• 被災後の避難生活は、できれば住み慣れた家で送りたい。でも、その場合、どうやって自宅を安全な避難場所にする? 必要な備えと対策を防災のプロに伺いました。9月1日は、防災の日。8月30日から9月5日の防災週間に合わせ、過去に反響の大きかった防災関連の記事を再掲載いたします。
    (『天然生活』2015年10月号掲載、『天然生活web』初出2019年10月11日)

    防災の心得7カ条

    防災は「モシモ」のためではなく、「イツモ」の備えのなかにあるもの。7カ条も「イツモ」念頭に置いておいて。

    1 生活エリアの危険度をきちんと把握しましょう

    画像: 1 生活エリアの危険度をきちんと把握しましょう

    事前に知っておくことで、水害、土砂災害、地盤災害などの事故やパニックを軽減できる。国土交通省のサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)でハザードマップが閲覧可。

    2 日頃から実践したい“1週間備蓄”

    画像: 2 日頃から実践したい“1週間備蓄”

    内閣府が発表した「南海トラフ巨大地震対策」では、1週間備蓄を推奨している。公的援助がゆきわたるまでの時間を考慮し、自活できる備蓄を、ふだんから用意しよう。

    3 家具の配置や補強は定期的にチェック

    画像: 3 家具の配置や補強は定期的にチェック

    地震に備えて、家具や家電を固定するのは必須。さらに、「もうやったから安心」ではなく、ゆるみやずれがないか、配置に問題がないか、定期的に確認し、補強するのも大事。

    4 非常袋の用意とともに自宅の備えが大切です

    画像: 4 非常袋の用意とともに自宅の備えが大切です

    被災後にできるだけストレスの少ない避難生活を送れるように、自宅の備えはしっかりと。緊急避難が必要な海沿い、山沿いに暮らす人は、非常袋の備えを忘れずに。

    5 自宅避難生活中のトイレ対策は万全に

    画像: 5 自宅避難生活中のトイレ対策は万全に

    災害時、停電や断水になった場合、切実なのがトイレ問題。汚物処理ができないと生活環境が即悪化し、がまんすれば体調不良に。市販の非常用携帯トイレなどの常備は必須。

    6 家族で共有。安否確認の手段は、あの手この手で

    画像: 6 家族で共有。安否確認の手段は、あの手この手で

    非常時に家族の安否がわからないと、とても不安なもの。非常時の連絡方法や待ち合わせ場所、避難ルートは家族で共有し、安否確認の手段は何通りも決めておくこと。

    7 気持ちのいいあいさつも防災のひとつです

    画像: 7 気持ちのいいあいさつも防災のひとつです

    いざというときに頼りになるのは、隣近所、同じ地域の人々。ふだんからご近所さんとあいさつを交わし、おつきあいしておくこと。これが災害時に被害拡大の防止になる。

    わが家を安全な場所に変える

    自宅で避難するというもうひとつの選択肢

    「災害時は、非常袋を持って、近くの避難所へ」。そんな行動をイメージしている方も多いのでは?

    ところが、「そもそも避難所は、家が倒壊したり、生活エリアの危険度が避難レベルに達したりなど、自宅にいられなくなった人が優先的に使う場所。地域全員が入る収容量はないですし、トイレやプライバシーの問題も起こりがち。避難所で情報収集し、名前を登録しておくことは大事ですが、自宅が無事なら、自宅避難を続けるほうが安心です」と永田宏和さん。

    阪神・淡路大震災では、電気の回復に1週間、ガスは最低1カ月、水道は1~3カ月かかったそう。

    「物資や人手も不足しますから、公的な援助には頼れません。ですから、食料備蓄の確保は必須。ケガのない体でいることも重要なので、家具転倒防止対策も忘れずに」

    近所づきあいやキャンプなども防災活動の一環とか。

    「ご近所と交流し、楽しみながら防災意識を高めることが、いざというときに役立ちます」

    とにかく家具を固定して。生死を分けるそのひと手間

    阪神・淡路大震災当時、大阪に住んでいた永田さん。地震発生からしばらくの間は、渋滞や道路の陥没などで被災地に近づくことすらできなかったとか。その後、原付バイクに救援物資を積み、被災地にたどり着くと……。

    「街ごと全部壊れてしまったようでした。その光景を見て、自然災害の恐ろしさを実感しました」

    6000人以上の命が奪われた阪神・淡路大震災では、ケガの約50%が、家具などの転倒や落下によるものだったそう。この教訓から、いま私たちがすべきことは?

