(『子どもの「好き」から始まる心地よい暮らし』より)
片づけられない、の原因を探る
片付けが苦手な娘の持ち物はおもちゃや文房具などが特に多かったため、まずはその数を見直すことから始めました。とはいえ、物に対する執着とこだわりが半端ではない彼女。
たとえば、色別に分けられた100個近いスーパーボール一つとっても、すべてに思い入れがあるため断捨離はまずできません。
そこで、「片付けるのが大変になるから、大事なもんはしまっておくのはどうかな。ふだん遊ぶもんだけこの棚に置こか」と提案してみることに。それはすんなりOKしてくれました。
リビングにおもちゃを置くのは小さなオープンラック一つだけ。サイズは保育園にならって大人の腰ほどで子どもでも片付けしやすい高さにしました。
遊びに支障が出るかなと不安もよぎりましたが、数が少ない方がかえって一つ一つのおもちゃに集中して遊べているようでした。
そして、子ども自身でしまいやすくするためさらに工夫を。それは「取り出しやすくする」こと。わたしもかつての癖で、ごちゃついたところを隠してすっきり見せようとすぐ蓋や布をかぶせてしまいがちなのですが、それだと子どもが探しづらく戻しづらいからです。
ものの「見える化」で探す時間も大幅に減少
さらに、彼女の「想像して動くことが苦手」というASD(*)の特性が分かってからは、「見える化」に力を入れました。
*ASDとは? 自閉スペクトラム症。言葉や、言葉以外の方法、例えば、表情、視線、身振りなどから相手の考えていることを読み取ったり、自分の考えを伝えたりすることが不得手である、特定のことに強い興味や関心を持っていたり、こだわり行動があるといったことによって特徴付けられます。自閉スペクトラム症は、人生早期から認められる脳の働き方の違いによって起こるもので、親の子育てが原因となるわけではありません。(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターHPより抜粋)
これはわたしも理解するまでに時間がかかったことなのですが、彼女にとって「見えない」=「存在しない」なのです。
たとえば彼女自身がテーブルに漫画本を置くとしますよね。その上に家族の誰かが新聞を重ねる。すると、彼女にとって漫画本は「ない」ものになってしまうのです。
多くの人は想像力を働かして「この辺かな」と新聞をどかすはずですが、彼女にとっては目で見えてないと存在しなかったことになってしまう。
結果「ここにあったはずなのに!」と混乱してしまって見つけられないという、ある意味筋の通った理屈があるのです。
かごを活用して、見える化を
そのかわり、記憶力は抜群にいいので物の位置はきっちり覚えていたりします。実際、彼女の部屋には机の上にも床にもたくさんの物が並べて置かれていますが、他人が動かさない限りどこになにがあるかを覚えているんだそう。
そのことを知ってからは「収納のきれいさ」より「探しやすさ」重視。「映えるかどうか」じゃなくって、なるべく「見える化」した収納を心がけてきました。
たとえば、マフラーや手袋は玄関入ってすぐのところにかごを置く。
毎日使うバッグや帽子などは壁に有孔ボードを設置して吊り下げ収納。
服もすべてハンガーに吊って見渡せるように。
それだけで、ずいぶんと出かける時の「あれがない!」と探し回る時間が減ったのです。
娘のための収納のはずが、自分たちにとっても快適な収納に
そうすると不思議と、彼女だけではなくわたしたち夫婦にとっても使いやすい収納になっていったのです。味をしめたわたしは家じゅうでどんどん「見える化」をすすめてきました。
たとえば、毎日使う掃除道具や調理器具は引っ掛け収納に。調味料やおかずは透明の容器に保存、書類入れはあえて蓋のないものを。
さらに、食器やカトラリー、筆記用具なども種類別にかごにまとめ、オープンラックに収納することに。
すると片手で取れて片手で戻せる上、定位置が決まっているため戻す場所がすぐに分かります。それ以来、夫とのいさかいもぐっと減りました(笑)。
それまでは、「片付け」というと、わたしの母がそうしてたように、物を押入れや棚にきっちり分類してしまい込むことだと思い込んでいたのかもしれません。でも、それでは使いにくいし続きませんでした。
けれどそれは、その方法がわたしたち家族の特性に合っていなかっただけでした。
自分たちにフィットした収納方法に切り替えてからはぐっと快適に過ごせるように。さらに自然と出費も減って、自由な時間が増えたのには驚きました。
収納を見直しただけで家で過ごす時間が、より心地よくなっていったのです。
見える化したことで手持ちの物の総数を視覚的に把握できるようになったことで、食材やストックなども無理なく無駄なく使いこなせるようになっていきました。
コロナ禍でも家時間をストレスなく過ごせたのは、それ以前から自分たちに合ったやり方で心地よく暮らせていたからかもしれません。
本記事は『子どもの「好き」から始まる心地よい暮らし』(大和書房)からの抜粋です
<撮影/辻本しんこ>
美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
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