(別冊天然生活『暮らしを育てる台所』より)
キッチンの設計図はなし。体と動きに合わせ、常に進化中
実はこの改装、かれこれ足かけ6年になるとか。友人のeisou・谷本大輔さんに依頼してアイデアを出し合い、材料を探し、形にしていったそうです。
「設計図はなく、この鍋をしまうなら何センチいるねとか、この位置なら手が届くかなとか、現場でひとつずつ確かめながら私の体と動きに合わせてつくってくれました」

レードルや茶こしなどは、シンク上に吊り下げて。「とにかく収納スペースがないので、フックに掛けられるものはここ。並べ方は自由ですね」。その上のわずかなスペースにも開閉式の扉を備えた木棚を取りつけてスパイス置き場に。もともとあった窓を生かし、明るさは保ちつつ、使いやすさを考えた工夫を加えている

道具を吊るした鈍色で味のあるアイアンフックも、谷本さんの手づくり。「古布や古道具は昔から大好きで」とどいさん。ちょっとしたパーツも気に入ったものだけを使う

「ここには重い陶器をしまう棚があるといいねとか、こうやって外を眺めるのもいいよね、なんて話をしていたら、こうなりました」と微笑むどいさん
ゆえに、調理台の高さも窓の配置も、どいさんがスムーズに動けるジャストサイズ。限りあるスペースを駆使した収納に至っては、出し入れが考え抜かれた優れものばかりです。
「とにかく、みんなでここをつくるプロセスが楽しくて。完成はずっとないというか、常にリニューアルしながら今後も変わっていく気がしています」

鉄と木を組み合わせた包丁フォルダーは、サイドボードに固定。「自宅の台所と同じもので、夫の手づくりです」

フライパンを吊り下げている場所は、木枠で仕立てた手づくりのレンジフード。インテリアのようになじみ、コンパクトな空間でも圧迫感がない

愛用のフライパンにぴったりはまる、古布でつくった持ち手カバー。使い古しのエプロンなどを利用して、サシェなども手づくりする。冬季にまとめて縫いものをするのも、島暮らしを始めてからの習慣だそう
心に風キッチンは「心が整う場所」
まだまだ変化が楽しみな「心に風キッチン」。もちろん、ここは人を招いて料理教室やイベントが開催される特別な場所ではありますが、どいさんにとっては家の台所同様に、心が整う場所でもあるといいます。
「たとえば、このレモンの皮むきなんて本当に単調作業なのですが、やりはじめるとだんだんと心が静かになってくるんです。いつのまにか頭のなかがすっきりしたり、思いがけず新しいアイデアが浮かんできたり。ここで、自分のなかのいろいろな気持ちや考えを、整理しているのかもしれません」

季節の実りで料理やお菓子などを。この時季は島のレモンと畑のハーブでハーブソルトをつくり、「心に風」アイテムとして販売も。「レモンの皮はハーブソルトに、果肉はジャムにします」。食材は余すところなく活用
季節の実りが循環し、人が集い、心もめぐる、あたたかな場所。
どんどん進化するこの小さな台所は、どいさんのこれからの人生に寄り添っていく大事な大事な存在です。

増築した玄関には、自然豊かな景色が一望できる大きな窓をつくった

この日のおやつは栗の渋皮煮のスコーン。滋賀で作陶する市川孝さんの白い器が、ぬくもり漂う空間によく似合う。「料理教室で使う器は市川さんに依頼しました。シンプルで収まりがよいものをと伝えたら、素敵な器がたくさん届きました」
〈撮影/ヨシダダイスケ 取材・文/山形恭子〉
どいちなつ
淡路島在住。山麓の休耕田を復活させた田畑で野菜やハーブを栽培し、野山の植物や自然農を学びながら日々料理をする。「心に風」の名前で活動し、料理教室も開催。インスタグラム@windformind