家事は、それぞれ自分ができることを、できる範囲で担当する
みなさん、家事シェアってどうされていますか?
夫婦共働きで高校生、小学生の子どもと暮らすわが家では担当制を採用しています。各自ができることを、できる範囲で、ひとつのことを「担当」するスタイル。
子どもにたちにとっても家事を「お手伝い」するというイメージではなく、「〇〇は誰々の仕事」と捉えてもらうようにしています。
その際に私が重視しているのが「各自、得意を持ち寄り、苦手はやり方を変えて」という考え方。
数回に分けて詳しくお話していきますね!
家事シェアをすすめる理由
私がメインで家事を担うようになって16年。子どもたちが生まれてからは夫との家事シェアに悩み、幾度となく見直しをしました。子どもたちが成長するにつれ改善を続け、体感ではありますが、現在私の家事担当率は50%を下回るようになりました。
私には子育てや仕事のことなど、簡単に答えの出ない問題を考えるときに、大切にしていることがあります。それは、大まかでいいので「テーマ」を掲げておくこと。
そもそも家事とは何なのか、何のために、誰のためにする必要があるのか。原点に立ち返ると見えてきたテーマが「家族の、家族による、家族のための仕事」でした。
たとえば、料理に洗濯、掃除や買い出し、家計の管理など……。家族みんながすこやかに、心地よく生きていくために必要不可欠な作業の総称、それが「家事」。
それを誰かひとりだけが担ってしまっては、万が一何かあって家事ができなくなったとき、全員が共倒れになってしまう。家事シェアをしないことは、家族全員にとってリスクが高いことだと思うのです。
しかも、家事は、子どもたちにとって将来自立していくために必須なスキル。ならばどのようにしてみんなで協力していけばいいのか。ときに道に迷いつつも、そのたびにテーマに立ち戻り、少しずついまの形に落ち着いていったように思います。
子どもがやりたがる家事!?
家事は生きていくうえで誰にとっても大事なものです。かといって、子どもがまだ幼い頃はできることもあまり多くありません。
でもある日、子どもたちが進んでやりたがる家事に、ひとつの規則性を発見! それは「私たち夫婦が彼らの目の前でやっている家事ほどやってみたくなるようだ」、ということでした。
それに気づいてからはお手本を見せるようなイメージで、できるだけ「いっしょにやろっか」と声をかけるようにしてきました。
たとえば料理では、葉物野菜をちぎったり、えんどう豆のさやをむいてもらったり。お風呂に入っているときのついでに床を掃除したり。ペットのお世話や買い物、掃き掃除や拭き掃除、障子の張り替えなどなど。(障子は紙を破る担当の方がずいぶんと長かったけれど!!)
もちろん子どもですから、発達の具合によってできる・できないがあり、その子の個性によっても向き不向きはあるので、はじめはうまくいかなくてあたりまえ。とはいえ、子どもは意外と私たちのことをちゃんと見ているので、一度ダメでも数か月後にはすんなりできることもありました。
また、子ども発信の「これやりたい!」が出てきたらとことんやってもらうことに。(親の私たちが無理のない範囲で)
急にあることが一定期間ブームになったり、逆にブームが急に去ったり……。さすがに半年間、娘の卵焼きブームが続いたときは、ちょっと胸やけぎみでしたが、研究熱心な彼女、かき混ぜ方を変えたり、砂糖や醤油の配合を工夫したりと、日に日に上達していく様子には驚かされました。
ともあれ、大切なのは、あくまでも経験値を増やすこと。それは広く浅くでも、狭く深くでもいい。そう思いながら、いっしょに家事を楽しんできました。
数年ごとに家事を見直し
そんなこんなで、子どもたちが幼いうちは夫婦ふたりで担ってきた家事量を、子どもたちの成長にともなって少しずつ手渡せるように。そして、この数年は生活が変わるタイミングに家事シェアを見直すのが、わが家の恒例行事となっています。
娘のゴンが高校生となり、息子のまめぴーが5年生になったこの春の見直しは、こんなふう。
夫はもともと食器洗い担当ですが、このたび洗濯も担当してくれるようになりました。
かつては私の朝のルーティーンだった草木の水やりや、トイレ掃除、お風呂掃除はまめぴーに一任。それは彼が「決まったことを決まった時間にやるのが得意」だと知ったから。お天気のいい日は水やり後にその庭を眺めながら、朝食をとるのが彼のお気に入りです。
一方ゴンは、まめぴーとは違い、決まったことを毎日やるのは苦手だそう。そのかわり得意なのが料理なので、今は常備菜づくりを担当してくれています。モチベーションアップのために彼女好みの保存容器を3つ用意して、ひとつ食べ終わったら、またひとつ補充する感じで続けてもらっています。
たとえば、ひじき煮、にんじんきんぴら。大根葉ふりかけ、大根と鶏むねの炊いたん。ほうれん草バターソテーに、ねじりこんにゃく。ちょっと茶色いメニュー(彼女好み)が多いけれど、きっちり下ごしらえと計量をするので、ほんとうにおいしい!
