1
のやまに はるが きました。
ねずみの けいたは、うれしくて なりません。
「さあ おもいっきり あそぼうよ。」
ともだちの ぴぴこを さそって ボールあそびを はじめました。
ところが けいたが ちからいっぱい けったボールは
びゅーん
2
みんなで ボールを さがしていると、
「やあ あんなところに あった。」
けいたが ふもとの いえを ゆびさしました。
「ぼく とってくるよ。」
「まって いっしょに いく。」ぴぴこが あとを おいかけました。
3
あたりは しーんとして しずかです。
「だいじょうぶ だれも いないよ。」
けいたが さきに あがりました。
ボールを とろうとして けいたは「あっ」とおどろきました。
「ぴぴこちゃん はやく はやく きてごらん。」
4
しょうじの すきまから にひきは
へやの なかに はいりました。
「おにんぎょうだわ。なんて きれいなんでしょう。」
「それに おいしそうな ごちそうも あるらしいね。」
けいたは はなを ひくひく させました。
「かいだんを のぼって いって みましょうか。」
ぴぴこが いうので にひきは ボールを したに おいて のぼりはじめました。
5
いちばん うえの だんまで くると けいたは
そこに いる にんぎょうに こえを かけました。
「こんにちは。ここで なにか たのしいことが はじまるんですか?」
すると すました かおの にんぎょうたちは
びっくりして いいました。
「わたしたちは おひなさまよ。ひなまつりを しらないの?」
「ひなまつり?」
「おんなのこの しあわせを ねがう 3がつ3かの おまつりよ。」「まあ すてき。わたしも おんなのこよ。おまつりに いれて くださいな。」
ぴぴこは うれしくなって いいました。
6
さっそく ひなまつりの なかまいりです。
けいたと ぴぴこは おひなさまが めずらしくて、だんを のぼったり おりたりして ながめました。
そのうち ごちそうの いいにおいに がまんが できなく なりました。
「この おもち おいしそうね。」
「おなかも すいてきたしね。」
「では ちょっとだけ。」
「いただきます。」
にひきが てを のばした ちょうど そのとき
7
「キャー」
「にげろ!」
けいたと ぴぴこは いちもくさんに にげだしました。
8
「ああ ざんねん。ごちそうを たべそこなったばかりか ボールまで おいてきちゃった。」けいたは しょんぼり。
「げんきを だして。」ぴぴこは なぐさめました。でも、ぴぴこも やっぱり きれいな おひなさまを もっと みて いたかったと おもいました。
「ねぇ ひなまつり わたしたちで できないかしら?」
「それは おもしろい。ぼくたちで ひなまつりの よういを して みんなを よんで あげよう。」
にひきは かおを みあわせて うふふっ とわらいました。
9
3がつ3かは もう すぐです。みんなに ないしょで ぴぴこの いえで よういを しました。
「てんじょうに つっかえるから、3だんで おしまい。」
ごちそうは しろと ももいろの おもちを いっぱい。きのみの あられと くだもの。それに けいたの とっておきの おさけ。
10
「ふん ふん。だんだん ひなまつりらしく なってきたね。」
「でも あれ? おひなさまは どうするの?」
「あっ そうか。ぼく ごちそうの ことばかり かんがえていて おひなさまのことは わすれてたよ。」
けいたと ぴぴこは がっかり。
しばらくして けいたが
「おひなさまは ここに いるよ。」と ぴぴこを ゆびさしました。
「まあ うれしい。わたし おひなさまに なりたかったの。」
ぴぴこは とびあがって いいました。
11
3がつ3かに なりました。ぴぴこの いえの まえは わいわい がやがや にぎやかです。
「てがみが きたのよ。3がつ3かの3じに きてくださいって。」
「あれ きみにも?」
「3がつ3かって なにか あったっけ?」
「こんにちは。ぴぴこちゃん はいってもいいですか?」
すると なかから「どうぞ。」と こえが しました。
12
「あっ!」
とびらを あけて みんなは びっくり。
あかい だんの うえの けいたと ぴぴこを みあげて なにも いえません。
すましがおの にひきは ふきだしそうに なりました。
ところが
13
けいたと ぴぴこは ボールを とりに はいった いえで ひなまつりを みてきたことを みんなに はなしました。
けいたと ぴぴこの おもいつきに みんなは おおよろこび。
14
よるも ふけて ひなまつりが おわりました。
「さようなら たのしかった」
「また らいねんも ひなまつりを しようね。」
「このつぎは わたしも おひなさまに なりたいな。」
「それなら おひなさまを もっと ふやせば いいね。」
みんなは くちぐちに いいながら かえって いきました。
Copyright © MARIKO MACHIDA ※本記事の無断転載、使用を禁じます
* * *
* * *
まちだファミリー
母・万里子さんは元小学校教師。長男の穂高さん、長女のはる香さんの育児中は専業主婦になり、手づくり絵本を通じて地域活動に励んだのち、教師に仕事復帰(現在は病気療養中)。父・弘さんは元高校教師で化学を教えていた。2016年より「ヒロシとマリコの手づくり絵本展」を開催し、縁のある場所を巡回している。インスタグラム:@mahiro_publishing
※まちだファミリーの「日常を愛で紡ぐ、小さな幸せの物語」は、『天然生活』2024年9月号、P.26~23に掲載されています。