旧白洲邸で開催。目と舌が喜ぶ、プレミアムな夜
立春を過ぎ、ぬるみ始めた空気や五分咲きの梅に淡い春を感じ始めた週末の夜。
佐賀県が誇る日本酒を特別な酒器でいただく、というイベント「SAGA BAR premium in 武相荘」が行われました。
今回の参加者は、おいしいものや器が好きな方、日本酒に目がない方、なかには「武相荘」の館長である牧山夫妻の姿も。
唐津焼を好んで使ったといわれる白洲正子。
正子の器への想いや、「このレストランの部分は、次郎の木工の作業場だったんですよ」など住まいとして使っていたころの思い出などを語ってくれました。
佐賀の魅力を詰め込んだ「SAGA BAR」とは?
乾杯の前に、改めて「SAGA BAR」について、主催である佐賀県庁の坂田さんから教えていただきました。
「SAGA BARは、“佐賀を味わう”をコンセプトに、佐賀酒(さがさけ)をはじめとする県産食材、唐津焼、伊万里・有田焼などの佐賀の伝統工芸品を組み合わせて、食を通じて佐賀の魅力を体験していただける企画です。全国各地で開催していますが、今回はそのプレミアムバージョン。県産食材をふんだんに使ったお料理を武相荘のシェフとのコラボでつくっていただきました」
良質な米が取れる佐賀平野を擁し、美味しい水も豊富。
江戸末期に佐賀藩藩主が財政の立て直しを含め、酒造りを奨励したことから日本酒づくりが盛んに。
いまでも歴史ある酒蔵が多く、日本酒を飲む文化が根付いているとか。
今回のイベントでは、6つの酒蔵の自慢のお酒がいただけるとのこと。
どんな味わいなのでしょうか?
日本酒の美しさ、おいしさを最大限に引き出す酒器で
乾杯のあと、佐賀が誇る日本酒が提供されます。
その日本酒を受け入れるのは佐賀の酒器。
佐賀は、400年以上前から続く、やきものの一大産地。
唐津焼、伊万里・有田焼、鍋島焼、肥前吉田焼……と発生し栄えた歴史背景も違えば、その特徴もさまざま。
人間国宝を生み出した15代も続く窯もあれば、斬新なデザインに取り組む作家もいて、皆が交流し切磋琢磨しあい、やきものの質を高め合っているとか。
佐賀のやきものに携わる人は、先人たちが残してくれた文化や歴史を学び、尊重する姿勢をもっているといいます。
そして、お酒好きが多いとも。
それゆえ、器には、お酒や料理の美しさ、おいしさを引き出す工夫が随所にみられるのです。
今回用意された酒器を拝見すると、いわゆる「おちょこ」はひとつしかなく、縦長のもの、ちょっと丸みのある大きいサイズのものも。
これは酒碗とよばれ、現代日本酒の香味に合わせて試行錯誤を重ね、作家たちによってつくられたものなのだそうです。
酒碗は、日本酒を愉しむための究極の酒器といわれ、日本酒の新時代を牽引する酒蔵のなかには、酒碗を公式酒器として採用している蔵も多いとか。
さすが、お酒好きが、お酒の美しさ、おいしさを最大限引き出すためにつくった器たち。
お酒がどんどん進みます。
日本酒×酒器×食材。真似をしたいアイデアばかり
今回、テーブルに並んだ日本酒と器、そして今宵のためにシェフが数ヶ月かけてレシピを考えたというお料理は、全部で6品。
最後にはデザートと紅茶も。
*イベント当日に提供された日本酒と料理は、下のスライドショー(8枚)でご覧いただけます。
質のよさで知られる有明海や玄界灘などの海の幸、佐賀牛をはじめ、最近注目されているエミュー(だちょうに似た大型の鳥で、味わいは牛肉のよう)や、通常の3倍の太さはあるご当地野菜、太閤ごぼうなど、料理方法も盛り付けもサプライズと美味しさにあふれたものでした。
会場も盃が進むうちにゲスト同士が打ち解け、わいわいとにぎやかに。
酒と器と食材が絡み合い、いくつもの魅力をもつ佐賀を知り、近いうち旅してみたいと思う夜でした。
家に帰ってからもプレミアムな時間を楽しむ
2時間にわたる大満足のイベント。
自宅へ帰ってからも上質な時間の続きを味わってほしいと、素敵なお土産まで用意されていました。
多くの作家が活躍する佐賀のなかでも、実力と人気を兼ね備え、なかなか作品を手に入れることが難しいともいわれる陶芸家・矢野直人さんと浜野まゆみさんが、今回のイベントのために特別に制作したという片口と酒器のセットです。
おふたりから、今回の制作の思いをうかがうことができました。
矢野直人 さん
佐賀県でつくられている器を大きく分けると、陶器といわれる唐津焼と磁器といわれる有田焼があります。
それぞれに歴史があり、影響を与え合って発展してきました。
そうした背景や関係性を知っていただくのもおもしろいと思います。
今回、僕がつくった片口は、斑唐津(まだらがらつ ※白濁した藁灰釉を使ったもの)で唐津焼の歴史でも初期に焼かれていた技法です。
斑は、お酒を入れたときの見込の景色と相性がいいと感じています。
浜野まゆみ さん
江戸時代の初めのころの伊万里焼が好きで、ときには古いやきものをお借りしてどのようにつくられているのか、どう絵付けされているのかを器と向き合いながら作陶しています。
古伊万里の絵付けには、季節の営みを大切にする思いを込めたものが多いように感じています。
今回のおちょこは、そうした古伊万里らしさを大切にしたいと思い、一度ろくろをひいてから型にあてる“型打ち成形”という方法でつくり、絵柄は初期伊万里にある草紋を描きました。
日本酒は、温度によって微妙に香りが変わるため、ボトルから片口に移し、そこから少しずつ杯を重ねると少しずつ変わる味わいが感じられます。
好きな銘柄の酒を手に入れて、ゆっくりと日本酒を楽しむ。
日常が豊かになる、夜の過ごし方です。
佐賀酒と器を楽しめる「SAGA BAR」
目や手、舌……。五感を通して器の機能美や、それに盛られる酒や料理との相性、美しさを教えてくれた「SAGA BAR」。
全国で開催されています。
近くで開催されるイベントに参加して体感するもよし、現地・佐賀に行って味わうもよし、お取り寄せをして自宅で楽しむもよし。
ぜひ、佐賀酒と器で、上質な時間を体感してください。
◆SAGA BAR
https://www.saga-bar.com/
◆SAGA BAR|佐賀酒イベント情報発信
https://www.instagram.com/sagabar_official/
◆常設店舗『SAGA BAR』(JR佐賀駅サガハツ内)
https://www.jrkbm.co.jp/sagaeki-koukashita/floor_guide/sagabar/
◆佐賀酒や酒器の公式オンラインショップ
SAGAマルシェ
https://www.rakuten.ne.jp/gold/sagamarche/
【問い合わせ先】
佐賀県 流通・貿易課 0952-25-7252
<撮影/林 紘輝 取材・文/柳澤智子(柳に風)>