(『天然生活』2021年6月号掲載)
整理を通じて暮らしをアップデート
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
「30分以上は整理整頓に時間をかけない」。これが、石黒智子さんが決めていることです。
「30分以上時間があったら、読書や庭仕事など、自分の楽しみや周りの人のために使います。整理をするのは、来訪予定の人から遅れると電話があったときや、仕事が予定より早くすんだとき。ふと10〜15分ほど時間が空いたときに、引き出しをひとつ、箱をひとつ整理します。そうやっていくと、1年で家じゅうの引き出しや箱を一巡できるのであわてなくても大丈夫。冷蔵庫や食品ストックは、もう少しこまめに整理しますね」
無理せず、少しずつ。石黒さんがそうやって整理整頓に向き合うのにはもうひとつ理由があります。
「整理整頓は目的ではなく、より効率よく、楽に暮らすための準備です。整理しながら、もっと使いやすくできないかを考える。足りないものを補充したり、傷んできたものをメンテナンスしたり。それ以外にも、不要なものをまったく別のことに使ったり、若い世代に譲ったりすることも。私にとって整理整頓は、そうした新しいアイデアを生み出し、形にするための作業。だから少しずつ、考えながら整理することが大切なんです」
そんな石黒さんの整理整頓法から生まれた暮らしの工夫は数知れず。去年からマスクが必需品となったので、使い切ったあとの糸巻きをマスク掛けのフックに。
欠けてしまった器は捨てるのがもったいなく、結局は小さく割ってヤスリをかけて箸置きにしました。
冷蔵庫のドアポケット
冷蔵庫のドアポケットをひとつだけ → 常に使いやすく清潔に
中のものが頻繁に変わる冷蔵庫は比較的こまめに整理。ドアポケットをひとつだけ取り外し、中身を出して整理します。
「より使いやすいように配置を変えたり、賞味期限のチェックをしたり。ポケットも気づかないうちに汚れているので洗ってきれいに。ポケットひとつだけと決めれば楽です」
キッチンカウンターのカゴ
乾物を使うタイミングで不足分を書き出し → 買い忘れがなくなる
キッチンカウンターの下段のかごに入れているパスタやビーフンなどの乾物。使う際にかごごと取り出して中身を整理し、足りないものがあれば冷蔵庫に貼ってある買い物メモに書き出します。
「これを見て、夫婦どちらかが外出のついでに購入。買ったらメモに線を引いてリストから削除します」
食卓の引き出し
食卓の引き出しに万能用紙をキープする → いざというときに大活躍
食卓の引き出しに入れている、素材も大きさもさまざまな紙は足りなくなったら補充。
「お店で買い物をしたときにもらう薄い紙は、人に何かを譲る際の包み紙に。古い植物図鑑のページは、人に植物の種をあげるときの袋にします。キッチンペーパーは、床ふき掃除するときのフローリングシートに」
<撮影/杉能信介 取材・文/嶌 陽子>
石黒智子(いしぐろ・ともこ)
雑誌や書籍を通じて暮らしの工夫や家事のアイデア、道具の選び方などを独自の視点で発信。日用品のプロデュースにも携わる。著書に『60代 シンプル・シックな暮らし方』(SBクリエイティブ)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです