(『天然生活』2021年4月号掲載)
出身地発祥の贅沢な味、はらこめしの宣伝部長
「郷土の味を詰め込んだお弁当を」というリクエストに、間髪容れずに挙がったメニューがはらこめし。さけをしょうゆとみりん味に煮て、煮汁とアラでごはんを炊き込み、さけといくらのしょうゆ漬けをたっぷりのせた炊き込みごはん。
近藤幸子さんの出身地である宮城県・亘理町発祥の郷土料理です。
主宰する料理教室で教えたり、知人に振る舞う「はらこめし会」を催したり、つくったはらこめしが雑誌の表紙を飾ったりと、ことあるごとに宣伝してきました。
「故郷の誇りです。本当においしいのに、意外に知られていないのが残念で、東京に来てからは、地道に普及活動を続けてきました」
故郷の近くを流れる阿武隈川は、秋になるとたくさんのさけが上がってくるため、さけもいくらもなじみ深い食材。シーズンには一尾どーんといただく機会も多く、旬の雌さけを味わい尽くす料理として、はらこめしを毎秋楽しんでいたのだと話します。
「いくらのしょうゆ漬けを、自家製にするときは市販品よりあっさり薄味。そうすると、塩分を気にせずたっぷり食べられるし、ケチらずのせられるのもいいんです」
東北の秋は短い。かけ足で去っていく秋を堪能するべく、週末にはあちこちでいも煮会が開催されるそうですが、その会に花を添えるのがはらこめし。
「ハフハフいも煮をすすりながら、かたわらにはいくらたっぷりのはらこめし。これぞ、まさに故郷の秋の思い出であり、味ですね」
薄ピンクのさけの上に、紅に光るいくらの粒がちりばめられたはらこめしの放つ艶やかさは格別。
「いまはなかなか難しいですが、お重に詰めて持ち寄り会に持っていくのもいいですね。ふたを開けたとき、一気に食卓のテンションが上がるはずです」
はらこめしのつくり方
生もののいくらをのせるので、夏場や長時間の持ち歩きは控えましょう。
材料(3〜4人分)
● 米(浸水させておく) | 2合 |
● 生さけの切り身 | 3切れ(300g) |
● いくらのしょうゆ漬け | 80g |
● A | |
・しょうゆ、酒、みりん | 各大さじ2 |
・塩 | 小さじ1/4 |
・水 | 1/2カップ |
・昆布 | 5×5cm |
つくり方
1 さけは皮を引き、骨を抜いて7mm厚さの薄切りにする。(*薄く切れなかったら、切り身のまま煮てから大きめにほぐす)
2 小鍋にAを煮立たせ、さけをさっと煮る。煮えたらバットに広げ、粗熱を取る。
3 米を炊飯器の内釜に入れる。粗熱が取れた2の煮汁(昆布も含む)と水を加えふだんと同じ水加減で米を炊く。
4 ごはんを皿やどんぶりにふんわり盛り、2のさけといくらのしょうゆ漬けをのせる。
笹かまとせりの炒めもののつくり方
笹かまもせりも宮城の名産品。滋味深い味わいの根っこも召し上がれ。
材料(つくりやすい分量)
● 笹かま | 3枚 |
● せり | 1束 |
● しょうゆ | 小さじ1 |
● ごま油 | 小さじ1 |
つくり方
1 笹かまは1cm幅に切る。せりは5cm長さに切る(根っこもよく洗い使う)。
2 フライパンを熱し、ごま油を入れ、1の笹かまとせりの根をさっと炒める。少し焼き目がついたら残りのせりを加え、しんなりしたらしょうゆを回し入れてさっと炒める。
しそ巻きのつくり方
東北一帯で愛されているというしそ巻き。手軽にきざんだしそと味噌を炒めるだけでも。
材料(2人分)
● 青じそ | 18枚 |
● 仙台味噌(なければ普通の味噌) | 30g |
● 砂糖 | 30g |
● 小麦粉 | 15g |
● くるみ | 5g |
● ごま | 5g |
● 七味とうがらし | 少々 |
● サラダ油 | 大さじ1 |
つくり方
1 くるみは細かく切る。
2 鍋にしそ以外の材料をすべて入れ、火にかける。混ぜながら中火で炒め、砂糖が溶けてゆるくなったら取り出して粗熱を取る。
3 しその裏側に2を少量(小指の先ぐらい)のせ、味噌がしそから出ないように巻く。3本並べてつまようじで刺す。
4 3を180℃の揚げ油(分量外・適量)でさっと揚げ、キッチンペーパーで油をきる。
〈撮影/近藤沙菜 イラスト/はしもとゆか 取材・文/鈴木麻子〉
近藤幸子(こんどう・さちこ)
宮城県・亘理町出身。料理教室「おいしい週末」主宰。近著『やめレシピ がんばらなくてもおいしいごはん』(主婦と生活社)では、料理における“当たり前”を省きながらも、ささっとつくれてちゃんとおいしい、近藤流シンプルごはんを紹介。
インスタグラム:@oishisyumatsu
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです