• テレビ番組を中心に、スタイリストとして活躍する西ゆり子さん。70代を迎えるにあたり、たくさん持っていた服を減らし、本当に好きなものだけを残したのだそう。理想のクローゼットにたどり着いたという西さんに70代からの服との向き合い方について教えていただきました。
    (『Life Closet』より)

    クローゼットの中は好きな服だけ

    画像1: クローゼットの中は好きな服だけ

    「どれくらい、服を持っているんですか?」

    スタイリストが、よく聞かれる質問です。スタイリストはおしゃれに気を遣っているのが当たり前。最新の流行にも敏感なので、クローゼットの中にはきっと服があふれているに違いないと思われているのでしょう。

    私の場合はといえば、クローゼットの大きさは約二間。縦横の長さがタタミ約2畳分といえば、今どきの若い方にもわかっていただけるでしょうか。

    右側に秋冬もの、左側に春夏もの。その二間のクローゼットの中に、オールシーズンの服をすべて収納しています。シワになりやすいものはハンガーラックにかけ、ニットやTシャツなどの畳めるものは、その下に並んでいる8個の衣装ケースの中に。

    現役のスタイリストが持っている服の数としては決して多いほうではありません。むしろ、かなり少ないと言えるでしょう。

    もちろん、若い頃はそれこそ数えきれないほどの服を抱えていました。「1年365日、毎日違う服に着替えられるかも」なんて笑い話をしていたくらい。

    でも、そんな時代はもう終わり。70代を迎えるにあたり、今の自分にとってピンとこない服や、「便利な服」「無難な服」はすべて処分したのです。

    70代は、仕事や家族のしがらみからもようやく解放される年代です。

    せっかく自由になれるのだから、これからは自分が好きな服だけを着て、身も心も軽やかに生きていきたいなって。

    そうして、私のクローゼットの中は、本当に好きな服だけになりました。

    自分の好きな服だけしかないクローゼットを見るたびに、「さあ、今日はどれを着よう?」と、毎日、服を選ぶのが楽しくてたまりません。

    自分が心底気に入っている服は、何回着てもワクワクします。好きな服はどこかに共通点があるらしく、不思議なことに、どれとどれを組み合わせてもマッチします。

    私にとって、クローゼットは人生そのもの。

    数々の引き出しの中には、これまでの人生で経験した悲喜こもごもや、私の分身とも言える大切な服がしまってあります。理想のクローゼットにたどり着いた今、誰かに聞かれたらこう答えます。

    「私のクローゼットには、好きな服しか入ってないの」って。

    画像2: クローゼットの中は好きな服だけ

    ※ 本記事は『Life Closet』(扶桑社)からの抜粋です

    〈撮影/山川修一、山田耕司〉


    西 ゆり子(にし・ゆりこ)

    1950年生まれ、スタイリスト。雑誌や広告のスタイリングを手がけたのち、テレビ番組におけるスタイリストの草分け的存在となる。これまで担当した作品は『電車男』『のだめカンタービレ』『セカンドバージン』『リーガル・ハイ』『ファーストクラス』『家売るオンナの逆襲』『時効警察』『七人の秘書』等、およそ200作品。2019年度、「日本女性放送者懇談会50周年特別賞」を受賞。著書に『ドラマスタイリストという仕事 ファッションで役柄をつくるプロフェッショナル』(光文社刊)、『ドラマスタイリスト西ゆり子の服を変えれば、人生が変わる』(主婦と生活社刊)

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    『Life Closet』(扶桑社・刊)

    『Life Closet』(扶桑社・刊)

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    70代の現役スタイリストとして活躍する西ゆり子、初のフォトエッセイ。 幼いころから今に至るまでの服へのこだわりや、服を選ぶときの考え方、人生の喜びや悲しみとともにあった服のことなど、「服」と「生き方」にフォーカスした44篇を収録。

    今日着る服は、今日選ぶ。それが私のやり方です。朝起きて、雨がしとしと降っていたら、水たまりなど気にせずに雨を楽しめる装いで出かけたい。――また、真っ青に晴れ渡った空に爽やかな風が吹いている日は、自然と新しい服を着たくなります。どこかに飛んでいきたいと感じるような風になびくデザインで、陽の光に映える色の服を着て出かければ、一日中、ワクワクして過ごすことができると思うから。(本文より)



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