• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。保護猫の里親探しをする中で、咲さんが出合った50代の女性の、家族の話。

    わが家に保護猫が5匹もやってきた!

    2016年。この年は、まるで猫神様に選ばれたような1年でした。

    真夏、近所に住む、お外の猫さんにごはんをあげている女性が、その猫が子猫を産んだと我が家にSOSを出してきました。パニックを起こしているようで、「もう世話できない! 保健所に連れていく!」とてんやわんや。

    私たち夫婦は、里親さんをみつけるため、その子たちを母猫ごと預かることにしました。

    まだ授乳中の親子猫。愛らしい姿に後ろ髪をひかれながらも里親募集もかけ、子猫は良いご縁もみつかりかけていた矢先、またとんでもないことが。

    里親希望者さんとの面会の日、なにげなく玄関のドアを開けると、そこには見慣れぬダンボールが。悪い予感とともに中を覗いたら、そこにいたのは、まだ生まれたての子猫が2匹。

    遠ざかる意識。これ以上、どうやって?

    混乱しながら猫用のミルクを哺乳瓶で与えると、片方の男の子は、ミルクを上手に飲んでくれません。これでは、命が途切れてしまう。

    悩んだ末、獣医さんにも相談し、授乳中の親子猫の間に、その生まれたての子ふたりを置きました。

    ケンカになったらどうしよう――。ひやひやしながら見守ると、チュパ……チュパ……。おばさん猫のおっぱいを吸う音が。おばさん猫も、まるでわが子のように、毛づくろいをしてくれました。

    画像: わが家に保護猫が5匹もやってきた!

    血のつながりもないのに。

    親子猫も、生まれたての子も、みんな捨てられた命です。つい1か月前まで来たこともなかった我が家で、みんなは、ひとつの家族になりました。

    里親になってくれた50代の女性

    それでも、巣立ちという別れは訪れます。

    親子猫の子猫たちは、あたたかい家族に恵まれ……残ったのは母猫と、捨てられた生まれたての子猫2匹。

    子猫には、きっと里親は現れるだろうと思っていましたが、問題は母猫。それまで、あまり良い扱いを受けていなかったようで、人間に対し、恐怖心と攻撃をしかけてしまったのです。

    悩みの中に身を置いていたとき、ブログで名乗りをあげてくださる女性が現れました。50代のキャリアウーマン。

    きっと、母猫はうちの子になるんだろうなあ、と半ばあきらめていたのですが……、その方は言ってくれました。

    「2匹も3匹も一緒だから」

    そうして、気難しい母猫まで、おうちに連れ帰ってくれたのです。

    母猫と、血のつながりのない2匹の子猫。あたらしいおうちで、彼らはまるではじめから親子だったように過ごしました。

    「めぐり」と名付けた女の子猫が、「かんみさん」と名付けた母猫に甘えると、「イキル」と名付けた男の子がやきもち。かんみさんは、「ほんま、しゃーないなー」と、ふたりの世話をするのだといいます。

    「2匹も3匹も一緒だから」

    猫たちを救ってくれたこの言葉。後になって聞くと、その女性ではなく、婚約者の男性の言葉だったそうです。

    里親になる少し前、偶然知り合い縁を結んだ2人は、そんなまだ自分たちの愛もはぐくみたいだろうときに、猫たちに愛情をかたむけてくれました。

    そして、その後結婚し、また新たな「家族」ができたのです。

    女性は言いました。

    「私は、自分の生家が少しうまくいっていなかったから、本当の家族が欲しかったの」

    本当の家族。

    女性は、旦那様になった彼の実家のご家族が集まるとき、嬉しそうに料理をします。それを猫たちはおこぼれにあずかろうと狙い顔。

    いくつになっても、どんな事情で育っても、一生を預けられる家族はできる。今日も、また、母猫よりも大きくなった子猫たちの、かわいい写真が届きました。

    画像1: 里親になってくれた50代の女性

    画像2: 里親になってくれた50代の女性

    咲セリ(さき・せり)

    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

    ブログ「ちいさなチカラ」



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