(『天然生活』2021年9月号掲載)
心が伝わる「手紙」の書き方
メールやテレビ電話が気軽にできるいま。一方で、何度も読み返すほどうれしくなる手紙を受け取ったことはありませんか。
「手紙をもらうとうれしく感じるのは、手で書くという行為に『相手が自分のために時間を使ってくれている』という気持ちが感じられるから。紙や文字を通じてその人らしさを感じるからこそ、何度でも読み返したくなるのです」。そう話してくれたのは、マナーデザイナーの岩下宣子さん。
「手紙というとハードルが高いと感じる人もいるかもしれませんが、そもそもマナーとは、相手と自分との気持ちを入れ替えて考えてみること。こんなことを書いたら相手はどんな気持ちになるのかな、と想像してみてください。書き出すきっかけも、イベントやニュースだけとは限りません。しばらく会っていないなと思ったら、『○○ちゃん(さん)、ごぶさたしていますが、どうしていますか。私は元気にしています。早く会いたいね』と、そんなことでいいのです。そこにいる相手に話しかけるように、思ったことをそのまま書いてみましょう。今の時代、だれかが自分のことを思ってくれているとわかるだけで、うれしいものです。一通の手紙が元気や生きる喜びに変わることもあるのだと思います」
01_ていねいに書く
心が映し出される文字は、美しさや流暢な表現にこだわるよりも、まずは「ていねいさ」を心がけたいもの。
字に自信がなくても、相手を思ってていねいに書けば、その人の味わいとして気持ちがきちんと伝わります。家族間でも最低限のマナーとして、赤の筆記具は避けましょう。
また、封かんにセロハンテープを使うと雑な印象を与えてしまうので注意。
02_相手に寄り添って
文面に、「先日話していた風邪のお加減はいかがですか」とあれば、覚えていてくれたことにうれしくなります。
その人を思うからこそ出てくる言葉があると、気持ちがさらに伝わります。
相手の好きなものはなにか想像し、思いをめぐらせてみましょう。
目が見づらくなってきた相手には、濃く大きな文字で書くだけでも、寄り添う気持ちにつながります。
03_ちょっとしたおまけを
手紙の中におまけを忍ばせると、小さなギフトを受け取ったようなうれしい気持ちに。
家族やペットの写真、本好きの人ならしおり、忙しそうな人には入浴剤など、相手を思って選んだものをプラスしましょう。
ほのかな香りを届ける「文香」も、粋なおまけとしておすすめです。大型の文房具店や、和小物の雑貨店などで見つかります。
04_心の言葉を使う
自分がいわれて心が温まる言葉、それが「心の言葉」です。
とくに家族間では、相手を心配するあまり「結婚はまだですか」「就職は決まりましたか」など、本人が気にしていることを書いてしまう場合も。
何度も読み返せる手紙だからこそ、読んでうれしくなる言葉を。
ふだんはいいづらい「大切に思っています」という思いを素直に伝えるのもいいですね。
05_まずはカードから
手軽に送れるハガキもいいですが、封を切るときのわくわく感や特別感も手紙の醍醐味です。
書き慣れないという人は、まずはカードを選んでみてください。
手紙のようなルールもないうえ、季節の花や美しい景色、イラストなど、相手やシーンに合わせてデザインを選ぶ楽しみも広がります。
スペースも限られているので、気負わず気軽に筆をとれます。
<監修/岩下宣子 イラスト/まちょ>
岩下宣子(いわした・のりこ)
現代礼法研究所代表、マナーデザイナー。「マナーは愛(思いやり、大切にするこころ)」を原点とし、多くの企業や学校などでマナーに関する研修や講演、各種メディアでの活動を行う。著書は『図解 社会人の基本 マナー大全』(講談社)など多数。http://www.gendai-reihou.com/profile.htm
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです