いつでもどんな場面でも、子どもの思いを大事にしていたいなと思います。

    画像: 猫スタイルのまめぴー。「この冬の1か月ほど、ずっとこの猫パジャマでお出かけしていました。お芋堀りに行ったり、新幹線に乗って東京を闊歩したり。今となっては楽しい思い出です」

    猫スタイルのまめぴー。「この冬の1か月ほど、ずっとこの猫パジャマでお出かけしていました。お芋堀りに行ったり、新幹線に乗って東京を闊歩したり。今となっては楽しい思い出です」

    〈今回のスイッチポイント〉

    子どもの破天荒な行動。
    応援してみると、新たな世界が見えてくるかも!


    ――― 子どもの要求って「えー?」と思うことの連続ですよね。

    親はそのたびに、オロオロしたりイライラしたり。「わがまま言わないの! 」が口癖になっていることも。

    でも、子どもの思いもよらない願いや人と違った発想が見えた時ほど、その子ならではの世界に触れられる「チャンス」なのかもしれません。

    「NO」と即答するだけなんて、えーすごくもったいない?!


    画像: 子どもはいつだって、大人の想像の斜め上をいく!|美濃羽まゆみのごきげんスイッチ。凸凹子育て&暮らしと仕事

    ~せっかくの海だけど……の巻~

    「ゴンがはじめて海へ行った時のこと。スクール水着にキャップとゴーグルを装備し、いざ海へ!

    と思いきや、砂浜に打ち上げられていた大量の藻を黙々と集めはじめて……。

    いわく“テレビで観た藻塩がつくりたい! ”藻塩は藻に煮詰めた海水をつけ、天日乾燥させて採る天然塩ですが、もちろん1日でできるはずもなく……。

    “続きは家でつくるわ! ”と大量の藻を詰めたリュックを背に、電車に乗って家路につきました。がっつり水着だったのに、結局海へは入らず。なんともゴンらしい~」


    ――― さて、次回のテーマは「子どものものの片づけ方」。どんどん増えていく子どものもの、美濃羽家ではどんな風に片づけているのでしょう? 子どもも大人もごきげんでいられる片づけの手順や収納の工夫についてお聞きします。お楽しみに!




    〈写真・イラスト/美濃羽まゆみ 取材・文/山形恭子〉

    画像: 子どもの心か他人の視線か。

    美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
    服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。

    現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYou Tubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。

    ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
    インスタグラム:@minowa_mayumi



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