パクチーやレモングラスなど、ハーブを食す文化が根強く残るタイ
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天然生活webの連載「山下智道のハーブ&スパイス紀行」でもおなじみ、野草研究家の山下智道さん。
新刊『旅で出会った世界のスパイス・ハーブ図鑑 東・東南アジア編』(創元社)では、タイやベトナムなどアジア7か国を訪れ、出会ったハーブやスパイスを紹介しています。
山下さんが今回訪れた国のなかで、市場に出回るハーブやスパイスが最も多かったのがタイ。
とくに、「タラートタイ」という市場は、東南アジアのなかでも断トツの規模を誇り、タイ定番の薬味であるシソクサやパクチー、レモングラスなどのほか、珍しい果物や薬草がたくさんあり、衝撃を受けたのだそう。
野生植物を食す文化がまだ根づいていると実感したタイは、野草にかかわる仕事をしている山下さんにとって、心から感動し、興奮した国なのだとか。
本記事では、山下さんがタイで出会ったハーブのなかから、甘い香りでお菓子づくりによく使われる「パンダンリーフ」をご紹介します。

独特な甘い香りでお菓子づくりにも使われるハーブ「パンダンリーフ」
パンダンリーフ
Pandanus amaryllifolius │タコノキ科タコノキ属

東南アジア原産の常緑低木。和名は「ニオイタコノキ」といい、タコノキ科の中でも葉に熱を加えるとバニラのような芳香があるのが特徴。
独特な甘い香りから「東洋のバニラ」とも呼ばれている。なお、「タコノキ」の名は、複数の支柱根がタコの足に似ていることに由来する。
タイをはじめ広く東南アジア地域で、料理やスイーツの香りづけ、色づけに欠かせないハーブ。
タイのマーケットのお菓子コーナーでは、鮮やかな緑色をしたお餅やカステラが売られているが、これらはパンダンリーフのパウダーを混ぜたさまざまなお菓子で、とても人気がある。ラン科のバニラよりもほのかで、食材を邪魔しない香りである。
スリランカでもカレーに入れると聞く。私自身は、おこわを炊くときにパンダンリーフを加えるのが好きだ。
また、葉を陰干ししてパウダー状にし、溶かしたチョコレートに加えても非常に相性がよい。
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パンダンリーフで作ったわらびもちのようなゼリー。ココナッツの胚乳を削ったものを紛してある
※ 本記事は『旅で出会った世界のスパイス・ハーブ図鑑 東・東南アジア編』(創元社)からの抜粋です。
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▼タイのハーブ、そのほかの記事はこちら(山下智道さんのweb連載より)
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野草研究家・山下智道がアジア各地を旅して出会った風変わりでエキサイティングな植物たちを写真で案内する、新感覚のスパイス・ハーブ図鑑。
ネパール、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン、台湾、韓国の7つの国で親しまれている香辛料、香草、薬草、野菜、果物、藻類などを、現地での様々な用途や日本で見られる近縁種とともに150種以上紹介。
植物を使った料理や製品、旅情あふれるマーケットや野山の風景も満載。
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山下智道(やました・ともみち)
1989年、北九州市生まれ。生薬・漢方愛好家の祖父の影響や登山家の父の影響により、幼少から植物に親しみ、卓越した植物の知識を身につける。現在では植物に関する広範囲で的確な知識と独創性あふれる実践力で高い評価と知名度を得ている。国内外で多数の観察会、ワークショップ、ハーブやスパイスを使用した様々なブランディングを手掛けている。TV出演・著書・雑誌掲載等多数。主な著書に『ヨモギハンドブック』(文一総合出版、2023年)、『野草がハーブやスパイスに変わるとき』(山と渓谷社、2023年)、『なんでもハーブ284』(文一総合出版、2020年)、『野草と暮らす365日』(山と渓谷社、2018年)などがある。