• 簡単なのに、体にじんわりしみ入るおいしさ。食材の組み合わせにハッとする、新鮮な味わい。7月に発売した初のパーソナルブック『長谷川あかり DAILY RECIPE Vol.1』(扶桑社)も好評の人気料理家・長谷川あかりさん。日々の料理次々に生み出されるレシピの秘密そこに込める思いを語っていただきました。

    “手軽さ”と“レシピの新鮮さ”が若い女性を中心に大人気

    長谷川さんが生み出すレシピの特徴のひとつは、調理時間が短いこと。

    さらに素材も少なめで、特別な道具も必要なく、それでいて新鮮なおいしさに出合えるのが人気の理由です。

    料理ができない日があっても、自分を責める必要はないと思っています

    「みなさん、仕事に家事にとても忙しい日々を送っていらっしゃると思うんです。そんな毎日の中、長く台所に立つのはやはり大変。でも……“家のごはん”でしか満たされたいものも確かにあると思うんですね。肩の力が抜けて、ホッとできる食事という意味で。そんなときに、『これならつくれそう』と思っていただけるものをお伝えしたいな、というのがいつも頭にあります」

    画像: 料理ができない日があっても、自分を責める必要はないと思っています

    私を助けてくれるのは、とりあえずの「酒蒸し」

    余裕がないときのごはんづくりに悩むのは、長谷川さんも同じ。

    また、そんなときには何を食べたいのかすらわからなくなることも多いのです。

    「お腹は空いているのに何を食べたいかがわからないとき、私は調理法から“自分の食べたいもの”を引き寄せることも多いです。料理をする気分になれないときって、たいてい疲れていてそんなにこってりしたものを食べたいとは思わないんですよね。だから、とりあえず“酒蒸し”」

    画像: 鯖と大根の酒蒸し(長谷川あかりさんのInstagramより)

    鯖と大根の酒蒸し(長谷川あかりさんのInstagramより)

    「肉や魚、そして野菜。それらを、お酒と一緒にシンプルに蒸す。“蒸す”ってすごくありがたくて、集中力がなくてもできるんですね。炒めるとか焼くって、台所に立つ時間自体は短くても、コンロの前につきっきりでないとおいしくつくれない。それに比べて酒蒸しなら、ちょっとぼんやりしていても大丈夫。味わいもやさしいですしね。だんだん元気と食欲が湧いてきたら、ごはんがすすむような濃い味のタレをつくって添えてもいいし、しょうがをすりおろしたり、ねぎを刻んだり、プラスアルファで風味や栄養を足していけばいい」

    画像: 甘塩鮭と小松菜のおかか蒸しのっけごはん(長谷川あかりさんのInstagramより)

    甘塩鮭と小松菜のおかか蒸しのっけごはん(長谷川あかりさんのInstagramより)

    「酒蒸しって簡単な上に、どんな気持ちにも対応できるのがすごく助かるんです。料理酒を使えば和風になるし、ワインを使えば洋風になる。紹興酒を使えば、それだけで本格っぽい中華風です。オリーブオイルやごま油など、オイルとの組み合わせで、それこそバリエーションはどんどん広がります

    日々の栄養は、気軽に考えています

    管理栄養士の資格を持つ長谷川さん。日々の食事に関しても、やはり細やかに気づかっているのでしょうか。

    「みなさんが想像するより、ずっと適当だと思います(笑)。お手本とされているような食生活は、頭では理解していても、現実にはなかなか難しいですね。個人的には、もっとおおらかでもいいのでは?と思っています。一食二食、偏ったものを食べてもすぐ体調に影響が出るわけではないし、逆にいえば、栄養バランス100点の食事を数回したからといっていきなり健康になるわけでもなくて。食事ってお薬ではないから、良くも悪くも結果が出るのに長い時間がかかります。ほどほどの、70点くらいのところを続けていくのがムリのない範囲だし、長く続けることこそが、健康という結果につながるのではないでしょうか」

    画像: 日々の栄養は、気軽に考えています

    「わかりやすい割合をお伝えするなら、炭水化物1:タンパク質1:野菜3といったところを意識するだけでいいと思っています。野菜もあれこれ揃えるのは大変なので、同じものが続いたっていい。旬が変われば自然にスーパーに並ぶものも変わりますから、なんとなく顔ぶれは変わっていくと思うんですね。私は、余り野菜をまとめてお味噌汁に入れることも多いです。いろいろな栄養素がとれる上、冷蔵庫の整理にもなりますし。時間がないときのおすすめは、炊き込みごはん。タンパク質も野菜も一緒に炊き込めば、1品で栄養バランスもとれますから、本当に助かります」

    画像: 酒蒸し豚汁とおにぎり(長谷川あかりさんのInstagramより)

    酒蒸し豚汁とおにぎり(長谷川あかりさんのInstagramより)

    ときには「おいしい」がいちばんじゃなくても

    料理で大切な要素のひとつは、もちろんおいしさ。でも、自身がレシピをつくる場合、そこだけにとらわれてはいないと長谷川さんはいいます。

    「手を尽くして、とびきりおいしいものをつくるのはもちろんとても素敵なこと。私も時間があるときや、『今日は思い切り料理したい!』とワクワクするときは、そんなレシピと向き合うのが楽しみです。ただ、私が発信するなら……みなさんに喜んでもらえるのはどんなレシピだろう?と考えると、それとは少し違うところに答えがあるように思っているんですね」

    画像: ときには「おいしい」がいちばんじゃなくても

    「たとえば具だくさんの炒めものの場合、おいしさだけのことを考えれば具材に合わせて1種類ずつ炒めて取り出した方がよりベストの火の通り加減にできるとは思います。とはいえ、その工程を入れることで料理そのものが面倒になってしまうのなら、私のレシピに関してはそこは省略してもいいのかな?と。フライパンで具材をひとつずつ炒めて取り出すことはできないけれど、ちょっと端に寄せて空いたところで肉を炒めるくらいなら頑張れる人もいるかもしれない。あるいは、野菜に火を入れるのは面倒だけれど、そのまま使える大葉や青ねぎでもいいとなれば、やる気になってくれるかもしれない。ひとつでも多く、『これなら今日、つくれそう』……そんなふうに思っていただけるレシピをお伝えできたらいいな、と思っています」

    『長谷川あかり DAILY RECIPE Vol.1』(長谷川あかり・著/扶桑社・刊)

    画像: 長谷川あかりさんに聞く「レシピの発想」の秘密。 家庭でも役立つ調理法・栄養・おいしさの組み立てのヒント

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    〈撮影/山川修一 取材・文/福山雅美〉

    長谷川あかり(はせがわ・あかり)
    料理家、管理栄養士。埼玉県生まれ。10歳から20歳まで子役・タレントとして活動、NHK『天才てれびくん』はじめ、さまざまな番組に出演する。大学で栄養学を学んだ後、SNSで始めたレシピ投稿が注目を集め、瞬く間に大反響となり人気アカウントに。雑誌、Web、テレビなどで幅広くレシピ開発を行う。著書に『つくりたくなる日々レシピ』(扶桑社刊)、『クタクタな心と体をおいしく満たす いたわりごはん』『いたわりごはん2 今夜も食べたいおつかれさまレシピ帖』(ともにKADOKAWA 刊)、『材料2つとすこしの調味料で一生モノのシンプルレシピ』(飛鳥新社刊)がある。
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