• 90歳を超えても元気に台所に立ち日々の家事をこなす桧山タミさん。がんばらず、心を込めて手を動かす。そこには深い生活哲学がありました。今回は、タミさんの“毎日を過ごす心得”について。
    (『天然生活』2019年10月号掲載/『天然生活web』初出2021年5月15日)
    画像: 土鍋でごはんを炊くタミさん。目で見て、音を聴き、五感をすべて使って炊き上げていく。「台所のことは体で覚えて心を込めることです」という

    土鍋でごはんを炊くタミさん。目で見て、音を聴き、五感をすべて使って炊き上げていく。「台所のことは体で覚えて心を込めることです」という

    画像: 「気になったら、まずは行って、自分で見て確認することです」。若いころから、海外に出かけるたびに料理に関するメモを取ってきた。韓国に行った際の料理について書かれている

    「気になったら、まずは行って、自分で見て確認することです」。若いころから、海外に出かけるたびに料理に関するメモを取ってきた。韓国に行った際の料理について書かれている

    感謝をもって、毎日を過ごす

    みんなで食べたらおいしい。皆が楽しく過ごすことが大切

    「自分だけもうけて、ひとり占めしたい人がたくさんいる世の中だけど、ほんとうにそれで幸せでしょうか」。タミさんはそんなふうに問いかけます。

    若くして夫を亡くし、小さな長屋で子育てしているときも、ご近所さんや友達を呼び、大勢で食事をしていたそう。

    「おいしいものをつくるといつもみんなに声をかけていました。狭い狭い部屋だったけど、ちっとも恥ずかしくなんかなかった」とタミさん。

    子どもたちも、大勢のなかでみんなで育てたほうがいいといいます。

    「ひとりでたくさん食べたって、ちっともおいしくない。みんなでわいわい食べたら、少しのものでもおいしいんです」

    画像: ごちそうでなくとも、皆でわいわいにぎやかに食べるのがいい

    ごちそうでなくとも、皆でわいわいにぎやかに食べるのがいい

    賢さとは、だれかが困っていることに気づけること

    大家族で何人ものお手伝いさんがおり、多くの人が集まる家庭で育ったタミさんは、小さいころから大人のふるまいをよく観察していたそうです。

    新人をいじめる意地悪なお手伝いさんを見て「あんなことは絶対してはいかん」と思い、また、言葉でいわれなくとも、だれかが助けを必要としていることに気づき、さっと手を差し伸べることができる「気ばたらき」の大切さも知りました。

    「本当の賢さとは、だれかが困っていることに気づけること、そして手を差し伸べられること」と
    いうタミさん。

    「それを身につけるのが本当の学び。テストでいい点をとることや難しい学校に入ることより、ずっと大切です」

    画像: 手を合わせるタミさん。「神さまのお役に立てたと思いたいのです」

    手を合わせるタミさん。「神さまのお役に立てたと思いたいのです」

    幸せとは、自然の一部であると知ること

    「家庭とは家の庭と書きます。庭があって初めて家庭といえるんですよ」

    そうタミさんはいいます。庭、つまり大地につながってこそ、日々の生活があるというわけです。

    いまはマンションに住むタミさんですが、ベランダでたくさんの草花を育てています。また土の上を歩くことを意識することで、元気に暮らせているそうです。

    「人間が特別だと思ってはいけない。鳥や草花と一緒で、自然の一部なんです」

    だから、自然とともに生きるのが一番幸せ。自然の一部として、神さまの心に沿うように、毎日を暮らす。そうすれば、小さなことにくよくよせず、おおらかに、安心して生きられるのです。

    画像: ベランダには土を感じられるよう、草花がたくさん植えられ、緑が美しい

    ベランダには土を感じられるよう、草花がたくさん植えられ、緑が美しい

    人生最期の日は、片づけをしたいです

    神さまが喜ぶように、いつも心がけているタミさん。人生最期の日には何をしたいですか、と問いかけると、「片づけ」という答えが返ってきました。

    「だって、もし最期のときに散らかしていたら、神さまにお会いしたときに怒られるでしょう?」

    常に身のまわりを美しくして生きてきたからこそ、散らかしたままでは逝きたくない—タミさんならではの言葉です。

    でも、もしタイミングの問題で、散らかしてしまったら……。

    「神さまにお会いしたときに、『親戚に片づけるようにいってありますから』と言い訳しますよ」

    そういって、茶目っ気たっぷりに笑うのです。

    画像: 棚に置いた保存びんをていねいにふいてゆくタミさん

    棚に置いた保存びんをていねいにふいてゆくタミさん

    動画:桧山タミさん95歳。いま、伝えたい想い

    画像: [天然生活]桧山タミさん95歳。いま、伝えたい想い www.youtube.com

    [天然生活]桧山タミさん95歳。いま、伝えたい想い

    www.youtube.com

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    <撮影/繁延あづさ 取材・文/土屋 敦>

    桧山タミ(ひやま・たみ)
    1926年、福岡県生まれ。17歳から料理研究家・江上トミ氏に師事。30代半ばで独立。52歳のとき、現在の地に「桧山タミ料理塾」を移し、40年になる。著書に、愛情と自然の恵みを大切にする家庭料理のありようと、生き方の哲学を余すところなく記した『いのち愛しむ、人生キッチン』、小学校で行った授業をもとに幸せな未来のための話を集めた『みらいおにぎり』(ともに文藝春秋)がある。

    『いのち愛しむ、人生キッチン』(桧山タミ・著)

    『いのち愛しむ、人生キッチン』92歳の現役料理家・タミ先生のみつけた幸福術(桧山タミ・著/文藝春秋・刊)

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    『みらいおにぎり』(桧山タミ・著)

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    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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