(『天然生活』2022年11月号掲載)
ストレスから距離を置く
東洋医学ではからだを動かすエネルギーや動力源である「気」という概念を重視しますが、「もっとちゃんとやらなくちゃ」と自分を追い込むことや、人と自分を比べて落ち込んだり、暗いニュースで不安になったりすることでも「気」は消耗したり、滞ったりします。
テレビも見ないし、SNSチェックもさっと短時間で。
「本当に大切な情報やニュースは、遮断していても入ってきますから」と、自分をすり減らすような情報からは、意識的に距離を置く。これも瀬戸さんが暮らしの中で気を付けているポイントです。
「かつて『生活力』と言えば、料理や洗濯、掃除など家事を完璧に行うことを指していたように思います。でもいまは、自分の暮らしの範囲内で、いかにストレスをためず、快適なやり方を見つける力を指すと私は考えます。ほどほどで十分。自身がご機嫌でいることが、何よりの養生だと思います」
手軽なストレス発散をこまめに行う
多くの患者さんと会い、メール返信や調べものに追われていると、否応なくストレスはたまります。そんなときはバラエティやドラマ、アニメなど、スマートフォンでさっと短時間で見られるもので発散を。
「頭を使うものはそれだけで気を消耗しますから、内容があまりない、考えずにすむものが理想。夜はとくに、難しい本や考えさせられる映像を見るとその後の睡眠に影響するので、控えます」
睡眠は削らない
食事や運動とともに、健康のために大切な睡眠。
「寝不足になると、疲労が回復されないだけでなく、頭の働きや免疫力、代謝力もにぶります。睡眠時間を削らないよう、なるべく夜の12時までに横になるようにしています」
安眠のためのグッズなども活用し、睡眠の質を高める工夫も。また起床時間がずれると自律神経の乱れにつながるので、休日もほとんど同じ時間に起きるようにしています。
予防のための「お守り漢方」を
「仕事は休めない」のが前提。不調は大ごとになる前に解消するのが習慣で、「怪しいな」と思ったら食養生やお灸などに加えて漢方薬も利用します。
「風邪をひきそうなときに免疫を上げるもの、忙しくてイライラしているときはストレス解消効果のあるものといった具合に、用途に合わせていくつか飲むように。体質に合わせた薬を、お守り感覚で手元に置いておくと安心です」
嗜好品は休日に選んで食べる
仕事のある日はとにかくコンディションを下げたくないので、嗜好品は休日に食べるようにしているという瀬戸さん。
「たとえば朝食をパンにすると、私は頭の働きがにぶるような感じがするので、休日に食べるように。甘いものやお菓子も好きですが、ふだんは胃腸を守るために最小限にしています」
際限なく食べてしまう可能性のあるせんべいやスナック菓子も、週末までお預けに。
頼りにしている健康の習慣
お灸でセルフケア
お灸も「未病先防(病気に発展する前に未然に防ぐ)」の手段のひとつ。
「時間がないときは、指でぐりぐりとツボを押すだけでも効果的です」
時間をかけてスープをつくる
時短料理だけでは疲れが取れないと感じる日は、辰巳芳子さんの本を参考にじっくり時間をかけスープを仕込むことも。
「五臓六腑に染み渡ります」
昼寝をして休息する
ふだんの睡眠で疲れが取れないときは、食後など仕事の合間に短時間の昼寝を。
椅子に座りながらほんの5分程度でも、体力回復を実感できるそう。
* * *
<撮影/山川修一 取材・文/田中のり子>
瀬戸佳子(せと・よしこ)
国際中医薬膳師。東京・青山の「源保堂鍼灸院」にて漢方相談を行いながら、「簡単、おいしい、体によい」をモットーに、東洋医学に基づいた食養生のアドバイス、レシピ提案を行う。雑誌やweb、セミナーなど幅広く活躍。著書『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』『季節の不調が必ずラク~になる本』『1週間で胃腸が必ずよみがえる 気血スープ』(すべて文化出版局)が好評発売中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです