(『ひとつずつの色 ひとつずつの形 ひとつずつの生き方 リップル洋品店の仕事と暮らし』より)
ひとりひとり、自分が好きな、自分に合った色を身にまとえたらいい
僕らがリップル洋品店を始めて10余年。久美子のデザインの数も次第に増え、いまでは100パターンくらいあります。
「これは廃盤」「もうつくらない」というものはなく、少しお休みしてまたつくったり、絶え間なくつくり続けているデザインも多くあります。
そんなふうに決まったデザインがあっても、なぜすべて1点ものかというと、色がバラバラだから。それは、僕が手染めをしているからなんです。
そもそも僕らの服づくりは、久美子が自分や家族の服を縫い出したことから始まりました。
その頃は、市販の色の生地を使っていたのですが、一緒に布を買いに行くと、「この色とこの色の間の色がほしい」とか「これよりもう少し青みがかった色がいい」と久美子がいつもいっていて。そうか、ほしい色がないなら、僕が染めてみようかと。
それから猛勉強が始まったのですが、手で染めるとどうしても色が安定せず、ゆらぐんです。10回染めれば、10色になる。毎回、まったく同じ色を出したければ、機械で染めるしかないのですが、手染めならではの、そのゆらいだ色がどれもこれも、全部いい色なんです。
制服のように、みんながみんな同じ色を着るのではなく、ひとりひとり、自分が好きな、自分に合った色を身にまとえたらいい。
そんな思いから、リップル洋品店では「青」といってもいろいろな青の服が、「黄色」といってもいろいろな黄色の服が並びます。
使う布の質感によっても発色が変わるので、「形(デザイン)×色×質感」で、どれひとつとして同じものがない、すべて1点ものです。
それに、久美子は「ひらめきの人」なので、完成した服に突然、刺しゅうやパッチワークをし始めたりするんです。そうしてできあがった服も、まさに1着のみのサプライズ。
常連さんたちは「えっ、刺しゅうが入っているのはこれひとつだけ?」「でも、それがリップルよね」などと妙に納得してくれています。
そう、その自由さが、まさにリップルなのです。
本記事は『ひとつずつの色 ひとつずつの形 ひとつずつの生き方 リップル洋品店の仕事と暮らし』(清流出版)からの抜粋です
岩野開人(いわの・はるひと) 岩野久美子(いわの・くみこ)
群馬県桐生市で、夫婦でRIPPLE YōHINTEN( リップル洋品店)を営む。毎月1日~7日のアトリエショップでは、すべて手づくり、1点ものの色とりどりの衣服が並び、日本各地や海外からも注目を集める。
インスタグラム:@ripple_yohinten
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1か月に7日間だけ開く、山の上の洋品店「リップル洋品店」。 1着1着、夫婦でつくる、色とりどりの服。自分たちらしい生き方、暮らし方、働き方を紡いできた日々の物語です。