私がクッキーづくりを好きな理由
慌ただしくすぎる毎日。明日へ持ち越す仕事など、すぐに答えが出ない作業が続いていると、心のもやもやがたまることが多いと川地さん。そんなとき、ふと頭に思い浮かんでくるのが、クッキーづくりのことだそう。
「金工の仕込みや調整……、作品の完成に向けて、まだまだ作業が続く時期に突入すると、『あー、家帰ったら、クッキーを焼きたいな〜』って思うんです。クッキーは家にある材料で手軽につくれるし、何より、すぐに焼き上がる。小さな達成感があるんですよね」。混ぜたり捏ねたり、生地を触っていると、だんだん心が落ち着いてきて、まるでセラピーを受けているような気持ちになると答えてくれました。
今回は、そんな川地さんに、クッキーづくりをより楽しむための工夫やアイデアを聞いてみました。
もっとおいしく、もっと楽しく。クッキーづくりのポイントは?
◆レシピを変えずに、素材の種類を変えてみる
「ほかの焼き菓子にもいえることですが、クッキーづくりは、同じレシピでも材料によって味が変わる面白さがありますよね。たとえば、油分。私は、家では台所にある油を使うことが多いですが、太白胡麻油か、なたね油、米油かによっても焼き上がりや風味、食感が変わります」
太白胡麻油を使えば、こくがでて、バターを使ってないけど、味にリッチな深みがでるのだとも教えてくれました。
「わが家では、最近、太白胡麻油のクッキーが夫や小学一年生の息子にも好評でよくつくっています。もちろん、ほかの油でもそれぞれおいしく焼き上がりますよ」
圧搾法(あっさくほう)で抽出された国産の菜種油なら、香ばしい香りを楽しめるものもあるし、米油なら軽やかな仕上がりになるものも多く、使う油によって、いろんな仕上がりが楽しめるのだといいます。
「砂糖にしても、てんさい糖か、きび砂糖か。小麦粉によっても全粒粉かどうかで変わります。まずはレシピの材料配分を変えず、つくり比べてみるのも楽しいですよ」
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砂糖の違い
「きび砂糖を使うと、甘さが際立ちます。なめらかな生地に仕上がり、表面がつるっと均一に。てんさい糖なら、種類にもよりますが、粒子が大きいものならザクザクとした食感を楽しめます」
◆型抜きは、生地の「固さ」と「厚み」が鍵
クッキーづくりは、生地ができたら、いよいよ成形し、焼き上げるステップに。ここでの上手につくるための注意点はなんでしょう。
「もし型抜きなら、生地の厚みや固さを意識するのがポイントです」
細かな部分があるクッキー型は特にそうですと教えてくれました。
「柔らかすぎたり、油分が多かったりする生地は、型にくっついてきてしまったり、型抜きしてからオーブンシートへの移動がしづらかったりすることがあります。
きれいに型抜きできないときは、一度冷蔵庫で生地を冷やすか、または伸ばした生地と型の両方に、分量外の打ち粉をふると作業がしやすくなりますよ」
さらに、内側に模様のある型の場合は、生地が厚すぎると、細かな箇所に生地が詰まりやすくなることもあるのだといいます。その型の模様部分の深さに合う厚みにすることも大切なコツのひとつだそう。
たとえば、川地さんがつくる真鍮のクッキー型「おかっぱの女の子」を使った場合は、模様をきれいに出すための生地のベストの厚みは5mm前後。それ以下だと、模様がしっかりと浮き出ないし、厚すぎれば生地が詰まって型から抜き出しづらくなります。フレームと模様の深さは、型によってさまざまのため、まずはお持ちのクッキー型を再確認してみましょう。
◆わが家で働く、オーブンの「性格」を知る
「あとは自宅のオーブンの性格を知ること。レシピ通りの温度設定でも、奥だけ焦げてしまう、焼きすぎてしまうなんてことも。
使いながら『レシピは170度だけど、うちなら160度でちょうどいい』とか、奥の火力が強いから『途中で前後入れ替えよう』など、家のオーブンの特性を観察しておくのも大事です」
手軽・簡単だけでない、クッキーづくりのアイデアとポイント。知ればもっと、クッキーづくりが楽しくなりそうですね。ぜひ、家時間を豊かに過ごすための、お菓子づくりにお役立てください。
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川地家の場合:「子どものおやつ」と「型抜きクッキー」
小学一年生の男の子のお母さんでもある川地さん。おやつには、型抜きクッキーの出番も多いそう。「凝った形だと息子が喜んでくれるんです。『あ、星だね、家だね』って。心が踊っている雰囲気が伝わってきて私も嬉しいし、たくさん準備しなくても、面白がってくれるから、ひとつひとつの満足度が違うみたい。わが家では、時間を見つけてつくって、パントリーに保存しています」
<撮影/川地あや香>
金工作家・川地あや香さん×『天然生活』
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川地あや香(かわち・あやか)
金工作家、兼お菓子作家。東京芸術大学工芸家にて金工を学んだ後、飲食店勤務を経て2012年に山形県に移住。スプーンや製菓器具など食まわりのものを制作しながら、お菓子用のアトリエも構え「カワチ製菓」としての活動も始める。シンプルで温かみのある金工作品と、滋味深い素朴なお菓子が人気を集める。食や作品制作を中心にした小さな暮らしの記録を、ウェブサイトで日々発信している。著書に『おやつとスプーン』(パイ インターナショナル)。
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天然生活オンラインショップ
https://shop.tennenseikatsu.jp/