• 東京・松陰神社前にあったカフェ「カフェロッタ」は、2021年9月、20年の歴史に幕を閉じました。店主の桜井かおりさんは、どんなときでも“楽しみ”を見つけるのが得意です。さて、今日はどんな“楽しみ”が見つかるでしょうか。今回は山の上ホテルへの想いについて。

    全館休館の「山の上ホテル」に想いを寄せて

    画像1: 全館休館の「山の上ホテル」に想いを寄せて

    愛してやまない山の上ホテル(東京千代田区)のことを書かずにはいられません。

    昭和29年に開業。客室数は35室でどれひとつとして同じレイアウトの部屋はないそう。

    たしかに何度か宿泊したけど部屋に案内されるたび「おぉ〜」という驚きがありました。

    同じツインルームでもクローゼットの位置が違っていたり鏡台の位置だったり、それだけでまったく雰囲気が違っていた。

    変わらないのは赤い薔薇が一輪、「おかえりなさい」と迎えてくれること。

    画像2: 全館休館の「山の上ホテル」に想いを寄せて

    好みの一室を見つけたかったな。

    そう、この記事を読んでいただける時には、山の上ホテルは建物の老朽化への対応で(2月13日より)全館休館……。

    このお知らせがあったのが確か昨年10月下旬だったと記憶していますが、その日からしばしのお別れを惜しむファンが全国からいらして部屋は満室となり、地下のコーヒーパーラーヒルトップは毎日早朝から整理券をもらうための長蛇の列。

    日々その対応に追われ本当に大変でしょうが、サービスの質を落とさずスタッフみなさんの『山の上ホテル愛』が感じられ何度も胸が熱くなりました。

    本当に素敵なホテル。

    最後に泊まったときのこと

    ラッキーなことに休館の5日前に最後の宿泊をしました。

    チェックアウトのとき、Keyと一緒にお礼の気持ちを書いたお手紙を渡しました。そして渡した本人が泣くという……ね。

    「かおりさんの好きなホテルは?」というご質問を度々いただきます。

    その度に「山の上ホテルです」と答えてきました。これからもずっと……

    出会えてよかった。

    ありがとう山の上ホテル。

    またお会いする日まで少しのお別れね。

    ーー備忘録ーー

    わたし的、山の上ホテルの好きなところはね。

    心あたたかなサービス、クラッシック&モダンな雰囲気、外観のてっぺんのジグザク、赤い絨毯の螺旋階段、階数のフォウント、部屋の書物机の足置きの傾き。

    画像: 山の上ホテル、ありがとう|カフェロッタ桜井かおりの雑記帖“楽しみは見つけるもの”

    カウンターたった9席の「Bar Non Non」のドライマティーニとバーテンダーの方の氷を削る技、パーラーヒルトップの小海老のロングマカロニグラタン、1階パティスリーの山の上ショートよりマンゴーのプリン。

    そして、近沢レースのHillTop,HillTop……とぐるりと一周ほどこされたテーブルクロス。

    最後に泊まった部屋は『No.502』。

    画像1: 最後に泊まったときのこと

    この夜をずっと忘れないよ。(まるで恋人に言うセリフね)

    「もし人が他人にあたえられる最高のものが誠意と真実であるなら ホテルがお客様にさしあげられるものもそれ以外には無いはずだとおもひます」(創業者の直筆広告コピーより)



    画像2: 最後に泊まったときのこと

    桜井かおり(さくらい・かおり)

    文筆家。大手損害保険会社のOLを経て、東京・代官山「クリスマスカンパニー」にアルバイトとして勤務。その後、系列店のテディベア専門店「CUDDLYBROWN」で店長を務める。2001年3月、東京・松陰神社前で「カフェロッタ」をオープン。心のこもった接客に、全国からお客様が足を運び、お客様から相談やお手紙をもらうことも多かったそう。「カフェロッタ」は2021年9月末に建物老朽化のため、惜しまれつつ閉店。現在は、文筆業や、買い付けなどを行う。『カフェロッタのことと、わたしのこと』『愛してやまないカフェロッタのことと、わたしのこと』(ともに旭屋出版)に続く3冊目の著書『マダム・ロッタとパリ行かない?』(旭屋出版)が好評発売中。

    インスタグラム:@kaorilotta

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