気分を上げる「お気に入りのもの」を飾っている
自分の部屋や家が好きな人というのは、家を訪問すると、よくルームツアーをしてくれます。
大抵は部屋にひとつは、インパクトのあるもの、魅力的なものがあって、「これ、なに?」と聞くと、本当に嬉しそうに説明するのです。
「その食器棚はね、祖母の70年前の嫁入り道具なのよ」
「その油絵は、作家の個展で、キュンと一目惚れして買ったんだ」
「このモンステラの木、南国の雰囲気があって昔から大好きでね......」
というように、なにかしら思い入れのある品で、その場の雰囲気を盛り上げてくれている。部屋や家に愛情をもっていて、そこで過ごす時間を楽しんでいることが感じられて、こちらまで嬉しくなってきます。
感性は、「お気に入りのものを置きたい」という純粋な気持ちから生まれ、養われてくると感じるのです。アートやオブジェをひとつ置くと、部屋の魅力が一気に上がります。
海外の友人では、クラシックギターやウクレレなど楽器をオブジェのように並べている人、家族や親族の写真をあえてモノクロにして部屋の一角に飾っている人、壁一面ありそうな自作の書を部屋の主役にしている人が印象的でした。
インパクトのあるものの存在は空間が引き締まるだけでなく、生活感をかき消す役目も担ってくれます。
ソファにお気に入りのブランケットをかけたり、棚にアートブックを飾るだけでも雰囲気がグレードアップします。
ある友人は、祖父母の遺した大好きな着物や帯を、暖簾やテーブルランナーにリメイク。それを飾るために、ほかの家具や置物をシンプルにして、品格のある空間をつくり出しています。
まさに、「好き」はセンスの母だと感じるのです。
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不安定な時代に信じられるのは自分だけのセンス
センスという、感覚的であり、つい惹かれてしまう言葉。いったいセンスってなんなのか……? 本書では50種類の仕事、約50カ国を旅してきたなかで著者が「センスいいな」と思った魅力的な人のこと、感性を磨くためにやってきたことから、センスについて考えていきます。日々の生活でマネすることのできること満載なので、1日1個からでも習慣にしてみてください。今までにない不安や悩みを抱えながらも、しあわせに生きていくために。これからの時代に必要になるのが、自分だけのセンスなのかもしれません。
<イラスト/庄野紘子>
有川真由美(ありかわ・まゆみ)
作家、写真家。鹿児島県姶良市出身。台湾国立高雄第一科技大学応用日本語学科修士課程修了。化粧品会社事務、塾講師、衣料品店店長、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、フリー情報誌編集者など、多くの職業経験を生かして、働く女性のアドバイザー的存在として書籍や雑誌などで執筆。46カ国を旅し、旅エッセイも手がける。著書に『一緒にいると楽しい人、疲れる人』(PHP研究所)、『いつも機嫌がいい人の小さな習慣 仕事も人間関係もうまくいく88のヒント』(毎日新聞出版)、『「気にしない」女はすべてうまくいく』(秀和システム)など多数。