淡路島で出合った小屋を改装し、料理教室などを開くどいちなつさん。家族や友人とともに自由に手を入れた台所は、人も、ものも、心もめぐる、あたたかな場所です。古い小屋を改装して誕生した、どいさんの台所「心に風キッチン」を訪ねました。
(別冊天然生活『暮らしを育てる台所』より)
キッチンの設計図はなし。体と動きに合わせ、常に進化中
実はこの改装、かれこれ足かけ6年になるとか。友人のeisou・谷本大輔さんに依頼してアイデアを出し合い、材料を探し、形にしていったそうです。
「設計図はなく、この鍋をしまうなら何センチいるねとか、この位置なら手が届くかなとか、現場でひとつずつ確かめながら私の体と動きに合わせてつくってくれました」
ゆえに、調理台の高さも窓の配置も、どいさんがスムーズに動けるジャストサイズ。限りあるスペースを駆使した収納に至っては、出し入れが考え抜かれた優れものばかりです。
「とにかく、みんなでここをつくるプロセスが楽しくて。完成はずっとないというか、常にリニューアルしながら今後も変わっていく気がしています」
心に風キッチンは「心が整う場所」
まだまだ変化が楽しみな「心に風キッチン」。もちろん、ここは人を招いて料理教室やイベントが開催される特別な場所ではありますが、どいさんにとっては家の台所同様に、心が整う場所でもあるといいます。
「たとえば、このレモンの皮むきなんて本当に単調作業なのですが、やりはじめるとだんだんと心が静かになってくるんです。いつのまにか頭のなかがすっきりしたり、思いがけず新しいアイデアが浮かんできたり。ここで、自分のなかのいろいろな気持ちや考えを、整理しているのかもしれません」
季節の実りが循環し、人が集い、心もめぐる、あたたかな場所。
どんどん進化するこの小さな台所は、どいさんのこれからの人生に寄り添っていく大事な大事な存在です。
〈撮影/ヨシダダイスケ 取材・文/山形恭子〉
どいちなつ
淡路島在住。山麓の休耕田を復活させた田畑で野菜やハーブを栽培し、野山の植物や自然農を学びながら日々料理をする。「心に風」の名前で活動し、料理教室も開催。インスタグラム@windformind