(『天然生活』2022年9月号掲載)
古家具のよさを生かし、ほどほどに心地よく収納する
目立つ仕切りはなく、いうなれば家自体が、ワンフロアの大きな箱。そこにさまざまなサイズの箱をパズルのように置き、重ね、暮らしている感覚です。
「箱が好きなんです。あらためて見ると、家の中は四角いものばかり。なんでだろう? デッドスペースがない感じとか、重ねられる利便性とか……きっと、どこかカチッとした感覚が好きなんですね」
空間の中心には、大きなテーブル(的なもの)がふたつ。年季の入ったこちらも、実は収納を兼ねています。しかも、かなり重要な。
「両方とも、日本の古いものです。元は家庭用ではなく、工場の作業台だったものですね。だから、かなり収納力のある引き出しや棚がついています。わが家の食器棚であり、文房具入れでもあり、ドレッサー的な役割もしています」
キッチン収納は、古い水屋だんすや小引き出しをいくつも組み合わせて。大小さまざまな箱が、この空間を構成しているのです。
ほどほどに整える
古家具と上手に付き合う
使い込んだ風合いで空間になじむ古家具。自分の暮らしに合わせた置き場所を考え、出しやすく戻しやすい収納システムが完成しました。
作業台を調理台&収納に
シンクとコンロの近くに大きな作業台を置けば、調理もストレスなし。
「クルッと振り向くだけで、たいていのことが済ませられます。シンク側は引き戸と引き出しがついた収納になっているので、本当に便利です」
台をつくり収納力をアップ
作業台の中は奥行きのある収納スペース。
中にコの字の台を入れ、高低差をつけて取り出しやすく収納力もアップ。デッドスペースを生まない工夫。
テーブルの引き出しの中身は動線に合わせて
テーブルの引き出しの中身
食卓として使うのも古い作業台。
「食卓には低かったので、脚を足しました。手間をかけてでも、使いたい魅力があったんです」
「朝は家族が洗面台を使うので、身支度はここで。メイク→アクセサリーの順です」
本棚にした棚はガラス戸を外して
ガラス戸がはまっていた棚は、子どもが出し入れしやすいよう戸を外した。
「それだけで、子どもが自分から『読んで』と本を持ってくるように」
古い和家具は、下は目隠し、上はガラス戸で使いやすい。
「小さい家具は高い位置にのせると収納としての力を発揮します」
<撮影/山川修一 取材・文/福山雅美>
引田舞(ひきた・まい)
アパレルのプレスアシスタント、ラジオの構成作家などを経て、現在は夫の鈴木善雄さんとともに、ショップの内装デザインやディレクションを行うユニット「CIRCUS」を主宰。フードスタイリングや古道具の卸など、空間演出のすべてに携わる、東京・新木場の複合スペース「CASICA」のディレクションを担当したことでも知られる。夫、子ども2人との4人暮らし。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです