(『ひとつずつの色 ひとつずつの形 ひとつずつの生き方 リップル洋品店の仕事と暮らし』より)
色とりどりの服が「誰かの1着」になるため待っている
結婚以来、息子3人を育てながら、私たち家族に合った生き方、暮らし方をしています。
生活に必要なものはできるかぎり手でつくる。さまざまなものを、さまざまな素材を使い、子どもたちと一緒に手でつくりながら暮らしてきました。野菜やハーブ、家具、器、遊具……。服づくりも、もともとはそのひとつ。
2009年にリップル洋品店を始めてから、服づくりは仕事になりましたが、それもまた、私たちの暮らしの一部です。
月に7日間だけ服を販売するアトリエショップも、自宅の敷地内にあります。
桐生の町が一望できるこの場所に引越してきたのは6年前。わざわざ桐生まで服を買いに来てくださるお客さまたちに、この景色も見てもらいたい。
そんな思いもあって、この場所に決めました。デザインや縫製をしている私の仕事部屋も、色をつくり、染めている開人の工房もここにあります。そう、私たちの暮らしのなかから生まれる服なのです。
月に500着ほどの服を世に送り出しています。「アトリエショップ以外では買えないの?」と聞かれますが、日本各地のギャラリーなどで期間限定の個展というかたちで販売したりしています。
服のデザインは、ギャザーをたっぷり寄せたエレガントなものもありますが、年齢、性別、国籍に関係なく身にまとえるボーダレスが基本。境界線をつくらないことを大事にしています。実際、ご夫婦で、あるいはお母さんと息子さんが兼用で着てくださっているお客さまもいるんです。
サイズも「フリー」のワンサイズのみ。どんな体型の方でも、妊婦さんでも、きれいに着てもらえるよう考えています。それは、私が子どもの頃から、ひとつのものを長く使うことの面白さ、愛おしさを感じてきたから。人生において、時期や年齢によって、体の線が変わっても、その1着をずっと着続けてほしいという思いです。
1年のなるべく長い時期、着てもらいたいので、季節もあまり細かく区切っていません。
セーターなどはウールだと冬だけになってしまうので、綿の糸を使い、夏以外のスリーシーズン着られるようにしています。綿だと洗濯もラクですよね。
綿は糸をいっぱい使うと重たくなってしまうので、中が空洞の糸をつくり出して使うなど、着心地も工夫しています。
毎月7日間のアトリエショップでは、そんな服の数々が並びます。色のバランスなどを考えつつ、日々、300着ほどがずらり。すべて1点ものの服で「毎日が初日」。常連さんのなかには、何日も通ってきてくださる方もいます。
そして、ときには「いま染め上がった生乾きの服」が登場することも。これも工房とショップが隣り合わせだからこそ。一期一会、その人だけの1着に出合ってもらえたらと思っています。
本記事は『ひとつずつの色 ひとつずつの形 ひとつずつの生き方 リップル洋品店の仕事と暮らし』(清流出版)からの抜粋です
岩野開人(いわの・はるひと) 岩野久美子(いわの・くみこ)
群馬県桐生市で、夫婦でRIPPLE YōHINTEN( リップル洋品店)を営む。毎月1日~7日のアトリエショップでは、すべて手づくり、1点ものの色とりどりの衣服が並び、日本各地や海外からも注目を集める。
インスタグラム:@ripple_yohinten
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1か月に7日間だけ開く、山の上の洋品店「リップル洋品店」。 1着1着、夫婦でつくる、色とりどりの服。自分たちらしい生き方、暮らし方、働き方を紡いできた日々の物語です。