• 新宿・歌舞伎町で野良猫「たにゃ」と出会い、生きる理由をみつけた「僕」。人生どん底だった男性が、歌舞伎町で出会った野良猫「たにゃ」についてつづったTwitterが話題です。男性のお名前は、たにゃパパさん。今月、孤独なひとりの人間と一匹の野良猫の出会いの奇跡をつづったフォトエッセイ『歌舞伎町の野良猫「たにゃ」と僕』を刊行し、現在は「たにゃ」とともに暮らすたにゃパパさんに、「たにゃ」と過ごす日々について伺いました。

    「たにゃ」と出会って、僕自身の死を考えなくなった

    たにゃパパさんは歌舞伎町で20年ほど商いをしている男性。2020年の春、コロナ禍の静まり返った歌舞伎町で1匹の野良猫と出会い、やがてその猫のことをTwitterに綴るようになりました。

    野良猫は自分の名前をアレンジして「たにゃ」と名づけ、2年ほどかけてゆっくりと心を通わせてきました。

    そして、ついに2022年9月に捕獲に成功。ともに暮らすことになり、10か月。今の暮らしについて伺いました。

    たにゃファーストな暮らしの心地よさ

    画像1: たにゃファーストな暮らしの心地よさ

    たにゃと出会ったころの僕は仕事がうまくいかず、お金もなくて、もう人生を終わりにしてしまおうか……と考えていたんです。

    でもたにゃと出会って、「明日もたにゃにご飯あげないと」「僕がいないとこいつ死んじゃうかもな」と思うようになって、僕自身が死を考えなくなりました。

    そして、たにゃを保護して暮らしはじめてからは、僕の生活はすっかり変わりました。

    もともと明け方まで働いていましたし、出張も多く、家をあけることはざらにあったのですが、今はたにゃのご飯やトイレのお世話をするために絶対に家に帰るようにしています。

    画像2: たにゃファーストな暮らしの心地よさ

    野良猫だったたにゃは10年以上もの長い間、ゴミや虫だらけの不衛生なビルとビルのすき間を住処にしていたようです。

    もともときれい好きな猫にとって、それの環境がどれほど過酷だったのかと想像すると「なんでもっと早く救ってやれなかったのか……」と胸が痛みます。

    だから、たにゃがうちに来たからには、部屋中をピカピカにしておきたいんです。これまでずっと苦労してきただろうから、ここでは清潔で日当たりがよくて快適な、王様みたいな暮らしをしてもらっています(笑)。

    テレビは音や光が苦手みたいなので撤去して、洗濯機も脱水時のガタガタした音を嫌がるので、洗濯機があるのにわざわざコインランドリーに行って。

    でも外で暮らしていたたにゃにとっては、今の状況は「部屋の中に閉じ込めている」ってことかもしれない。窓を眺めては外の世界を懐かしんでいるのかもしれない。だからたにゃファーストになるのは当然です。

    「自立していること」こそが野良猫の魅力

    画像: 「自立していること」こそが野良猫の魅力

    といっても、10か月も献身的に尽くしていますが、いまだに抱っこもできてはいないんですけどね(笑)。そんなところも「野良猫たにゃ」らしいです。

    僕は、野良猫の魅力は「自立していること」だと思っているんです。外で暮らしていたたにゃは、自分で安全な場所を探して寝て、自分でご飯を探して食べてきたはずです。

    僕に頼ったり、なついたりしてはくれないんですけど、それって自分で考えてこれまで生きてきた証ですよね。

    それこそが魅力なんです。だから無理して僕から距離は縮めないですね。もちろん、たにゃから近づいてくれたら最高に幸せですけどね!

    最近は寝ている僕を踏んで歩くようにはなったので、心は許してもらえているのかな。寝たふりをして、たにゃの脚の感覚を味わっています。

    たにゃのおかげで、自分でも知らなかった自分に出会えた

    画像: たにゃのおかげで、自分でも知らなかった自分に出会えた

    コロナになる前の歌舞伎町はインバウンド特需もあって、僕もたくさんお金を稼いでいました。

    当時は、いいおうちに住んだり、おしゃれな洋服を着たり、そういうことが幸せだと思っていたんですけど、振り返ってみると、それって見せかけの幸せなのかもしれない。仕事で成功しているときって、周りに人が集まってくるんですけど、その人たちは結局、自分の肩書きに惹かれているだけなんだってことも、コロナをきっかけに気づかされました。

    たにゃと僕との関係は損得なし。だたお互いが好きで、一緒にいる。たにゃさえいれば今はほかにはなにもいらないし、もう自分でも笑っちゃうくらい、たにゃが大好きなんです。心が満たされたのかな。今の方がずっと幸せです。

    歌舞伎町で長い間商いをしている僕は、強くいなければ、とずっと肩肘を張って生きてきました。でも今は、家に帰ると「たにゃにゃ~」ととろけるような口調でたにゃに話しかけるおっさんになってます(笑)。

    自分のその変化に驚いています。僕にこんな一面があったんだって。たにゃと出会ってから自分でも知らなかった自分に出会えました。

    野良猫との暮らしはめちゃくちゃ楽しい!

    画像: 野良猫との暮らしはめちゃくちゃ楽しい!

    今回、僕たちの出会いが本になったのですが、なんと新宿の本屋さんにも置いていただけるそうなんです。たにゃは歌舞伎町に凱旋帰国(?)するんです。

    歌舞伎町で誰の目にも留まらず、ひっそりと生きてきたたにゃが、本屋さんの棚に並んでみんなに見てもらえる。すごい奇跡ですよね。

    僕たちをきっかけに、外で暮らしている猫に目を留めてほしい。野良猫と暮らすの楽しそうだなって思って、手を差し伸べてもらいたいです。だって、めちゃくちゃ楽しんです。たにゃはめちゃくちゃ面白い!

    死を考えるほど追い込まれていた当時から今も状況はあまり変わっていなくて、仕事もまだまだだし、お金もないんですけど、あのときとは気持ちがまったく違うんです。

    たにゃという最高のパートナーに出会えて、Twitterでも優しいフォロワーさんたちと会話させてもらえて、楽しいなって笑って過ごせています。

    僕はたにゃと出会って救われました。そしてたにゃも僕に出会って救われたはずです。人間と野良猫がともに笑って暮らせる、優しい世の中になってほしいです。



    たにゃパパ

    関西出身、現在は東京に暮らす。歌舞伎町で働いて20年ほど。実家で犬と暮らしていたことはあるけれど、猫と暮らすのは「たにゃ」がはじめて。2022年2月からたにゃのことを綴ったtwitterを開始し、2023年7月現在、フォロワーは1万6000人。はじめての著書『歌舞伎町の野良猫「たにゃ」と僕』(扶桑社)を2023年8月に発売。
    ツイッター:@kabukinoraneko

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    人生をあきらめた「僕」は喧騒の街でひとり生きる猫と出会った。それは「君」が起こした奇跡。Twitterで話題、歌舞伎町に生きる野良猫とおじさんの泣けるフォトエッセイ。



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