彼女は玉ねぎの火の通りにも一家言あり、肉じゃがやカレーをつくる際はすべてバラバラにほぐしてから鍋へ。大雑把な性格の私なら「鍋の中で混ぜちゃえ~」ですが、彼女ゆえのこだわりも「狭く深く」の経験値から導き出されたものなのかもしれません。
家族全員が家事を楽しめるために
家事シェアでトラブルになりがちだと聞くのが、「相手の家事のやり方が気に入らない」というもの。
私も子どものころに母とよくバトルになりました。せっかく慣れないことを苦労してやったのに、ダメ出しばかりされて気が滅入ることもしばしば。あまりに何度も言われた片づけ方に至ってはやる気もすっかり失せ、そのせいか、いまでも整理整頓は気が進みません。
そんな教訓を生かし、家族全員が家事を楽しめるために私が心がけているのは、基本その人のやり方にお互い口出しをしないこと。
たとえば、まめぴーは「昨日お風呂をきれいにしたから、今日はしなくてもいい」と自分なりに加減を決めているようですが、目に余るほどでなければそのままにしています。
そのかわり、きれいにしてくれたときには「今日ツルッツルだったねえ~」と絶賛すると鼻高々。前よりピカピカになる率が上がってきたような気がしないでもありません!
洗濯担当の夫は就任当初、洗濯しちゃいけないものを洗ってしまったり、タオルがシワシワのままだったりすることも。それも、よほどのことでなければ「ま、そういうこともあるよね」とスルーです。
もしどうしてもそのやり方がまずかったら、アドバイスするタイミングをひと工夫。私は家族が家事をやった後ではなく、「やる前」にアドバイスするように心がけています。とくに、それは夫に対して最も気を付けていることのひとつ。
夫婦の家事シェアが進まないのは……
家事を「やらないと(妻から)怒られるけど、怒られるからやれない」と嘆く夫が多いそうです。
夫が不慣れな洗濯を四苦八苦しつつ終えたとき、「この干し方じゃダメだよ」と私にダメ出しされたとしたら……。もし逆の立場だったら、心折れちゃうかもしれません。
だから、夫が家事を終えたあとで何か落ち度を見つけても、そこは華麗にスルー。そのかわり、たとえば洗濯を干す前に「こうすると、あとで畳むとき楽になるんやで」など、次に同じ家事をやってもらう前にさりげなく声を掛けてみることに。
その方が夫も素直な気持ちで受け取ってくれるようで、私も前向きな言葉を選べます。「いつもありがとう」なんて感謝の言葉だって、付け加えやすかったりしますしね。
また、ずっと夫が続けてくれている食器洗いでも、洗い残しが気になることが続いたことがありました。
目にするたびにイラっとしましたが、きっと何か理由があるに違いないと思い直して彼にリサーチしてみると、そのとき使っていた石鹸がうまく泡立てられていなかったことが判明。
「苦手はやり方を変えてみよう」と食器用の洗剤をチェンジしたところ、洗い残しがぐんと減ったのです。
「家事には正解がない」もの。だからこそ、自分にとっての「あたりまえ」を手放してみる。
やり方を変えたり、タイミングを変えたり、使っている道具を見直したり、それだけで案外すんなりと解決することもあるのだと思います。
いくら家族といえども、思いは各自それぞれ。家事の経験値も、文化も、価値観もさまざまです。だとしたらやはり、困りごとが起こったときはイライラをぶつけたりいがみ合ったりせず、都度冷静にていねいに話し合うことだと思っています(はい、自戒を込めて!)。
次回は、そんなわが家の家族会議のリアルをお話します。お楽しみに!
〈写真・イラスト・文/美濃羽まゆみ 構成/山形恭子〉
美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。
現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYouTubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。
ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
インスタグラム:@minowa_mayumi
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