(『天然生活』2022年5月号掲載)
座禅を通して感じ取れるものがある
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
藤井さん自身の朝の時間のなかには、お経を唱える日課はあるものの、座禅の習慣はありません。
「禅修行をしていない私は、座禅も体験程度のものしかしたことがないんです。だから、無の境地というところまではとても到達できません。それでも、夜明けどきなどにじっと座禅をしていると、鳥のさえずりが聴こえてくるようなことがあります。最近では、お寺に座禅体験をしに行く人も多いと聞きますが、正しい座禅の仕方を身につけ、日常のなかに取り入れていくというのは、とてもよい習慣だろうと思います」
コロナ禍によって社会も暮らしも大きく変化したいま、藤井さんの教室には、新たな参加者が訪れるようになったそう。
だれしもの日常にある食という行為を通して、自らの心身と向き合い直す気運が高まっているのかもしれません。
「最近うれしかったのは、私と同世代の女性の話。育ち盛りの孫の食事づくりを5年間がんばってきたすごい方ですが、お肉たっぷりの孫向きの食事に自分も夫も疲れてしまい、精進料理を学びにきました。」
「それを1年半続け、運動も心がけていたら、夫婦ともに、悪かった血液検査の数値が改善したのだそうです。ある程度の年齢になってからでも、心身を整えていけるのは素晴らしいことですし、私にとっても喜びです」
禅に学ぶ、朝と食の習慣
体に合わせた無理のない過ごし方
年齢とともに変化する体に、負荷をかけすぎずに生活している藤井さん。朝の過ごし方にも小さな変化が。
階段はひと息つきながら
朝の散歩の締めくくりは、路地から自宅まで100段ほどの上り階段。
「若いころのように一気には上れなくなってきたので、途中でひと息つきながら、ゆっくり歩きます。家に着くころには、冬でも背中にうっすら汗をかいて、手足が温かくなっていますよ。一日一度は必ず、この階段を上り下りすることを心がけています」
夜に向け、下ごしらえを
体力のある朝のうちに、家事や仕事のあれこれを済ませる。たとえばふろふき大根の大根を先に煮ておくなど、夕食の下ごしらえも。
「原稿書きなどのデスクワークも、なるべく元気な午前中にします」
<料理/藤井まり 撮影/山田耕司 構成・文/保田さえ子>
藤井まり(ふじい・まり)
精進料理教室「鎌倉不識庵(ふしきあん)」主宰。夫である故・藤井宗哲(そうてつ)とともに精進料理の指導を始めて40年。自宅での教室のほか、国内外各地へ赴き、講師を務める。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです