59歳になり、「白い髪」になりました
59歳になりました。この連載のタイトル「60歳までどうなりたいですか」の60歳まで、あと1年です。
「こうしていこう」。そう思うことはいくつかありますが、その中でできていることもあれば、できていないことももちろんあります。ひとつできたことを挙げるとしたら「白い髪になりました」。
57歳でカラーをやめて、本来の髪色を目指して動き出す
カラーを止めることにしたのは、2年前、57歳になった時のことです。白い髪が気になる周期が、短くなったこと。カラー剤が頭皮に合わないこと。わたしを含めどうして白い髪になんとなく抵抗を持ってしまうのか、ということ(検証中)。その3つから「自分本来の髪にしよう」と決めたのです。
髪色を白くしていく中で、気が重いのはその過程です。「白い髪に抵抗がある」と書きましたが、わたしに関して言えば、髪色が白くなるより、途中の中途半端な状態が憂鬱になるのが分かっていました。ショートカットでも、白い髪にするには1年はかかります。いま思うと1年はあっという間ですが「今日から1年かかります」と言われると躊躇してしまいます。いままでカラーをしていた髪色と本来の髪色の2色になった自分を想像してみる。「もう少し先にしよう」。そう思う方も多いのではないでしょうか。
白い髪がすてきな俳優さんもいます。でも、わたしたちが目にするのは、白い髪になったときの姿。途中は、わかりません。「どんな風にすごされていたのだろう」と想像します。「うーん」となられなかったかな? 途中でカラーを再開しようと思わなかったかな? 思いをめぐらせます。
気持ちよく白い髪になるために、髪を伸ばすことに決めた
もし、気持ちよく自分本来の髪色にしていく方法があるとしたら、カラーを止めたい(休みたい)と思う人もいるはずです。
白い髪にするとき決めたことがあります。同時に髪を伸ばすことです。白い髪がある程度伸びてきた時点で切り揃えるのが、最も早くすっきりする方法ですが、それ以外にもやり方はあるはずです。その「それ以外」を試してみたかったのです。
選択や方法がいくつかあれば、自分に合うやり方が選べます。「カラーを止めよう」とこころを決めるきっかけになるかもしれません。何よりわたし自身が、時間をかけ、白い髪にしていくのです。見ている方、迷っている方の参考に少しでもなれば、という思いがありました。
わたしがいくつか大切にしていることに「その中に楽しさや意味を見い出す」というものがあります。白い髪にすることもそれと同じ。「白い髪が増えてきた」と捉えるより「白い髪が新鮮」と言葉を置き換えると、未来が広がります。
自分がどうすれば快くいられるか、どう考えれば気持ちがかろやかでいられるか。立場や状況は、人それぞれですが、できないことや課題があったとしても、言葉や気持ちを切り換えることはできます。
かつての自分や自分以外の何かと比較するより、ここにいる自分を大切にし、手をかけられる時はかけ、気を配れるところは配り、思い出した時に背すじを伸ばす──。そんな風に日々を重ねていけたらいいですね。
白い髪になり思うのは「白い髪は、未来の自分と仲よくすること」。新しい髪色のわたしは、これからのわたしとつがっています。
60歳のメモ
1 カラーをつづけることについて考えてみる
2 白い髪、本来の髪色について思いをめぐらす
3 自分のすきなところを挙げてみる
4 これからなりたい自分を想像してみる
5 思いうかんだものを試してみる
カット・スタイリング/撮影 インスタグラム:@magemori(SHI/GE)
広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)
エッセイスト、設計事務所岡昇平共同代表、other: 代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、香川を経て、2023年から再び東京在住。現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)他多数。インスタグラム:@yukohirose19
イベント情報
2024年5月19日(日)
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香川県三木町サイトウコーヒー店内
12:30開場/13:00スタート
参加費:¥2500+1ドリンク
ご予約:Instagram@saitocoffeeのDM、またはsaitocoffee.soramame@gmail.comまで