(『天然生活』2020年11月号掲載)
「部屋のあかり」について、石井佳苗さんに伺いました
「家具のなかでも照明が一番好き。使い方次第でいろいろな表情をみせてくれるのが魅力です」そう話す石井佳苗さん。
自宅リビングには部屋全体を照らす大きな天井灯はありません。その代わり、大きさも形も異なる照明があちこちに置かれ、目を楽しませてくれます。
「日本の家は“一室一灯”で、暗くなると部屋全体を一気に明るくしてしまいがち。これだと部屋が昼間のような明るさになってしまい、脳が休まりません。複数のあかりを少しずつ点灯してやさしい光をつくってあげると、心身がリラックスすると思いますよ」
照明が生み出す光も、照明そのもののデザインも、部屋の雰囲気を左右する大切な要素なのです。
「複数の照明を組み合わせることで、陰影を自分でつくれるのも楽しい。奥深い照明の世界を、積極的に楽しんでみてください」
Q あかりの見直しポイントは?
A1 昼と夜、両方の目的をかなえる照明を選ぶ
「昼間は見て楽しむものとして、夜は必要な場所を照らすもの、または陰影を楽しむものとして。あかりを選ぶときは、両方の視点をもつことが大切です」
好きなデザインを選ぶと同時に、点灯したときにどんな光になるか、実際に試したり想像したりして選ぶと、1日を通して照明というインテリアアイテムを楽しめます。
A2 太陽の動きに合わせて、点灯は順番に
室内のあちこちに配置された照明。日が少しずつ暮れ始めるのに合わせ、石井さんは先に暗くなる西側のあかりから順番に、1灯ずつ点灯していきます。
「部屋全体を一気に明るく照らすのではなく、太陽の光との調和を考えながら、夕方らしい光をつくるようにしています。夜に寝る前も、ひとつずつ順番に消灯。そのほうが、心身がリラックスしてよく眠れる気がします」
A3 心休めるソファ脇は、柔らかな光で
夕方や夜にくつろぐソファの脇にはフロアランプを置くのがおすすめ。存在感があるので、部屋の雰囲気もアップします。
「布や自然素材などのシェードのものを選んで。ふんわりと柔らかな光になるので、よりリラックスできます」
A4 デスク作業には手元を照らす局部照明を使う
パソコンを使ったり書きものをしたりといった作業の際におすすめなのは、全体をふわっと照らすのではなく、手元をしっかり照らしてくれる局部照明。
「よく見えるのはもちろん、きちんと照らすことで気持ちも作業モードに」
ワンポイントメモ
シェードで変わる適材適所の光
ひと口にあかりといっても、シェードの形状や素材によって、配光、つまり光の広がり方や見え方がまったく変わってきます。場所や目的に合わせてシェードの種類を選ぶことで、より居心地のよい部屋をつくることができます。
〈撮影/有賀 傑 取材・文/嶌 陽子〉
石井佳苗(いしい・かなえ)
インテリアスタイリストとして、多方面で活躍中。インテリアと暮らしについて学ぶオンライン講座『Heima Home Design Lesson』を開講中。著書に『Heima 住まいの感覚を磨く9つのキーワード。』(扶桑社)など。インスタグラム@kanaeishii_lc
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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インテリアスタイリスト・石井佳苗さんが伝えたい大切なこと。
家具、香り、ラグ、照明、アート……。伝えたいのは、暮らしを構成するひとつひとつを自分軸で選ぶために磨いていきたい「9」つの感覚のこと。石井さんの住まいを通し、素敵な写真共に見せていきます。
そのほか、石井さんが憧れる6人の自宅を訪れたり、対談したり。台湾とタイで出合ったインテリアも。
224ページの大ボリュームで紹介します。