    「とにかく、家具を固定してください。大地震を体験した被災者の多くが、『ブラウン管のテレビが2mくらい飛んだ』『重い本棚が、前方に歩いた』『寝室の簞笥が倒れてドアをふさぎ、長時間、部屋に閉じ込められた』『家具や家電が飛んで、家じゅうをミキサーでかき回されたようだった』などと話しています。地震では、まさに家具が凶器になるんです」

    具体的には、棚などをL型金具やベルト式器具、突っ張り棒で固定。底には滑り止めシートを敷き、粘着マットも付けるなどして、耐震性を高めることが大切だそう。

    「何かひとつ対策をしたら万全、ということではありません。倒れたら危険そうな家具は、上からも下からも合わせワザで転倒防止対策をすることで、より安全性が増します。本が飛び出すのを防ぐテープ、割れない照明、食器の滑り止めグッズなどの商品も多数出ているので参考にして」

    とはいえ、きっかけがないと、高価なグッズを買って取り付ける気にはなれないのも事実です。

    「身近なものを使ってできる家具の転倒防止対策もあります。たとえば段ボール箱。これを天井と箱のすき間が2cm以内になるように入れるだけで家具が倒れにくくなります。ただし、家具の下には滑り止めシートを敷き、段ボール箱の底面四隅には粘着マットを付けることを忘れずに。また、最近のガラスは、よっぽどでなければ地震の揺れでは割れません。日常的にカーテンを閉め、万が一、割れてもガラスが飛ばないようにしておくことも、立派な防災対策です」

    また、二重三重の対策は重要だけれど、被災者が語る一番の対策は、極論だけれど、“何もない部屋で寝ること”だとか。「とくに無防備な睡眠時は、物が少ない寝室=一番安全なんです」

    この機会に、自宅の備えが万全か、十分チェックを。

    賢いインテリアで安全な家づくり

    ひとたび地震が起きれば、凶器となって私たちに襲いかかる家具。命を守るための賢いインテリア対策を伺いました。

    まずは、わが家をチェック

    家具に転倒防止対策をしていますか? 高いところに重いものを置いていませんか? 室内で注意すべき点と、その対策について解説します。

    画像: まずは、わが家をチェック

    ◯ 照明
    理想は天井じか付けタイプ。でも、吊り下げ式でもコードを短めにして、チェーンなどで数カ所を固定すれば安全性アップ。割れない和紙などのシェードを選ぶのもよい。

    ◯ 食器棚
    まずは、棚自体を家の状況に応じた転倒防止グッズで固定。食器の下には滑り止めシートを敷いて、飛び出しを防止。ガラス飛散シートや扉ストッパーを付ければ、より安全。

    ◯ 本棚
    転倒防止装置を付けるのはもちろんのこと、軽い本は上、重い本は下に入れて重心を下げることも重要。棚の前端に落下抑制テープを張って、本の落下を防ぐのも効果的。

    ◯ 寝室
    人が無防備になる睡眠時。寝室は、物が落ちてこない、下敷きにならない、逃げ道をふさがない家具配置が基本。子どもの寝室に背の高い家具を置くのも避けたいところ。

    ◯ 窓
    家具が倒れて窓ガラスが割れないように、付近に家具やテレビを置かないこと。さらに、レースやカーテンを引いておけば、万が一ガラスが割れたときにも飛び散らない。

    ◯ テレビ
    テレビとテレビ台を粘着マットで固定、ロープとねじ込み式金具でテレビと壁を連結させるなど、合わせワザで対応を。揺れで飛ばないよう、なるべく低く置くことも大切。

    ◯ グリーン
    室内の観葉植物は、強い揺れで飛ぶことを考えると、割れない鉢が安全。ベランダにグリーンを置くと外から窓側に倒れてガラスが割れるおそれが。配置には十分に注意を。

    ◯ 台所
    物が多くなりがちな台所だけれど、表に置きっぱなしにせず、引き出しや棚にしまうのが鉄則。扉や引き出しが飛び出さないよう、ストッパーを付けるのも忘れずに。

    <監修/永田宏和 イラスト/平井きわ 取材・文/宇野津暢子>

    永田宏和(ながた・ひろかず)
    1968年、兵庫県出身。防災プロデューサー。NPO法人「プラス・アーツ」理事長。防災に関する企画、運営、講演を数多く手がけ、防災教育の普及に取り組む。企業の防災アドバイザーも務める。
    http://www.plus-arts.net/

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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    画像1: 自宅で避難する防災計画。わが家を安全な場所に変える|いざというときの防災ノウハウ

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