• 美しさと機能性を備えた曲げわっぱ。代表的な産地である秋田県大館市の老舗メーカーを訪ねました。「栗久」の栗盛俊二さんに、曲げわっぱの選び方と使い方、日々のお手入れについて伺いました。
    (『天然生活』2024年4月号掲載)

    「栗久」に聞く、選び方・使い方と、日々のお手入れ

    画像: 栗盛さんと社員が店舗の前で。入社半年の新人から20年以上のベテランまで幅広い。「伝統工芸に携わりたかった。毎日勉強ですが、とても楽しいです」と新人さん

    栗盛さんと社員が店舗の前で。入社半年の新人から20年以上のベテランまで幅広い。「伝統工芸に携わりたかった。毎日勉強ですが、とても楽しいです」と新人さん

    一般的な曲げわっぱの弁当箱は、形や素材もさまざまです。選び方のポイントを栗盛さんに教えてもらいました。

    「初めての人でも使いやすいのが小判型です。丸型はかわいいけど、おかずを詰めるのに、ちょっとコツがいるかもしれません。鞄に収めやすいのはスリムタイプですね。素材は、杉なら調湿・抗菌効果が高く、香りもごはんの邪魔をしない。きちんと処理しているものなら、表面にヤニがにじんでくることもまずないですよ」

    構造面で注目したいのは、底の付け方とふたの厚みです。底板を本体に張り付けて接着しているもの、ふたが薄いものはなるべく避けた方がいいそう。

    画像: 「2段弁当箱の小さめサイズが欲しい」というリクエストから生まれた、小判型で入れ子式のレディースサイズ

    「2段弁当箱の小さめサイズが欲しい」というリクエストから生まれた、小判型で入れ子式のレディースサイズ

    「側板の輪に底板をはめてつくるのが本来の曲げわっぱ。外側から底板を張る方が簡単だけど耐久性に劣ります。あとふたは厚いほど余分な湿気を吸ってくれるのでごはんが傷みにくいです」

    せっかく曲げわっぱの弁当箱を使うなら、木のよさを享受できる無塗装の白木タイプを選びたいもの。でも白木は黒ずみが出やすいなど、扱いが難しいイメージがあります。

    画像: 上段が下段に収まりコンパクトに収納できるつくり

    上段が下段に収まりコンパクトに収納できるつくり

    「黒ずみの原因は木に残った水分です。弁当箱を洗ったあと、熱湯を本体とふたにかけて湯切りをしてください。これで木の中の水分が飛んで速乾できます。それから間違っても伏せて干さないこと。湯切りをして内側を上に向けて干せば、中までしっかり乾きます」

    画像: 定番モデルの小判型・小。丹念にやすりで磨いた、なめらかな手触りも「栗久」の持ち味

    定番モデルの小判型・小。丹念にやすりで磨いた、なめらかな手触りも「栗久」の持ち味

    それでも黒ずみや傷など不具合が出てしまったときは、メーカーに修理の相談を。栗久では自社製品の修理を送料の負担だけで受け付けています。

    画像: 底板をはめて接着した状態(右)から、余分な部分を削って仕上げる(左)。側面と底板にすき間が生まれず、高い耐久性を持つ。本体と底が一体になったさまも美しい

    底板をはめて接着した状態(右)から、余分な部分を削って仕上げる(左)。側面と底板にすき間が生まれず、高い耐久性を持つ。本体と底が一体になったさまも美しい

    「直したいということは、使いつづけたいから。その思いに応じるのはつくり手として当然です。基本的な手入れをしてもらえれば、10年でも20年でも使えるのが曲げわっぱのよさ。長く愛用してほしいですね」

    曲げわっぱ弁当箱の日々のお手入れ

     汚れを洗い落とす

    ごはんのこびりつきは熱めのお湯を入れて5分ほどふやかし、スポンジか布で洗う。冷たい水はでんぷん質が溶けにくいのでつけおきに使わないこと。おかずの油分がついている場合は、薄めた洗剤や石けんをスポンジか布につけ、木目に沿ってやさしく擦るときれいになる。

     しっかりと、すすぐ

    よくすすいで汚れと洗剤を洗い流す。できればお湯を使うとよい。

     熱湯をかける

    沸騰したお湯を弁当箱とふたの内側にかけ、3分ほどおいてお湯を捨てる。この湯切りで、木に染み込んだ水が高温になり水蒸気となって放出されやすくなる。

     水けをふきとる

    ふきんで曲げわっぱの内側と外側をよくふいて水けをとる。水けが残りやすい内側の隅は念入りにふく。

     上向きに干す

    本体とふたの内側を上に向けて2~3時間干す。「栗久」の弁当箱は外側が防水コーティングされているため、キッチン台などに直置きしても大丈夫。

    取材のおまけ

    画像: 栗盛さんの奥さまがご馳走してくれた秋田名物のきりたんぽ鍋で、心もおなかも満たされた取材陣。円錐型の椀は、持ちやすくモダンな「栗久」のもの

    栗盛さんの奥さまがご馳走してくれた秋田名物のきりたんぽ鍋で、心もおなかも満たされた取材陣。円錐型の椀は、持ちやすくモダンな「栗久」のもの

    覚えておきたいQ&A

    Q 木目が細かいものを選ぶといいのですか?

    A 細かすぎるものは避けて。

    木目で黒く見えるのが冬に育った冬目、白く見えるのが夏目です。木目が細かすぎる木は夏目が少なく、やや吸水面で劣ります。3~5mmくらいの幅が最適です。

    Q 使い始めにやることはありますか?

    A 木に水分を与えてください。

    新品は木が乾ききった状態。使い始めの3回くらいは、ごはんを入れる前に内側を水でぬらして水けをきってから使うと、ごはんがくっつきにくいです。

    Q 色移りが気になります。気をつけたい食べ物は?

    A 着色された紅しょうがなど。

    着色料で染めた食品の色が移ると落ちにくいです。梅干しは色移りしても徐々に落ちますが、気になる人はラップやクッキングシートを上にかぶせましょう。

    Q 弁当箱についたにおいは取ることができますか?

    A 熱湯と緑茶を使う方法も。

    弁当箱に熱湯を入れて15分くらいおいて湯を捨てます。次に緑茶を入れて20~30分おいて捨てます。これを2度繰り返すと、においがだいぶ和らぐと思います。

    Q 電子レンジを使ってもいいですか?

    A 避けてください。

    弁当箱は板材が薄く、レンジの電磁波で木に狂いが生じることも。また、レンジで温めるとごはんに杉の香りが強くつきやすいです。使わない方がいいでしょう。

    栗久(くりきゅう)
    秋田県大館市中町38番地
    電話:0186-42-0514
    https://www.kurikyu.jp/

    ※ 「秋田・大館「栗久」の曲げわっぱ。お弁当箱ができるまで」は『天然生活』2024年4月号、P.44~49に掲載されています。



    <撮影/山田耕司 取材・文/熊坂麻美>

    栗盛俊二(くりもり・しゅんじ)
    昭和23年大館市生まれ、伝統工芸士。世界初の円錐型の曲げわっぱなど、木に関する豊富な知識とアイデアをもとにした製品で数々のグッドデザイン賞を受賞。海外も含めて積極的に各地へ赴いて展示や実演を行い、現地の声を聞いて製品づくりに生かしている。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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    天然生活オンラインショップでは、「栗久」のお弁当箱を販売中です。秋田杉の曲げわっぱで、おひつごはんのような味わいをお楽しみください。

    画像1: 大館・栗久の栗盛俊二さんに聞く「曲げわっぱ」の選び方・使い方と、日々のお手入れ

    「栗久」×「天然生活」 秋田杉の曲げわっぱで、おひつごはんのような味わいを
    秋田・大館「栗久」の曲げわっぱ 小判型弁当箱(小)

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    画像2: 大館・栗久の栗盛俊二さんに聞く「曲げわっぱ」の選び方・使い方と、日々のお手入れ



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